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 青シグナルの灯火と同時に一斉に飛び出す。


 バルーシは低速域からの加速が弱いから出遅れるが、そこは予定通り。


 前方では1コーナーへの侵入で接触スレスレの集団が出来ているが、今は無視していいだろう。


 集団が1コーナーにある魔力で作られたコース範囲の目印に向け、次々と飛び込んでいく。

 軽い接触はいくつか発生したようだが、誰もバランスは崩していない、それを追いかけ俺達も突っ込む。


 コーナーを抜ける時、常に注意するのは脱出速度。

 俺達が勝つにはとにかく速度を落とさないこと。それしかない。


「バルーシ! 序盤はテクニカルコースだ、我慢しろよ!!」


「グルル」


 幸か不幸か周囲に他の飛竜はいない、今は平均速度の高いライン取りが出来る。


 ドラゴンレースは決められた順番のコーナーを外さなければ、どこを飛んでも良い。だから抜けたコーナーから次のコーナーまでの間は、飛竜の特性によって飛ぶラインが変わる。


 旋回重視の今風な飛竜は無駄のないライン取りで最短距離を狙い、バルーシのようなパワー重視の飛竜は距離に無駄があっても速度重視で飛ぶ。


 一番避けなくてはいけないことは、集団に囲まれてバルーシの飛行ラインが取れなくなることだ。

 旧世代の俺達は、新世代からすると異質なラインを飛ぶ邪魔者でしかないため、囲まれてラインを潰されたらどうする事も出来ない。


 今は周囲に他の飛竜がいないためライン取りの自由度が高いとはいえ、序盤はタイトコーナーの連続だからどうしても苦手な部類にあたる。

 コーナー入口で速度を落としておいて、加速しながら抜ける。少しでも脱出速度を高めて次のコーナーまで速くたどり着くように。


 それでも先頭集団にはジリジリと引き離されていく。


 閉塞感、息苦しさ。

 本来いる水域と違う所に来てしまった魚かのような。


 当然だ、得意とする速度域では全くないのだ。苦手とする速度域のためバランスを崩す可能性だってある。


 ここでミスをしたら後半で取り戻せなくなるため、この部分こそ丁寧に抜けていかなくてはならない。


 ……そういうのは向いてないんだよ!


 ようやくあと少しでテクニカルパートが終わる……とそこで先頭集団に目を向けると、ハリーん所のジェリコが2番手の美味しい位置につけていた。


 先頭は空気抵抗が大きいため、あえての2番手というのが非常に上手い。彼がこのレースで大本命とされるライダーだ、勝たなくてはならない。


 集団から距離は結構離されたが、それでもなんとか取り戻せるはずだ。ここからは高速コーナーの連続パート。

 あいつらに追いついてやるぞ……!


「バルーシ巻き返すぞ! 俺が強引に曲げるから、お前はとにかく突っ込め!」


 意思の疎通が出来たのかバルーシは頭を少し縦に振ると、加速の体勢に入った。


 得意とするパートで巻き返す、いや、勝ちにいくなら無茶をするしかない――


 右下に落ちていくかのような高速コーナー、普段なら減速開始のポイントでバルーシの首筋を叩き、侵入速度を落とさせない。


 オーバーラン直前――今!


 あぶみに力をいれ立ち上がり、重心を高くする。俺の体ぶん空気抵抗が一気に増えるがそれに構わず、俺は手綱を命綱にして思いっきり体を倒す。

 あぶみと手綱だけで体を支え、あとはほぼ俺がバルーシから落ちるかのような勢いで無理矢理バルーシを曲げる。

 右下に曲がるコーナーだ、当然俺の頭はほぼ地上に向いている。


 バルーシも俺が何をするのか察していたのだろう、重心が傾きコーナーを曲がりながらも、構わず加速体勢に入っている。


 曲がるんじゃない、重心を崩して強引に曲げる。


 旧世代の飛ばし屋ジョナサンが勝負所で使っていた技だ。

 自分の体は飛竜から離れるし空気抵抗も増えて、しかもライダーが墜落するリスクの大きい頭のおかしい技だと言われていたやつだ。

 今のライダーでこれをやる奴は誰もいない。最高速重視ではないためやる必要がないし、リスクが大きすぎる。


 ――でもこっちはやるしか無いんだよ!


 この高速コーナーセクションで前にいる奴らをみんな抜き去る、これしかレースで勝つ道はない!


「バルーシ! これであいつらを抜くぞ!」


「グルゥ!」


 今日はいつになくバルーシと意思疎通が出来ている気がする。この技にも対応してくれた。

 あの少女のおかげだろうか?


 バルーシは得意とする高速域からのさらなる加速をし、俺がそれを強引に曲げる。


 速度が高くなればなるほど視界が狭くなるが注意深く前方を見つめ、来た、新世代の奴らに追いつき始めた。


 全部の高速コーナーで先程の技を使う。

 彼らからすると俺達の飛行ラインはかなり大外から侵入して大外に脱出する速度重視のもののため、特に接触の危機なく抜き去る事が出来た。


 こんなハイリスクの技を連発するなんて正気の沙汰ではない。

 だけれど、もう俺達に明日なんて残されていないんだ。

 今、ここが全て。全てがここにある。


 今日勝たなければ、何も意味なんてないんだ。


 先頭集団を視界に捉えた。



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