011 開戦
『では、試合を始めてください。』
「お願いします!」
緊張の瞬間。
まずは操作の確認。筐体によってボタンの沈み具合が違ったりするので、タイミング命の俺にとっては最優先課題。
―――うん。こんな感じね。
あとは技を設定する。100種類以上ある技のなかから、4つ選び設定する。まあ、迷うまでもない。一番人気の設定をチョイス。まあ、技は使わないので、何を入れても一緒なのだ。
『レディー…ファイッ!』
ゲームスタート。相手の技を確認すると、俺と同じ構成だった。やはり人気らしい。
『燃え盛れ…』
特有のカットイン。いきなりの大技だ。まともにくらえば大ダメージ。試合の行方を決定づけられてしまう。普通ならばガードしてダメージを減らすのだが、俺なら回避できる。
相手キャラが炎を纏い、周囲に赤い花びらが舞う。一瞬の静寂の後、光が一閃。
『炎陽っ!』
炎のなかから漆黒に染まった刃が姿を現す。タイミングは…ここっ!
―――よいしょっ!からの…カウンターッ!
一瞬の出来事。やっていることは単純。方向キーを倒して回避。ボタンを押して通常攻撃。それだけ。すべてはタイミングなのだ。
「うぉっ!すげ。今、炎陽かわした!」
「まじで?ラッキーパンチじゃないん?」
若干ギャラリーさんが盛り上がっている。うれしい限り。しかし、ラッキーパンチでもビギナーズラックでもないのだ。
それを今から証明しよう。
技にはそれぞれに使用回数が定められている。何十回も発動できるわけではないのだ。必然的に通常攻撃を織り交ぜる必要が出てくる。そして通常攻撃にはカットインする演出などはない。要するに、カウンターし放題なのだ。
―――よし…いけるっ!
きれいな回避からのカウンター。相手キャラのゲージを削り取った。
『コングラッチュレイションッ!』
「ありがとうございました。いや、すごいですね。炎陽かわすなんて…。」
緊張からの解放と初戦突破の高揚感からか、声をかけてもらえたのに、反応が遅れてしまう。自画自賛するのはマナー的に良くないと思うので、落ち着いた返しをしよう。
「…いえ…。ありがとうございました。」
なんとも不愛想な対応になってしまったが、これが俺の限界なのだ。もし気を悪くさせてしまったのならば、ごめんなさい。
まあ、何はともあれ初勝利。1回カウンターを決めてからは、余裕をもって対戦を進めることができた。結果的にはノーダメージ。危うい瞬間もあったが、まあ、乗り切った。このままの勢いで、波に乗りたいところ。
「勝ったぞい!」
一応、俊に報告する。俺の勝利を信じてくれていることはありがたいのだが、まだ試合が行われていないメインステージ前でポツンと一人。さすがに変な目立ち方をしていると思う。いや、別にどこに座るかなんて俊の自由。俺がとやかく言えることではないのだが。
「おー!さすが。じゃあ、2回戦、いってみよう!」
軽いノリで送り出される。トーナメント形式なので、回を重ねるごとに待ち時間が短くなる。対戦相手の方を待たせるのは申し訳ないので、付近で待機。




