一つ愚痴を聞いてくれませんか?
一つ、僕の愚痴を聞いてくれませんか。
いや、ほんと、突然ですみません。
でも、こう、お酒が入ると色々溜まってるものを吐き出したくなるものでしょ?
そこのマスターに聞いて貰えると嬉しいですが、ほら、あの通り忙しそうでして話しかけずらくて…………。
ええ、ええ。
聞いてくださるだけでありがたいですよ。
まあ、もう、解決したことですから。
少々、長話になります。
僕、お恥ずかしながらあまり話すのは得意ではないので分かりにくいところがあったらすみません。
あ、なにか好きなの頼んでください。
僕が持ちますから。
聞いてくださるお礼ですよ。どうぞ、遠慮なさらずに。
えーと……事の発端は、妻の態度がおかしくなったところでした。
そりゃ、夫婦歴四年と半年ほど続けてたら大抵は結婚初期のラブラブ感はなくなるのかもしれません。
え? 子供ですか……。
残念ながらいません。
確かに一人でもいたらいたら妻の気もまぎれたかもしれませんね……。
話を戻しますね。
でも、あのラブラブ感が無くなったとはいえ流石に話しかけても返事をしてくれない、やたら派手な格好をして夜出かけていく、スマホを手放さないってなるとおかしいって思いました。
へえ……お兄さんも結婚されてるんですか?
ほんとだ。立派な結婚指輪ですね。大事にしてくださいね。
で、悪いなって思ったんですけどね、妻のスマホを見たんです。
…………出てきました。大漁でしたよ。
僕の知らない顔面偏差値中の上ぐらいの男性とのしてる最中の写真がね。
ベッドでの写真はもちろん、ソファーや車の中、挙句の果てには、夜の公園でのものも。
なんかもう、呆然としてしまって。
心にこう……ポッカリと本当にポッカリと穴が空いたみたいになってしまってね。
目の前がぼーっとしてるのにその写真だけはくっきりハッキリ見えるんですよ。
不思議でしたよ。
けど、僕は妻を愛してます。愛してるから結婚したんです。おとぎ話のように真実の愛なんてものは無いかもしれない。
だから、奪われてしまった。
妻を責めることなんて僕には出来ませんでした。
尻に敷かれてるってのもありましたし、仕事で夜遅くにしか帰れない僕の方にも責任はありましたから。
僕は心に誓いました。
必ず妻の心を取り戻してみせると。
それから僕はできるだけ早く帰宅するようにしました。
死に物狂いで仕事を片付けて家に帰ったら家事をして妻に笑顔で話しかける。
それもバレないようにね。
最初のうちは、相変わらず冷たい態度でしたよ。
根気強く話しかけ続けました。
妻が好きなシリーズ物の映画が公開されたら無理やり誘って見に行ったりもしました。
それの聖地巡礼もかねて旅行にも行きました。
え、あ、もちろん国内ですよ。
そんな、外国なんてお金ないですよ…………。
それが効いたのか妻の方から段々、進んで話しかけてくれるようになりました。
結婚前のまだ彼氏彼女時代のようにほんの些細なことで笑いあったり、一つのアイスをわけあってみたり…………。
……勇気を振り絞って夜に誘ってみたりもしました。
ある時、一緒にテレビを見ていたら芸能人の不倫ニュースがやってたんです。
するとね、妻の顔色が変わったんですよ。
その頃には夜の外出も月二、三回ほどに減ってましたけどまだ絶賛不倫中でしたからね。
「私が不倫してたらどう思う?」
って冗談ぽく聞いてきたんですよ。
まあ、顔は死んでましたけど。
僕はね、爽やかな笑顔でこう答えました。
「僕が心から愛してる人がそんなことするわけないよ」
妻はなお冗談ぽく
「わかんないよ」
と聞き返します。
僕は顔を崩さず
「僕は信じてる。理由なんてそれだけでいいんだよ」
ただそれだけを繰り返しました。
信頼と言うほど恐ろしいものはありません。
その日はそれで終わりましたが、それから妻が家を空けることは無くなりました。
代わりにその空いた時間を僕に使ってくれるようになったんです。
なんでもない会話も全てが愛おしく感じました。
妻の心は僕に戻ってきたんです。
これでめでたしめでたし。
でもね、お兄さん。
シンデレラも白雪姫も悪役である継母にはキッチリ仕返しをしているんですよ。
かちかち山も舌切り雀もさるかに合戦も悪役はその行いに相当する罰を受けるのです。
真実の愛?
信じてるそれだけでいい?
そんなことで世の中まわってたら喧嘩なんて戦争なんておきませんよ。
そんなの本の中の話だけ。
現実は甘くない!!
残業して汗水垂らして金稼いでいたのも全部!!
アイツを思ってのことだった!!
それなのに浮気相手と毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩…………
俺が働いている間にせっせと子作りしやがって!!!
仕舞いには!? あの野郎の種で出来ちゃったら
『あの低脳ダメ男の子供だよ❤ って言って育てるわwww アイツ、バカだから他人の子でもきっと分からないわwwwwww』
ふざけんな!!!
さすがに察しましたよね、お兄さん。
そうですよ。
全て……全て!! 復讐のためですよ。
あの野郎と公園でしてる写真を見た時に愛情なんて消えました!!
いえ、愛情が何倍何千倍ものの憎しみに変わりました。
いつか流行りましたでしょ?
やられたらやり返す
信じているものに裏切られたときが一番ショックですからね。今話したことはすべて復讐のための準備にすぎません。
まず、探偵を雇いました。
正確には違うんですが、似たようなもんですね。たまたまネットで見つけたところに頼みました。
さっそくそこに証拠と浮気相手の情報の収集を頼みました。
あのクソは、毎日クソとあっていたので証拠なんて簡単に集まりましたよ。
しかも、頼んだそこはクソたちのスマホのデータも全て回収してくれたようでもう十分すぎるものが三日で集まりました。
けど、それだけだと面白くないので決戦の日まで情報収集を頼みました。
俺は俺での戦いがありまして、好きでもないヤツにしっぽ振って機嫌とって、笑顔ふりまいて夜の相手してやって。
地獄ですよ。地獄。
頼んだところには、本当にお世話になりました。
クソ野郎…………浮気相手の情報もとても詳しくていらなかったんですが、経歴やスリーサイズ、健康状態も教えてくれました。いったいどうやって調べたのか……。不思議ですよね。
その中から必要な情報だけ言いますと相手は結婚してて俺と同じく子なし。
そこのお嫁さんはとても美人でうちのあのクソとは大違いでしたよ。
マ〇オで例えるならそこのお嫁さんはピ〇チ姫でアレはク〇パとかよくてク〇ボウ。
ご丁寧に住所まで教えてくださったので一度見に行ったんです。
めっちゃいい所に住んでましたよ。
しかも、結構広い一軒家!!
よくCMとかで流れてる大手企業に務めてるらしくて……最初に言いましたけど顔もそこそこ良かったですよ。
まあ、性格はクソですけどね。
今でも謎です。
どう考えても勝ち組の人間があんなゲームの中ボスみたいなヤツとなんで浮気なんてしたのか……。
あ、W不倫か!!
いや、それでですね、その頼んだところが家の至る所に小型カメラと盗聴器を仕掛けてくれたんですよ。
俺まで監視されてるみたいで嫌だったんですけどこれも復讐のため!!
と思ったら案外、いけました。
映画に無理やり誘った日には、
『マジきもーい!! 今更、機嫌とっても遅すぎなんですよwwwwww つか、さっき寝ない? とか誘ってきたwww ねぇ!! そろそろ結婚しようよ!! 式のお金は、慰謝料で準備するから❤』
って電話してました。
全部あとから聞きました。
包丁持って暴れそうになりましたよ。
担当してくれた子には感謝してます。
会った当初から表情のない子だったんですけどね、そんな顔で
『これはゲームです。最終MISSIONをCLEARする前にゲーム機を壊してどうするんですか』
って言われて…………。
なんか、妙に納得して反吐が出る地獄にも耐えれるようになったんです。
で、あの不倫してたら〜のくだりですよ。
お前に信じるものなんて何もねぇんだよ!!
言ってる俺が笑いそうでもう、大変でしたよ!!
いや〜ほんと、ごめんねお兄さん。
久しぶりに大笑いしてしまってね…………。
アレの心が俺に完全に戻ったのは大体半年ぐらいかかったのかな。
で、ちょうど結婚五周年記念に俺の両親とアレの両親交えてお祝いパーティしたんだ。
ちなみに俺の実家でね。
田舎だから結構広い家なんですよ。
へえ! お兄さんも田舎に住んでるんですか!
へー……金髪なんでてっきり、バリバリの都会っ子かと思ってましたよ!
へ? あぁ! 外国の方なんですね! どうりで目鼻立ちのいいお顔なことで!! いや、それにしても日本語お上手ですね!
あ、ええ、そうですね、話戻しますね。
実は、気の利くその担当の子がわざわざ企画書持って提案しに来てくれたんだよ。本当は兄弟も呼ぶ予定だったんだけど
『当日にご兄弟を巻き込むのはやめた方がいいですよ』
とか言ってくれたりしてさ…………確かに俺の勝手な復讐に兄弟巻き込むのはゴメンなだなって思って。
ついでに言うと、あっちのご両親には良くしてもらってたから本当は呼びなくなかったんだ。
けど……仕方ないからな。
あの子の計画通り最初は当たり障りのない会話から始めて空気が温まってきたところで作戦開始。
料理に刺身があって、それと一緒に大量のわさびを口の中へ放り込む。
からの嘘泣き。
…………わさび辛かったです。
おかげで涙が沢山出ましたけど。
うちの父が異変に気付いて
「どうした? 腹でも痛いか?」
って寄ってきたんで
「僕…………この関係が大好きでした……ひぐぅ……でも……もう…………こんな食事会出来ないと……ひぐぅ……思うと……悲しくて…………」
一同ポッカーン。
んで、俺、事情説明。
「半年ぐらい前かな。俺、知っちゃったんだ。浮気してること。それで、探偵的な人を雇って調べてもらったんだ」
クソ、真っ青。
見ものだったよ。
アレが見れてほんと地獄が天国に変わったよ。
それを横目で見つつ俺は激選したしてる最中の写真一枚をポケットから取り出した。
公園でサルみたいにやり合ってるやつね。
向こうの親も俺の親も本人も顔真っ青。というか、白。
魂抜けたって感じ。
真っ先に動いたのはクソ。
写真を奪ってビリビリ破いた。
けどさ、今の世の中たった一枚の写真破いたところでなんの意味ないの。
カメラに入ってるデータ消さない限り消えないの。
そんなことはさておき、破いたそれを床に叩きつけたところで鬼の形相のお義父さんのビンタがクソにクリティカルヒット。
あいつの名前呼びながら十往復ぐらいバシバシ叩いてさ!!
お義母さんの方も泣きながら何か叫んでたよ。
うちの両親?
しばらく何が起こったかわからんって顔して座り込んでたよ。
でも流石に向こうの親の行動が目に余るものだったから止めに入ったけど。
ひと段落したところで俺は自分のカバンから茶封筒を取り出した。
中には、別に厳選した動画と音声の入ったUSBメモリー、時系列順に並べた細かい報告書。
それから、俺、電話したんだ。
どこにかけたか当ててみてくださいよ。
ん? あ〜……おしい!!
正解は浮気相手の奥さん!!
実はね、その日の一ヶ月ぐらい前に接触して事の経緯と計画を話しておいたんですよ。
奥さんはね、毎日仕事の遅い旦那を待っていつも暖かい手料理を作ってたそうです。
健気ですよね。
たがら、計画をすんなりと受け入れてくれましたよ。
しばらくしたら浮気相手プラスその家族、向こうの奥さんとその家族で来てね……。
浮気相手の顔が腫れてました。
めっちゃくっきり赤い手形がついてましたよ!! しかも、両方!!
入ってきたと同時に浮気相手の親が土下座で謝ってきました。
「このたびは、うちのバカ息子がすみませんでしたァァァァ!!!!」
って効果音が聞こえるぐらいの勢いでね。
でも、なかなか当の本人が頭下げないもんだからそこのお父さんが
「このバカ息子がァァァァァ!!!!」
頭がシッて掴んでそのまま床に叩きつけたもんでさ!!
そいつ鼻から血、流してやんの!! ホント、傑作でしたよ!!!
これで役者は全員揃った。
きっと、推理ドラマならここで探偵が推理ショーを始めるんでしょうね。ふふふ。
なんだかんだで既にお通夜状態の中で始まった楽しい楽しい話し合い。
全員、自己紹介を簡単に済ませてから本人たちに事の説明をさせた。
二人は焦点の合ってない目で話してくれたよ。
簡単にまとめると出会ったのは、その日から二年前。きっかけは、たまたま居合わせた居酒屋で男の方が声掛けて酔った勢いでやってしまったと。そんときにご丁寧に連絡先まで交換したんだとさ。
それから、密会して仲深めてバレないことをいいことに毎日会ってやってたんだと。
でさ! そこまでしといてそいつらは、
「私が愛してるのはアナタだけよ!!」
「俺が愛してるのはお前だ!!」
とか言っちゃってさ!!
ほんとバカバカしい。
俺が一発殴る前にそいつらの父親が殴って静かにさせてくれたよ。
だから、俺、その場でUSBメモリーの中身をパソコンで再生してあげたの。
あ、ちなみにそれね、担当の子がうまい具合に盛り上がりシーンを繋ぎ合わせたPV。
いや〜よかったよ。
結婚相手の悪口言いながら気持ちの悪い愛を語ってたよ。
顔色は、真っ青というか真っ白というか…………なんか、死人の顔? 色もそうだけど表情もね。
正座したまんま二人とも魂飛ばしてたよ。
そんで、離婚届を出してやったらさ二人とも
「それだけは嫌だ!! 心から愛してるから!! もうしないから!!」
って泣きわめくんだよ。
大の大人が。
アイツにいたっては仕方なかった。
だって、その時アイツの好きなやつは、俺だったから。そのための地獄だったから。
あの顔が見たかったから。
あの泣いて俺にすがり、許しを乞うその姿が見たかっただけだったか。
快感だよ。
今まで感じたことのない快感をくれてありがとう。
そう笑って記入済みの離婚届を渡した。
慰謝料とかは、担当の子が紹介してくれた腕のいい弁護士に頼んでがっぽり貰ったよ。
その子のお金は、貰った慰謝料の方に入ってたからそれで払う予定。
そ。まだ払ってないの。
振込でいいって言われたけど直接あってお礼も言いたいからね。
ここで会う予定なんだけど……実は、仕事が早く終わって二時間も前に来ちゃってね。
先に飲んでたの。
もうすぐ時間なんだけど…………あ! 来たきた!
ここ! こっち!
え? このお兄さんとキミ知り合いなの?
へぇ〜!! あ、じゃああなたもそうなんですね!!
いや!! 本当に今回はありがとうございました!!
これ、お金と粗品です。
まさか、お二人がお知り合いだったなんて! どうです? 別の店で一杯やりませんか?
アスラン「なあ、この人、だいぶ酔ってるけど大丈夫かな?」
リーベ『既に意識はありません。大丈夫じゃないですね』
アスラン「仕方ない。家まで送るか。リーベ、この手土産持ってくれ。俺がこの人運ぶから」
ころノ言ノ葉 番外編
需要(感想・レビュー)がある場合、担当の子目線での話を書こうと思います。
その場合は、ころノ言ノ葉ではなく
一つ愚痴を聞いてくれませんか? 番外編
として短編を出そうと思います。
日刊ランキング74位(2019/01/20 )
ありがとうございます┏○┓




