前編
x月y日
ある夜。アタシが港を歩いていると、1台の車が走り去るのを見かけた。海のほうへ行ってみると、全裸の女性が死んでいたわ。引き上げてみると、知っている人だった。しかも全身にあざがあり、顔も腫れていたわ。
数分後、一人の男性が来た。雄馬くん、小学校からの同級生。筋肉がすごいのは、もうすぐ格闘家としてデビューするから。霊安室に入って数分後…壁をこぶしで殴り、泣いていた。
死んだのは、彼のお姉さん・夢さん。有名な繁華街のホステス。
x月y日
朝。アタシと雄馬くんは、警察に呼ばれた。
夢さんの死因は、溺死ではなく毒殺だったの。首筋に注射の跡があったそうよ。殺される前に犯人から暴力を振るわれ、強姦もされていたわ。夢さんの膣から、精液が検出されたの。
同じ日の夜。高速道路で、女性が全裸で倒れていた。顔は腫れて全身はあざだらけ。左のおっぱいは赤く染まっていたわ。
帰ろうとしたとき、テレビ局の記者が待ち構えていたわ。質問に答えた後、雄馬くんと別れたわ。
その時、凛からLINEが来たわ。凛は、1番最初にできた友達で、今は幼なじみ。
”お昼一緒に食べない?”ですって。凛にも打ち明けたわ。そうしたら、”絶対助けてあげるから”と言ってくれた。うれしかったわ。
x月y日
昨日の取材が、ニュースとして全国に流れていったわ。
その夜のこと、葬儀場に向かおうとしたら、スーツの男が現れた。アタシを見た途端、いきなりピストルを構えてきたわ。手を挙げると、男に誘導されるまま車に乗り込む。車には男が二人。
20分後、たどり着いたのは…墓地。しばらく歩いていると、突然二人に押し倒され、服を脱がされ、二人も脱ぐ。現れたのは、鍛え上げられたムキムキボディ。そして、それにふさわしい立派なティンコ。
レイプされかけたその時、雄馬くんが飛び蹴りで助けに来てくれたわ。凛も駆け出し、もう一人を蹴り上げた。凛も雄馬くんも、空手の黒帯を持っているわ。全裸男2人と闘って5分後、金玉を蹴り上げて幕を閉じた。見覚えのある車がこっちに来たので、3人でお墓の後ろに隠れた。気絶している2人の前に停車、一人の男が降りてきたわ。次の瞬間…マシンガンをぶっぱなして、車に乗って行っちゃったの。2人とも、ゾンビになって死んじゃった。
当然、警察から取り調べを受けたわ。待っている間、雄馬くんに聞いたの。どうして助けに来れたのかって。いつまでたっても来ないから、電話をしたんですって。繫がらなかったから、GPSでスマホの位置を特定できたそうよ。
1時間半遅れて夢さんのお通夜が始まったわ。凛の車に乗って、探偵事務所へ。実はこの事務所、凛のお兄さんと弟くんが立ち上げた会社なの。もちろん、2人に事情を話したわ。”絶対守ってみせる”と2人が筋肉ポーズをとったとき、救われたように感じて、泣いちゃったわ。
x月y日
告別式が終わった次の日。さっそく調査を開始。
まずわかっていること。夢さんが暴力と強姦を受けていたこと。全裸で死んでいたこと。凶器が注射器と、トリカブトであること。そのトリカブトは、数秒で死に至らしめること。
同じ日に殺された女性がいること。名前は奏さん。18歳、風俗嬢。1年前から捜索願が出されていたこと。奏という名前はウソで、本当の名前があること。彼女も暴力と強姦を受けていたこと。ピストルで、左のおっぱいをぶっぱなされて死んだこと。死んだ後で、高速道路に投げ捨てられていたことよ。
この日は、凛と二人で留守番をしていたわ。お兄さんと弟くんが帰ってきたわ。今日わかったことは…
殺された日の昼。夢さんが男性と二人で歩いていると、奏さんと出くわした。場所は銀座。夢さんと奏さんがケンカを始めたわ。すると男性が怒り出して、別れると言って二人を置き去りにして、どこかへ行っちゃったんですって。残された二人は泣いていたわ。
年齢は30歳前後。背は185センチくらい。女性マンガから飛び出したような、イケメンだったそうよ。黒の長髪で、有名ブランドのスーツを着ていたんですって。
この男性について調べるのは、また明日。
x月y日
昨日の男性についての続き。
名前は、宮下源造。年齢は29歳。身長は186センチ。風俗店を多数経営しているわ。
夢さんも奏さんも、彼が経営している、風俗店で働いていたことがわかったわ。
彼には裏の顔があって…指定暴力団”宮下組” の組長なの。
今日は凛が調査に行ってきたわ。それから警察から電話が来て、物的証拠をつかんだから、明後日には捜査に入るって。その物的証拠は、暴力を受けた個所の写真。ピストルの弾丸。トリカブトと、犯人の精液の分析データ。
電話を切った後、「早く捕まりますように」と祈ったわ。それと、雄馬くんに会いたいと。




