仮面は知識を身につけた
城での生活はそれなりに便利だった。本を読むことも出来るし、食事も取れる。更にはしっかりとしたトイレもあった。
「でも、そろそろ出ないと、か」
それはこの城からということになった。その後は兵舎で過ごすことになるらしい。食事の質は落ちるが本を読めるらしいので、一部の人には不平不満が出たが仕方がないことだと思う。
「魔法について分かってきたけど、みんなが受け取った物がね」
自分が持っているのは仮面。それも二つ。
他の人たちは様々だが、武器や料理器具、更には本まであった。それが一人ずつ、同じ種類だとしても同じ形状の物は無い。それにその物に付与されている力も違っていた。
「荷物の整理も終わったし、この部屋からでないと」
ロレンさんを呼ぶことにする。
ロレンさんとは自分の部屋に付いているメイドさんだ。欧米人風の顔で堀が深く、少しきつめのメイクが印象的だ。髪の色は瞳が青に対して金髪だ。この世界では髪の色に魔力が宿っているらしく、あの部屋では気付かなかったが、みんなの髪の色まで変わっていた。
「ロレンさん有り難う」
その一言だけで部屋を出ることにする。
ロレンさんはお辞儀をして見送ってくれるが、言葉はない。たぶん情を持たないようにするためにしているんだと思う。
「さてと、兵舎の方に行くか」
兵舎の方はかなり大きい。煉瓦と木造で出来ているからそれなりに重圧感も出ている。
トイレの方はくみ取り式で、一日一回ある穴に入れに行く。その穴にはスライムが居て、そのスライムに食わせて居るみたいだ。
魔物の本を読んでみたが、スライムは危険ではないらしい。実際に見てみたけど安全だった。
「スライムが妖精扱いか」
思わず口に出して笑ってしまう。ゴブリンも妖精扱い。魔物と呼ばれるのは魔力、または穢れに汚染され物を指すらしい。
獣が汚染され魔獣に。
死んだ者が汚染され、不死属。
負の感情から生まれる鬼。
纏めると穢れた存在は悪い生き物だよ、らしい。
「ゴブリンは不細工な子供の姿をしていて家の手伝いをしてくれるとか、何も知らないで居たら攻撃しちゃうところだった」
勿論、このことは他のみんなにしっかりと伝えている。それに穢れについても伝えている。
「快楽的に殺す無かれ。命を粗末にする無かれ。穢れし行いは魂を穢す」
復唱するように口にする。この世界には神様も仏様が居る。そのどちらもが生き物が行き着く先である。
輪廻転生という考えも存在し、外国のような魂を神様に裁かれるという考えもある。裁かれる魂には穢れを溜め込んだ生き物が対象らしい。
神様は気ままに、そして自由に過ごしているため人に対して迷惑を掛けることが多い。力を示すために他の神と戦ったり、供物を要求する神までいるらしい。
仏様は死後の魂を導いたり、神様を殺したりなんてする。神殺しをした仏は神になってしまって、そのあとは神としての生が始まるらしい。
「らしい、ばっかだな。まあ本で読んだことばっかだから仕方ないか」
そんな風にしていると、兵舎に着いた。自分の部屋に割り振られた場所に荷物を置く。扉には鍵が無いが、メイドが居ない分盗まれることは少なくなると思う。
ああ、メイドは悪って、考えがクラス中に広がっていて、本当に怖かったな。
メイドが掃除をした部屋で時々物が無くなるのだ。女子はかなり物を盗まれたらしく憤慨していた。まあ、その女子の勢いの御陰で兵舎に入れるようになったから、怖い反面、感謝をしている。
「てか、兵舎に移った方が盗まれないって」
鍵の付いている部屋で盗まれて、鍵の付いてな部屋の方が盗まれないって。
「部屋の掃除は各自で、食事は同じ時間で来た順番に」
料理は順番が後ろに来るほどに冷めて、量も少なくなる。そして、具も少なくなるし、冷たいと不味い。
料理の材料がその日で一番安い物を塩でごった煮にしているからだ。
奇跡的に美味しいときもあるが、大抵は不味い事が多いが、あく抜きもしていないから殆どが不味い。
仕方ない。仕方ないと言い切るしかない。大人数の料理を作るのから手間を省くことしかしないみたいだ。
「料理組が残っていれば、いや無理か」
料理を作れる人たちは城に残った。彼女等の一人でも残っていればとも思ったが、料理という点で優遇されているから、彼女等は城に残った城組と呼ばれている。
「クラスに中が結構ギスギスしてきてるし、そろそろ出ようかな」
城組に彼女等がならなければこんなに・・・いや生活の悪さからのストレスでいずれなってたか。
さてとそろそろ仮面の力に慣れてきたから一人でも生活が出来そうだ。
「ま、もうちょっと知識を付けてからにするけど」