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ヰーら!  作者: 日時計かげる
年表
3/5

P2 平成のオタク魂

「……。」


部屋の中、平成は1人でパソコンに目を向けていた。

部屋の中はカーテンが閉め切られていて、真っ暗だ。

床には食べ終わったピザの箱や、コンビニの弁当箱が散乱している。


しかし、そんな引きこもりで面倒くさがり屋の平成が、今日は家から外に出るのだ。


「……よし!」


平成はそんな声を上げて、大きなリュックを背負った。


そして、アニメTシャツを着込んだ。



久しぶりに外に出た。

風の音や自然の匂いが心地よい。

しかし、外に出るまでが面倒くさいのだ。そんなことをしているよりも、アニメ鑑賞やネトゲを1日中している方がずっとマシだ。

しかし、今日だけは別なのだ。

大好きなアイドルアニメの大イベントがあるのだ。多分、このアニメをここまで愛しているのは平成なのだろう。きっと平成自身も自負している。


平成は、とりあえず歩き始めた。

だが、何年も外に出てこなかったため、どこに何があるのかを忘れかけているのだ。

そこで、【明治】を見かけた。

丁度いい。この人に駅の場所を聞いてみよう。


「すみません、明治さん。」

「あ、平成。久しぶりだね。どうしたんだい?そんなに派手な格好して…。」

「その喋り方やめて下さい。」


【明治】というのは、ある青年のことだ。和洋折衷の紳士のような、タキシードのような、お前こそ派手な格好をしていると言うような、大きなシルクハット。

負けず嫌いで、英国年表などの欧米の年表などを手本として、様々な事に挑戦している。


「…それより、この辺で1番近い駅はありますか?」

「駅?『新橋ステヰション』の事?」

「いつの時代だよ。」


何年かぶりに、平成の鋭いツッコミが入った。

だが、明治は止まることなく話し始める。


「いや、この辺の駅…というか、新橋ステヰションしかないけれどw」

「それ、いつの情報ですか?」

「明治のだよ?」

「ぶっ殺しますよ?あーもう、時間ないのに…。」

「何処かに行くのかい?」

「はい、アニメ祭に。」

「……。」


そこで、初めて明治は黙り込んだ。

明治は引きながら、優しく微笑んだ。


「そ、そっか。良かったね。昭和とかに聞いてみたらどうだい?何か分かるかも知れないよ。」

「は、はい…。そうします。」


平成は、ヨロヨロと走って行った。

そんな平成の後ろ姿を、明治は見ている。


「あの人、頭大丈夫かな…?」



とりあえず、昭和のドアをノックした。しかし、彼は『ちゃんと』仕事をしているので、家には居ないことが多い。

だが、家の中から物音がした。今日は居るみたいだ。

そして、ガラッとドアが開く。


「何だ、何か用か?」


出てきた気難しそうな男性は【昭和】だ。色褪せた服を着ており、家は地味な二階建てだ。

性格的には、怒ってても起こってなくても、ずっと眉間にしわが寄っているような人だ。キレると周りを気にせずに怒鳴り、泣く子も黙らせる。

しかしそんな彼にも、コマを回すのが趣味だったり、駄菓子が好きだったり、割とお茶目な所がある。


「すみません。お仕事中に。」

「今日は休みだ。」


仕事をした事がないので、中々昭和の話に着いていけない平成。


「そ、そうなんですか。ところで、この辺で1番近い駅はどこですか?」

「そうだな、あまり列車は使わないからな…。有名なので言ったら、万世橋駅か?」

「ど、どこですか?それ。」

「お前の所の情報で、秋葉原駅ってあるだろう?」

「は、はい。」

「そのすぐ側だ。」

「……。」


「ごめんなさい、その秋葉原に行きたいんですよ。」とは言えなかった。

第一怖い。怒らせたくない。この人は雷親父みたいなもんだ。

というか、その事についてツッコむのも面倒くさくなっただけだ。

それに、若干話も噛み合って居ない気がするし、ここに居ても無駄に感じたし、怖いから早くこの場から避けたいと平成は思った。


「と、とりあえず、その駅に行ってきますね!ありがとうございます!!」


無理に気持ち悪い程の笑顔を作って、大声でハキハキとそう言い、平成は凄い速さで走って行った。


昭和は一瞬戸惑ったが、無言で家の中に入って行った。

ピシャンッ!!と大きな音を立てて、昭和の家のドアが閉められた。



馬鹿な平成は、やっと今思いついた。

自信満々でスマートフォンを開いて、検索をしだした。


『日本国年表 一番近い 駅』


そして出てきた言葉は、


『お探しのものは見つかりませんでした。』

平「……。」


平成は、イライラ度が80%を超え、無言でスマートフォンを地面に叩きつける。

と同時に、スマートフォンに付いていたアイドルアニメキャラの携帯ストラップも地面に落ちる。


平「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!マグちゃああああああん!!!」


即座に落としたスマートフォンを拾い上げる。真顔で吊られているストラップは、凄くシュールに感じられた。


「は、早く病院に!!じゃなかった!駅を探さないと!!」


こうして、平成は地平線の彼方まで走り出した。



1時間後、電車は乗ることが出来ず(駅の場所が分からなかった。)、歩いて行くことにしたのだが、地図を見てどんなに歩いても全然着く気配がないことに気がついた。


「はあ…はあ……。」


平成は、無念の表情を浮かべながら、まだ諦めきれない気持ちでいっぱいだった。

ふと気になって、平成はスマートフォンの電源を入れる。

時計は、もう諦めろと言っているようだ。


18時42分


もうとっくにアニメ祭は終了していた。今から行っても、施設は閉鎖されているだろう。


「はあ…。せっかく外に出たのに……。もう嫌だ、一生部屋の中で過ごそう。」


そう言って、平成はフラフラと体を揺らし、いつ倒れてもおかしくないくらいの歩き方で街の中へ消えて行った。



夜。

日本国年表に帰ってきて、自分の家の前まで来た。

近くに行ってみると、誰かが自分の家のドアの前で座っているのが見える。

近づいていくと、それが誰なのかが分かってきた。


「馬英九…?」

「ん?ああ!やっと帰ってきた!!」


中国年表の台湾区に位置する【馬英九】という女性だった。

馬英九と平成は、オタクとヲタクという関係で、アニメ好き仲間という事で仲がいいのだ。

平成が名前を呼ぶと、馬英九はぱあっと明るくなって、平成の元に駆け寄る。


「これ、買ってきたんだ!!」

「?」


馬英九は、アニメの絵が描かれている紙袋を平成に差し出した。

平成が中を見ると、そこには今日行くはずだったイベントの限定グッズが沢山入っていた。


「お金はいらないから!あと、今日の分のDVDも買ってきたんだよ!!」

「あ、ありがとうございます…。」

「平成、いつも家から出て来ないから、今日のイベントも行かないと思って…だから平成の推しキャラの買ってきたんだよ!!」


余計なお世話だとも思ったが、平成にはこのお土産がとても嬉しかった。


「いや、実は行こうと思ったんですけど、道に迷っちゃって……。」

「えwwww?そうなの?wwお、お疲れ様wwww」


前言撤回、やっぱり嬉しくない。

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