25
「うまい!!」
先程の露店まで急いでご主人様を運んで行って、肉を買ったらご主人様は飛び起きた。
「うまい!」
嬉しそうにキュウビの買った肉を頬張るご主人様を見ているだけでキュウビは幸せですじゃ。
「キュウビありがとね。でも何でこんな所にキュウビがいるの?」
「ご主人様を探すためにキュウビは冒険者になっていろんな土地を旅していたのじゃ」
「そっか。ごめんねありがとう」
「滅相もございません!」
ご主人様に謝らせるわけにはいかないのじゃ。
困った、キュウビの尻尾が止まらない、止められない。
「いやぁ、ちょっと前に有り金の全部を使って盛大にご飯食べたらお金なくなっちゃってね。何とかならないかとフラフラしてたんだけど限界だったの。助かったよ」
ご主人様の声でキュウビの耳が溶けていくようじゃ。嬉しい。
「これくらいの事、何てことないですのじゃ! それよりもご主人様、今まで一体どこに行ってたんですか!」
「あー、詳しく話すよ。一回場所を移そうか」
◆◇◆
広い王都をしばらく歩き連れて来られた建物の2階。その場所には人間ばかりがおった。ここは一体……
「なぁルージュ、なんだこのケモ耳のロリは」
そこにいた男が口を開いた。なんだとはなんだ。
「この娘は私が飼っていた九尾狐だよ。小さい頃からペットとして飼ってたんだけど……いつの間にか人化してたみたい」
そう、キュウビも昔は狐の姿をしていた。
まだ幼く右も左も分からず困っていたキュウビを助けてくれたのがご主人様。寝るのもお風呂に入るのもずっと一緒だったのじゃ。
途中からご主人様は魔物の姿が気に入ったようでずっと姿を変えておったが、本来なら人型。
だからごキュウビはご主人様を探すために人化の術を覚えた。もしかしたら人の世界に行っているのかもと考えたからで、それは正しかったようじゃ。
「キュウビという、知っておくがいい。それで貴様は何なんだ」
「ユウだ。ルージュと一緒に指名依頼専門で冒険者をやっている」
冒険者! ご主人様は冒険者になっていたようだ。確かに才能から考えてご主人様であれば世界を股にかける冒険者になる事など余裕じゃ。
「なるほど冒険者か。でもなんでユウみたいな弱そうな奴なんかとご主人様は一緒に冒険者をやっておるのじゃ。もちろんユウ、貴様の冒険者ランクはSランクなんじゃろうな?」
キュウビが一緒にいない間にこんな奴と……。
ご主人様と一緒にいるにはどう考えてもSランクでないと見合わない。それ以外は雑魚じゃ。
「いや、俺はFランクだぞ」
「Fランク!? クソザコじゃないか! そんな奴とご主人様が一緒にいるなんて考えられないですじゃ、ご主人様、こんな奴は早く棄ててキュウビと組みましょう!」
するとご主人様は珍しく少し困ったような表情をした。
「いや、私もFランクのクソザコなんだよね」
「なんで!?」
「真面目に働くの面倒だし」
なんということじゃ……。
ご主人様はそこまで深く考えて自らFランクになっていただなんて。
流れに任せあくせく働いていたキュウビが恥ずかしい。
「そうか……じゃが、こんな奴と組む必要などありません、キュウビと一緒ならご主人様は座っているだけの楽をさせてあげる事も出来ますのじゃ!」
「退屈なのも嫌だし」
なんということじゃ……。
ご主人様はそこまで深く考えて自らFランクになっていただなんて。
短慮だったキュウビが恥ずかしい。
「というかそもそも何でお前らはずっと一緒にいなかったんだ?」
そういえばあの日の事は記憶が曖昧だ。なぜ離れ離れになったのか覚えていない。
「なんかユウが攻め込んでくるって情報があったから慌ててキュウビを窓から外に思いっきり投げたんだよ。危ないから地平線の奥までぶん投げた」
「な、なんじゃと!? ……ではまさかキュウビがご主人様と離れ離れになったのはユウ、貴様のせいじゃったというのか!!」
なんたること、なんたることじゃ!
こいつマジで許さんのじゃ!
「えぇ……投げられた事はいいのかよ……まぁ、すまんかった。えーと、えーと」
ユウとやらが慌てておる。しかし、キュウビは何があってもコイツを許すつもりなどないのじゃ。
ユウが近くにいたメイド姿の女に何かを頼んだ。こやつ、何かするつもりなのか?
「それに関しては悪かったと思ってる。いま用意できるものはこれぐらいしかないが、これで許してくれ」
ユウがそう言い、それに合わせてメイドがキュウビに差し出して来たものは、お皿に乗った得体の知れない茶色い物体。
「なんじゃこれは。こんなもので許すはずもないじゃろうが」
何かの食べ物なんじゃろうが、こんな物で釣られるようなキュウビではない。
こんな物で……
こん……
なんじゃこれ、いい匂いがするな。
甘そうで、と同時にどこか香りに深みがあるようにも思える。
「油揚げっていうんだ。知らないか? あんまり売ってる店も無いから珍しいかもな」
アブラーゲ?
よくわからんが、何か心を揺さぶる匂いがするのも事実。
ここは致し方ない、試しに食べてやろう。
キュウビはアブラーゲを口に運んだ――




