010 筐体
会場となるゲームセンター入口付近には、既に100人くらいの人が集まっていた。ギャラリーさんも含まれているとは思うのだが、それでもかなりの人数。申し訳ないけれど、おっちゃんのゲームセンターではパンクしてしまいそうな人だかり。
「や、やばい…人多すぎ。緊張してきた…。」
「ん?そう?昨日の大会とか観客さん1000人くらいだったけど…。」
「…。」
俊の返答に、力が抜けてしまう。俊と俺では基準が違うのだ。レベルが1から2に上がるときの感覚と、870から871に上がるときの差。まあ、これを言っても仕方ないので、緊張をほぐそう。
―――まずは深呼吸…。ハー…スー…。
「あ…大樹、あの人が前回の優勝者。」
俊の目線の先には大柄な男性。その周りには…取り巻き…というのだろうか。表現が良くないか…ご友人の方々が周りを固めている。
「な、なんだか強そうだな…。」
「大樹…それ、偏見。」
ゲーム上で戦うだけなのだが、どうも体育会系の雰囲気には気圧されてしまうところがある。確かに偏見なのだが、どうしても考えてしまう。同じ技でも、何だろう、迫力が違うというか…。
こんな調子で大丈夫かと不安が増すが、ここまで来た以上、退くことはできない。
『時間になりましたので、受付を始めます!1番から50番までの方はこちらの受付へ、51番以降の方は奥の受付で手続きをお願いします。』
いよいよ始まる。ビギナーズラックに期待。
■
ゲームセンター内には、メインステージの筐体を除き、5つのFPS筐体が設置されていた。
今回の予選会はトーナメント形式。たまたまだとは思うのだが、参加者は128名。7回勝てば、優勝することができる。もちろん初戦で負けたらそれで終わる。ゲーム機のため、絶対に負けられない戦いだ。このチャンスを逃したら、また通販サイト巡りをしなければならない。
「じゃあ、俺はこの辺りで見てるから。」
「お、おう。」
俊は早速メインステージの最前列に席をとった。期待していただけるのはありがたいのだが、絶妙なプレッシャー。まあ、俊なりのエールだと思って、ありがたく受け取っておこう。
いよいよ俺の初戦。相手は大学生と思しき男性。人生経験でもFPSゲーム歴でも負けていると思うが、カウンターにだけは絶対の自信を持っている。回避して、攻撃。
そう、攻撃はかわせばよい。あとはカウンター。それだけ。




