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「ねぇ、ここでグレートアーマーを沢山倒したら、昇格試験合格にしてくれる?」


 声の聞こえた方を見ると、綺麗な銀髪を頭の上でまとめた女の子が俺の傍を走っていた。

 この子はここまでの試験で見かけていない子だ。――だとすると、俺と同じ3班のソロプレイヤーか?


「なんだお前ら! あぁ3班の奴らか、もし本当に沢山倒したら合格にしてやるよ! だがな、待機命令を無視するお前らはクソだし、今欲しいのは2班の奴らを撤退させるための時間稼ぎだ! 人手があれば助かるのは事実だが、倒すなんて考えるな、危なくなったらすぐ逃げろ!」


 試験官パーティーも焦っているんだろう。

 彼らだけで大量のグレートアーマーに対処しながら冒険者の退路を確保なんて荷が重すぎる。かといって、1班の奴らは既に満身創痍、3班の俺達ぐらいしかまともに動ける奴もいないだろう。


「わかったよ、何とかするね!」


 少女は嬉しそうに笑った。


 なんだコイツ、今までギルドでも見かけた事のない子だ。1人で昇格試験を受けにくるあたり自信はあるようだが、実力は未知数だ。


 少女は走りながら目を閉じると、小さな声で呪文の詠唱を始めた。

 この距離からの攻撃魔法を放つつもりか。


 まだグレートアーマー達までは距離がある。いくら魔法が得意だといっても、普通この距離では威力が減衰してしまう。


「貫け、ホーリーアロー!」


 少女が弓を放つような動作をしたかと思うと、一条の光がはるか前方にいるグレートアーマーの頭部を貫いた。

 その光はグレートアーマーの頭部を消滅させ、頭部を失ったグレートアーマーはその場に崩れ落ちた。


 おいおいマジかよ……


 一撃で倒しやがった。

 流石に魔力を消費したようで額に大粒の汗が浮かんでいるが、走り続けている。コイツ、口だけじゃなかったんだな。

 実力は試験突破に充分じゃないか。


 ……だけど今はそれじゃ足りない。

 乱戦になっている2班を助け出さないといけないんだ。


「じゃあ俺も実力を見せて試験突破しないとな……」


 俺も覚悟を決める。


「……限定解除」


 そう呟くと、身体中から魔力が溢れ出した。

 身体強化の魔法が付与される。俺は一気に加速すると、一番手前側にいたグレートアーマーにすれ違いざま6連撃を叩き込んだ。


 顔だけ振り向き死亡確認、そのまま次のグレートアーマーに向かう。

 たまたま俺を捕捉したソイツは、興奮状態で俺を敵だと認識したのかこちらに大剣を振りかぶった。だが、今の俺には問題ない。


 振り下ろされた攻撃を左手の剣で受け流すと、右手の剣のカウンターを胸元に深く、剣の根元まで突き刺した。


「悪いな。俺は伊達に岩山を消滅させるような奴らと修行してきたわけじゃないんだ」


 グレートアーマーの胸部を大きく引き裂くようにしながら剣を引き抜く。死亡確認。


 そうなのだ、ユウやルージュはこんな生優しいものじゃなかった。

 攻撃を認識した直後には、彼方まで吹き飛ばされているような修行をしてきたのだ。

 しまいには「これじゃサンドバッグに物足りない」と、さらなる呪いのアイテムを気絶した俺に勝手に追加してしまうような地獄の特訓。


 おかげで今の俺は、呪いのアイテムの総合商社だ。

 溢れ出てしまう魔力で干からびないよう抑制するアイテムがあったのは救いだが、ドーピングにも程がある。

 呪いの装備多重化に俺は耐性があったようで、「凄い才能だ!」と褒めちぎられたが何も嬉しくない。


 振り向くと、少女は驚いたような表情をしていた。ふふん、どうだ凄いだろ。呪われてるんだぜ。


「2班! 俺達で退路を確保するから撤退しろ!」


 指示を飛ばしている間に後続の試験官パーティーと、少女も追いついてきた。

 ここからは体力と魔力にまだ余裕のある俺達の戦場だ。


 試験官パーティーは広く陣形を取り、乱戦となっていた2班のメンバーは、散り散りにその脇を抜けて行った。

 逃げ込むための退路を広くとって、そのくせ戦線を維持する。これは並大抵の事じゃない。


 味方との距離が離れれば離れるほど連携は難しくなるし、援護も回復も即座に行動しなければ間に合わなくなるのだ。

 こいつら、戦い慣れてやがる。さすが上のクラスの冒険者ってやつだ。


 俺も近くのグレートアーマーを倒すことで2班の撤退を援護した。


 少女の方は……と見ると、一番の激戦区に駆けていた。

 俺が元いたパーティーのいる方だ。いくら実力に自信があっても、流石に1人では危険だ。


 少女は走りながらも魔力を収束させていた。大規模魔法を使うつもりなのか。


「裁きの光よ、我が敵に鉄槌を! ホーリーレイン!」


 叫ぶやいなや、上空から大量の光の矢が降り注ぎ、グレートアーマー達を突き刺した。

 多くの敵に確実なダメージを与えたようで、奴らが怯んだ隙に残りの2班も撤退を始めた。

 光属性をあれだけ使いこなすとか、ホントあいつ何者なんだよ。


 感心したのも束の間、今の魔法だけでは倒し切れなかったグレートアーマー達が、ひとりとり残された少女に迫った。

 彼女は今の大規模魔法の反動でうまく動けないようだ。

 そんな状況下にあって、彼女の表情はうっすら微笑んでいる。


 くそっ、あいつ……まさか自分を犠牲にするつもりで今の魔法を使ったのか? ……確かにお前は沢山の命を救えたのかもしれない、昇格試験の基準はクリアしてるのかもしれない。


 けどな、それでお前が死んだら意味ないだろ!


 くそっ!


 俺も既に全力で向かっているが、それよりも早くグレートアーマーが少女に迫る。


 ――くそ、間に合わない! 


 俺は全力で叫んだ。


「ダークボム!!」


 直後、少女の頭上に暗黒重力磁場が発生し、少女を狙ったグレートアーマー達の腕が削り取られた。


 ……暗黒魔法だけは……暗黒魔法だけは人前で使いたくなかったんだよどうしてくれるんだ!!


 俺が少女の元にたどり着いた時には、もう少女は体勢を立て直し驚愕の表情をこちらに向けていた。

 でも、まだ俺の怒りは収っていなかった。


「おいお前! お前は実力はあるのかもしれないけどな、仲間を信じることが出来ないような奴は弱者と同じなんだよ! 全部独りで抱え込もうとしてんじゃねぇよ仲間を信じろ!」


 少女はびくりと震えた。


「生き残るぞ。お前のクセはだいたいわかった、こっちでフォローする。俺とお前で撤退の殿をするぞ!」


「――はい!」


 コイツへの説教は後だ、今は生き残る事を最優先に。


 少女が魔法を放てばそれをカバーするよう立ち回り、俺が剣撃と暗黒魔法で空白地帯を作れば、少女はそこに駆けて魔力を練る時間を稼ぐ。


 敵の数が多く、全部を捌ききれなくても大丈夫、防具の特殊能力で1秒だけ魔法盾を展開、少女への攻撃もまとめて防ぎ切る。

 これはユウが使っていた技術と基本は同じらしい。俺には1秒しか扱えないが、グレートアーマーにはそれで充分通用する。


 俺の体が淡く輝いた。これは回復魔法? 少女がこちらに目配せしていた。

 コイツどんだけ規格外なんだ。俺の体が暗黒属性になってたら今ので死んでるぞ。


「よし、あらかた片付いた、みんなで撤退だ!」


 試験官パーティーの号令が飛んだ。




 ◆◇◆




「ねぇー、アタシとパーティー組もうよー」


 昇格試験はなんとか終わりを迎えた。

 俺が元いたパーティーはもちろん不合格、試験の運営を妨げたとして、しばらくは報酬減額と昇格出来ないペナルティーを課せられたらしい。

 奴らは表に顔を出さなくなったので詳しいことは知らないが、別に知りたいとも思わない。


「アタシのこと仲間だって言ってくれたじゃんかー」


 試験官パーティーは、あの状況下でも戦う余力のあるメンバーとうまく対処した、としてお咎め無しになったようだ。

 試験続行が出来なかった2班のパーティーと、後日再試験をまた行うらしい。

 あの試験の時に俺らが彼らの指示を無視して駆け出した事を申し訳なく思っていたので、迷惑をかけなくて済んで良かったと思う。


「ねぇー、アタシ達って絶対相性いいってー」


 3班の俺達2人はBランクへの昇格が認められた。グレートアーマーを問題なく倒したと試験官の証言があったようだ。指示を無視した事も黙っていてくれた。それどころか、よく手伝ってくれたと後押しまでしてくれたようだ。

 暗黒魔法も特に騒ぎにはなっていない。一部では噂になっているようだが、多くの奴らが見なかった事にしてくれているようだ。


「今ならアタシがついてくるよ、お得だよ?」


 ユウとルージュにはお礼を言いに行ったら、要らない備品を在庫処分しただけだから報酬は出世払いでいいと投げ出された。

 どうやら『死亡フラグ』? とかいうやつをへし折ったらもう満足で、あとは楽しく魔法をぶっ放せたからもうどうでもいいらしい。


「ね、アタシとパーティー組もう?」


「…………あぁもう俺はな、故郷に帰って幼馴染にプロポーズするんだよ邪魔すんな」


 文句を言うと、少女はきょとんとした顔をした。


「キミ、たくさんの呪いが掛かってるから無理だよ。こうしてキミの近くにいられるのもアタシだからであって、暗黒の魔力が漏れ出てる人なんて普通の人には毒だよ?」


 それもそうか。

 コイツには問題ないようだが、俺はかなりの呪いホルダーだ。呪いの多重化耐性という隠された才能が開花したらしい。永遠に隠されていたらよかったのに。


 普段は外に影響を及ぼさないよう能力制限をしているが、それでも暗黒の魔力は漏れ続けている。

 幼馴染に、もしこれで嫌われてもいけないしな。


「そうだな、確かにお前の言う通りだ。じゃあ今から教会に行って呪いを解いてもらうわ」


「えー!!」




















 教会にて。


「呪いが多重化しすぎて複雑に絡みあっているため、私では解呪できません。いま失踪中の聖女様でもない限り……」


 詰んだ。


 どうやらユウとルージュは本当に言葉通り、昇格試験の手伝い『だけ』で俺のプロポーズの事なんて考えていなかったらしい。


 俺の後ろで少女が笑い転げている。




お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価ありがとうございます!


ロイの結婚は難しそうです。

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