感情の仮面は奪う
仮面とは顔を隠すことや身分を隠すことに使われたりする。他には神様をその身に宿す祭事のときに使われたり、秋田のようななまはげとなって、人の子の厄災を払ったりと多岐に渡る。
「知識も手に入るってのはいいもんだね」
仮面に身を任せることで知識が手に入る。その知識は元の世界からや、この世界からの二つがある。
「デスマスクを作るのもいいかもね」
死体の顔から型を取って、その型から作り出すデスマスク。写真の無い時代に身元不明の人物を知るために使われていた。
「魔物の素材で作る事も出来るし、死体から作るのでもいい」
作る事は出来る。だが出来るまでだ。知識の解放には実際に作って身につけなければ手に入らない。
「何となく予想は出来る」
死んだ人間の力を奪えるだとかそんなもんだろう。
力としては強奪や簒奪などの力に分類されるのかな。いや、ソウルイーターとか魂を手に入れて自分の力にする方が近いのか?
「後は祭事の仮面でもいい」
神卸が出来るかもしれない。神に一番近づくのかもしれないし、出来ないかもしれない。やってみなければ分からない。
「道具や材料がなさ過ぎなんだよな」
ただの生活で刃物を手に入れることは出来なかった。
自分の家に知らな人が刃物を持っていたら怖いことと一緒で、刃物は食事の時のナイフくらいしか渡されなかった。まあ、食べ終わったら回収されちゃうんだけど。
「慈悲の仮面だけはサービスなのか最初から持っていたけど」
無から有を生み出せるなら、今の状態でも生み出せそうだと思ってしまう。だが条件が分からない。条件が分かれば仮面が増やせるのに。
「薪からくすねるか」
王都に入ってくる薪は大木から切りだした丸太だ。そこから加工したりして王城に薪として入ってくる。薪の長さは手首から肘までのもので、それを斧で何等分かにしてかまどに入れている。
薪を半分にした物だったら仮面を作るときに丁度良い。
「兵舎に移ったとはいえ、いやナイフで作って見るか」
ナイフの刃が悪くなりそうだが丸太から切りだしてみることにする。
「どんな仮面にしようかな」
慈悲の仮面の力で水と回復を行使することが出来る。他にも出来たら一人で暮らすことになっても困らないと思う。
「仏教とは違う方の、そうだ聖教の憤怒でもいいか」
七つの大罪の一つの憤怒。自分でも少し安易だとは思うがイメージが決まった。
「この仮面を基にして出来るか?」
スキルで出現する仮面を手元に出し、付け心地を確認し、造形まで確認する。
「憤怒だったら何がいいかな、鬼、般若?いやドラゴンの方がいいか」
聖教という海外の宗教ならドラゴンの方が良いと思う。それにドラゴンだったら爬虫類系だからイメージもしやすい。
「ドラゴンで憤怒の仮面」
言葉にすると自分から何かが奪われる感覚が這い出てくる。それは人が人であるためへの警告か、それとも力の代償による感覚か。彼はまた変わった。
仮面は光を放ち二つに分かれる。一つは基の仮面、もう一つはイメージどおりの憤怒の体現者。
「これでも生み出せるのか」
新たな発見に少し喜ぶ。だが、憤怒の仮面をここで付けようとは思わなかった。憤怒なんてもん暴走して迷惑を掛けるオチになりそうだから、やめた。
「違う仮面の方が良いな。あ、仏教で作ろう」
次に作る仮面は仏教の仮面となった。