仮面の男は静かに降り立つ
頭の部分だけが冷たく、布団から出てしまったのでは無いかと思い枕を探すが、あるのは人の体温の様な物と布、布団のような大きな物は存在していなかった。絨毯のような所に寝かされ、そこからはみ出たような感じだ。
「?」
深夜なら窓からの光が差し込み、いや新月の時でも外の明かりで部屋に光が届くはずだ。それなのにこの場にあるのは、天井から漏れ出る光。それはとても小さく、明かりなど無いようにさえ思えてしまうほど小さい。
「ここは何処?」
夢のような感覚だが、先程まで眠ってたことが夢であることを否定する。寝ぼけているわけでもない、辺りには本当に人が眠っていて、自分の着ている服さえも着慣れた圧迫感から、学校の制服だと分かる。
「異世界」
防衛本能が働き、即座にその答えを導き出す。ありえない状況だが、眠る前に見ていたあの状況を思い出し、体が強張ってしまう。
「誰か起こさなきゃ、いや」
自分がパニックを起こさなかっただけかもしれない。それなのに起こしたらパニックが伝染していき、しまいには暴力沙汰になるかもしれない。
そんな冷静に思考する自分の異常さに気付かないまま、この状況をどう解決するかという問題に対して回答しようとする。
「ステータス」
言葉に発して確認する。知識として植え付けられた事が本当かどうか、その一言だけで分かった。
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Name
井面 和哉
Job
Skill
仮面の者+
∟慈悲+
Degree
異世界人+
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「少ないけど、詳細は確認出来るのか」
そんな確認しているときに、重苦しい音が部屋に響き渡る。それは引きずるような、いや擦れるような音であった。それが扉が開いた音だと気付いたのはその間から漏れ出る光を見たからだ。
寝た振りをして誤魔化そうとする。狸寝入りが通じるか分からないが、自分一人だけ起きていては不審がられると思っての行動だった。
「神から異常があるからと聞いて来てみれば、何処の神じゃこんなことをしたのは?」
皺枯れたれた声からそれなりの歳を取っていることが分かる。だがその体から発する言葉の圧力は格上だと本能が意識するものだった。
「邪神の類か、異形か、異世界の者を呼ぶなんて酔狂なこと、それくらいしかいないじゃろ」
年老いた男性。老齢の男。彼を言葉にしようと頭の中に単語が思いついてくるが、彼が発する覇気がそれを否定させてくる。
「下位の神に聞いてみるかの、同じ世界から来た神も居るかもしれんからな」
同じ世界、そんな日常生活で異質な言葉が出た事により、余計に異世界だと納得させられてしまう。それに神と言った、信仰の対象となってはいるが、目に見えず、話をすることも出来ない存在に対して、聞いてみるかと日常の一部となっているかのように言っている。
「起きている者も居るが、適応が早かったか、適応できなかったか」
何か最後に言い残したように思えたが、彼は僕らを残して部屋から去っていった。
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称号 異世界人
異世界より召喚、または紛れ込んでしまった者を指す称号。神が見た際には()が付き、その中にどの世界から来たのかが分かるようになっている。異世界での技術等が成長率に変わるためノーマルスキルを持ってない、補正がない状況から始まる。
言語の面では不自由なく扱えるようになる。それは異世界の言語だけで、魔術での魔言、神の扱う神言などはしっかりと学ばなければ扱えない。この理由は魔素を介してその意思情報を読み取るためだからだ。魔言や神言には魔素が改変されるために、正しく読み取れなくなってしまう。