神になれと邪神はいう
みんなの目が覚めていく。一人、また一人と増えていき、知識として植え付けられた情報が本当なのか理解するために、「ステータス」と言っては静かに確認する。
「みなさん、異世界へようこそ」
春矢が大きくお辞儀をしている。みんなは自然と目が彼を追ってしまう。ステータスを確認していたのを止めてまで見入る何かを発している。カリスマ?いや違うと、何故だか分かる。
「邪神の春矢と言います、どうぞよろしく」
邪神、その名詞を聞いて周りは驚く。だけど僕は平然として、どおりで警報が鳴り止まないと思ったと何故だか他人事のように感じてしまう。
「皆様は分身です、元の世界からの情報を元にして作られた、いわばクローン」
ホムンクルスと誰かが言った。だが春矢は直ぐに否定して言った。
「ホムンクルスなんて失敗作を言わないでくれ。それと、時間が無いから手短に説明をするよ」
神と人が共存する世界。だからこそ、神の力が希薄し、人に宿り、浮遊する魂にも宿り、植物にも宿る。精霊という存在も生まれ、やがては神へと至り、人は精霊と成るか、仏と成るか、それとも転生などをして無理にでも生にしがみつくか。
僕たちの使命は神になる事。神になるための足掛かりは与えた、だからこそ抗って生きろ。力を付けたならば殺しに来てもいい。
「では、神の候補生達に、幸運を」
そう言って消えていった。だが小さな声で僕にだけ囁いた。
「仮面ツカイのあなた様には邪神への才能があります。それを祝って私めから加護を」
そう言い残した。直ぐ後にはあの老人が兵と兵とは違う男を一人連れて戻ってきて、僕たちに状況の説明をした。
何処かの神が召喚をした。理由は分からないが、日本から来た神からは支援すると言っていたため、収穫物を多くするなどの見返りと引き替えにだが保護することにした。君たちの自由にしていいが、罪となる事はしなければいい、などなど。邪神からの話を聞いた後ではあまり驚かない内容だが、しっかりと聞いていた。
「あの」
誰かが手を挙げて、そう言った。だが、聞かれた相手は少し警戒しながらどうしたと聞いて来た。
「日本の神って、アマテラス様などですか?」
あの、とだけでは誰の声かは判別できなかったが、その質問で誰なのか分かった。それは川羽 冥香だった。
「いえ、あの方は日本で信仰されているため、わざわざこの世界に来てまで信仰をされには来ていません。この世界に来ている神は観光か、元の世界での信仰が薄れたために他の神に従属した者です」
神には神の事情があるのだろう。まあ信仰が薄れるということは元の世界でもあったことだし、時には同じ神だと混同させるようなこともしていたともいうし、当然なのかもしれない。
「ありがとうございます」
彼女はそう言って少し落ち込みながら考え事をしていた。どうやらアマテラスに合いたかったのかもしれない。
「さて、皆様の自由にしていいといいましたが、数日の間はこの世界の事について学んで貰います」
それを聞いてみんなは露骨に嫌な顔をするが、学ばなければいけないという言葉が嫌な顔にさせている原因だと思う。だが、余りにも露骨すぎて溜息を吐きたくなる。
「ではメイドと各々に部屋を設けているのでそこを一時的に使用してください」
後、そう付け足すようにして男の人は続けた。
「メイドには手を出さないようにしてください」
それは普通のように思えたけど、クラスメイトの中には残念がる声を上げてる人も居た。どうやら手を出そうとしていたらしい。取り敢えず、その声を上げている人には男の人が付くようにして貰う為に、僕のメイドに伝えてみる。
が、しかし、反応が余りにも薄いので何かがおかしい。そのおかしさについて今はまだ分からないのだった。