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十話 『醜悪な騎士と白銀の姫の結末』

「《氷神よ・氷海に化せ》」


 開戦と同時に、エルフィオネが、氷神魔術で海面一帯を氷結し、海神王の動きを封じる。

 ……が、その拘束が長く持たないことは、誰もが承知していた。

 故にエルフィオネの狙いは、海に足場を作ること。

 そして、氷結した海面を走り抜け、



「粉くそがぁああああああああああああああああ――ッ!」


 ドダァアアアンッ!


 海神王の背中に飛び乗ったアレクサンダーが、重量一トンの《ファルシオン》を打ち付けた。

 続けて、


「……ん。私も……やる、よ!!」


 ドダァアアアアアアアアアアアンッ!


 アレスが飛び乗り、拳をたたき付ける。

 

「ギャアアアアア――ッ!」


 アレスの一撃に、海神王が悲鳴を上げて、その甲羅を凹ませる。

 しかし、瞬く間もなく、一瞬で、その窪みは修復される。

 他にも七百人の戦士達が攻撃するも、傷一つつけられない。

 ……やはり、海神王が海にいる限り、攻撃に意味がない。


「行けっ! アンちゃん」

「……ああ」


 が、この特効部隊の目的は、コータが海神王を横断するための時間稼ぎ。

 だから、コータは脇目も振らず全長十キロある海神王の背中をひた走る。

 

 作戦、第一段階、『白銀の王女』エルフィオネ・『純白の聖女』マリア・『黄金の姫』ロニエス、この三人で、海神王を中心に三角点で囲むこと。

 そうすれば、海神王を転移魔術で亜空間に転移出来る。


「ギャアアアアアオオオオオオオオーーッ!」


 もちろん、海上に出てきたコータ達に、海の神は容赦なく猛攻に出る。

 例えば、海底に無数の魔方陣を描き、魔術を起動。

 エルフィオネの氷結した凍りを貫く、海水の槍が創成される。

 

海神槍ゴッド・ランス)》。


 例えば、海神王の甲羅に所かしこと点在するキャノン砲の砲撃。

 回復力が高いことを良いことに、体組織を打ち出すという物理属性の砲撃。


海神砲撃ゴッド・キャノン)


 どちらも、戦士達を一撃で屠りながら、コータにも向かう。


(……ちっ! 流石に直撃したら俺も死ぬ……か)


「エクス――」

「アンちゃんッ! 一々、相手にするなッ! 構わず走り抜けろいッ!」


 その攻撃を聖剣で打ち消す為に、足を止めようとしたコータの前に、アレクサンダーが怒号を上げて、割り込んだ。

 

「ああ……任せる」

「おうよっ!」


 足を止めずに進むコータの後ろで、割り込んだアレクサンダーに、《海神砲撃》が直撃した。


「うわああっ。こ、コータさまっ! ライオンさんが!!」

「ほっとけ、あの程度で死ぬ奴じゃない」

「……っ!」


 コータの背中で、砲撃を受けたアレクサンダーの姿を見て、悲鳴を上げたロニエスの瞳には、同じ攻撃を受けた人間の半身が消し飛ぶのが映っている。

 ……が、


「きくぅ~~っ!!」


 コータの言う通り、砲弾が十発は直撃したはずのアレクサンダーは、少し、体毛を焦がしただけで無傷だった。

 人類最強の肉体を持つ男の名は伊達ではない。

 

「……ん。コータ。私が護る、よ?」


 更に、アレクサンダーの肉壁を越えてコータに迫る《海神槍》は、アレスが拳で粉砕。

 これが、かつて、勇者ユグドラが最も、信頼を置いた剣聖と武神の実力。


 おかげで、


「到着。ロニエス……後は、頼むぞ?」

「はいッ! はい! 頑張りますっ!」

「……その息だ。が、無理だけはするな」


 定位置でロニエスを降ろし、頭をワシワシと撫でる。

 色々言いたい事はあったが、コータはロニエスを信じることにした。


「クロ。お前にかかってる。……頼むぞ?」

「にゃ~にゃ~♪」

「あうぅ……私の時より、心なしか気持ちが篭っている気がしますぅ」


 ロニエスの喚き声を無視して、コータは、クロの頭をワシワシしてから、もう一度、ロニエスを見つめた。

 

「……あぅ? な、なんですかぁ~?」

「フッ……」


 小動物の様にビクッと怯えるロニエスを笑って、魅了を抑える為につけた仮面をとり、自分に装置。


「相変わらず可愛い顔してるな」

「もうッ! なんなんですかぁ~!!」

「いや、ただ、何となくお前の顔を見ておきたかっただけだ」

「あぅ~~っ。そ、それってぇ~! それってぇ!! もしかして!?」

「話は後だ。行ってくる」

「あ、コータさまっ! 今言ってくださいよぉ~っ! いじわる!!」


 コータは何時ものように、自分が言いたい事だけを言って、したい事だけをして、颯爽と闘いに行ってしまった。

 ……何時も通り。

 いや、何時もとは一つだけ違う。

 コータは今、ロニエスの力を頼っている。

 ロニエスは今、コータと共に闘っている。

 やっと、ロニエスは、クロのように、コータの隣で闘える。


 ロニエスの気力と集中力が満たされたとき。

 計らずも戦場の三方に散った《世界三大美女》全員が同時に詠唱した。


《魔神の力よ・調和し給え》

《美の神よ・協調せよ》

《大いなる慈愛の母よ・他神様と御力を合わせ給え》


 三人の足元に銀・金・白色の魔方陣が出現し、重り合う。

 もちろん、ロニエスに、魔力を協調させる力はなく、重なった魔方陣が暴走し崩壊してしまいそうになった。

 それを……


「……にゃ~《にゃん》」


 コータから離れ、ロニエスの頭に残ったクロが、コントロールし協調を完成させる。

 同時に、神子三人の魔方陣を操作し、連結し、調和させた。

 これにより、一つの巨大な魔方陣が完成し、海神王の身体を全て包み込む。


「流石ですね……クロ。ですが、後はこちらでやりましょうか。送りますよ? マリア」


 機が熟したことを感じとったエルフィオネが、協調魔術の舵をとる。

 ロニエスの《クリスタル・ロッド》・マリアの《クロス・ロッド》・エルフィオネの《ヴァナルボルク》がそれぞれの色で輝きを放つ。


「……どうぞ。エルフィオネ様。受け止めます」


 エルフィオネの《破壊》と、ロニエスの《魅了》の力のほぼ全てを、マリアが受け止める。

 流石にコレを調和出来るのは、《浄化》の力を持つマリアだけ。クロが手を出せば消滅してしまう。


 まさに、クロ、ロニエス、マリア、エルフィオネ、四人が居てこその完全協調。


「《三柱の神よ・彼の者らを、新たなる次元へと――》」


 異次元転送協調魔術ディメンジョン・ウェーブ・ユニゾン

 海神王を異次元へ飛ばす魔方陣が遂に完成する……直前。

 ……エルフィオネは気づいた。


(ユグドラ……このまま起動していいのですか? 海水ごと、海神王を転送させる事になりますよ?)


 少量とは言え、海水ごと転送したら、海神王を討伐出来ない。

 そう、それこそが、作戦開始前、リゲルだけが気付いていた、コータの作戦の欠点。

 ……だから、


「ふん……今こそ、我が忠義を示す時」


 一人残ったリゲルは、そう呟いて、最後の神剣ラグナロクを天に掲げていた。

 そして、


「この命……姫様に捧げましょう。……あの時、私を救ってくれたこと、ユグドラ・クラネル。いや、冒険者コータ殿よ。礼を言う。《神の龍よ・我が肉体に宿り給え》!! 心霊変幻! 《ラグナロク》」


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


 神龍ラグナロクにその身を変化させた。


「……ぇ? リゲル……さん。何を……何をする気ですかぁ!」


 ラグナロクとなったリゲルは、ロニエスの叫びに答えるが如く、海に潜り、海神王の下から、身体を持ち上げた。


 ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ――


「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――ッ!」

「ギャアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――ッ!」


 神龍が海神を持ちあげる。

 海水が無い上空に……


 だが、逆に言えば、リゲルは、コータが絶対に入るなと言った海に入っているということになる。

 その……代償は大きかった。


 海中で起動した、無数の《海神槍》が、龍となったリゲルの身体を、串刺しにする。


 ザクザクザクザクザクザク……


「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……っオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――ッ!」

「り、リゲルさぁあんッ!」

「ニャーッッ!」


 断末魔に近い雄叫びをあげるリゲルは、穴だらけの身体から血を滴らせながら、それでも海神王を持ち上げつづける。

 リゲルを止めようとロニエスが、魔術を辞めようとするのを、クロが爪を立てて制止する。


「――ッ!」


 ……誰の目にも明らかな事が一つ。


 リゲルはもう、助からない。

 それは、聖女マリアが唇を噛んで、何も言わないのが良い証拠。


 神と神の相対に誰もが思考を止めている中、海神王の背中にいるコータが、


「エルフィオネ!! やれ!!」

「……ッ!」


 そう叫び、


「ハイッ!! 《新たな次元へと、誘い給え!!》」


 大規模異次元転送魔法ディメンジョン・ウェーブ・ユニゾン起動。

 海神王とその背中に乗っていた、コータ、アレクサンダー、アレス含めた、五百人の戦士を異次元に強制転移させた。


(自分の義に従う……か。フッ。……愚かな事だが、確かに悔いはないものだな。姫様……どうか、健やかに……)


 ……後に残ったのは、龍化が解けて、上空から海に落ちていく、穴だらけのリゲルの骸だけ。


 「…………」


 一方、コータは、作戦の成功に微塵も喜ぶ事はせず、魔眼《識別眼》を開眼し、《海神王リヴァイアサン》を凝視していた。


 エルフィオネの魔術で形成された別空間。

 ただし、別空間と言っても、異世界に飛ばした訳ではなく、現実世界の平行線上に生成した虚無の世界。

 故に、空間の大きさは、現実世界と同じ。

 足場は有るが、透明な壁の様になっていて、下を向いても真っ暗な暗闇が続いている。

 現状、光があるのは、コータ達の真上のみ。

 ……そこだけ、現実世界と繋がっているであろう。

 

(生き残ったは五百人……か。ま、ここからだな)


 命懸けのリゲルの一手で、完全に海神王と海水を分離出来た。

 コレならば、海神王は魔術も超回復も発動できない。

 後は、《超硬甲羅アダマン・シェル》を砕き、その下に隠された核を破壊するだけ……

 そうすれば、コータ達の勝利となる。


「ギャアアアアアオオオオオオオオオオオオーーッ!」

「「「――っ!!」」」


 そんな中、誰よりも先に海神王が咆哮し、百のキャノン砲を一斉発射。

 しかし、コータ達を狙わず、直上に撃たれた。


 バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ……


 海神王の周辺に、雨の如く降り注いだ砲弾が、《マーマン》や《クラーケン》となって蠢き出す。

 そう、海やフィンラネル王国で尽くコータ達を襲った《マーマン》や《クラーケン》は、元をたどれば、こうして生み出されたもの。

 だからこそ、コータやアレクサンダーは海神王の分体と呼んでいたのである。


 その分体が、一秒毎に百、二百、三百、四百と増大していく。

 それらが一斉に……


「「「「「ギィヤァアアアアアアアアアアアア――ッ!」」」」」


 コータ達に襲い掛かった。

 大乱戦。

 しかも、


「うおっ!? なんだコイツら!! 外にいた奴らよりも手強いぞ!!」

「くぅ~~!! 数がッ!」

「「「「ぐわぁあああああああ~っ! や~ら~れ~た~っ!!」」」


 今までの劣化分体達とは違い、海神王が直接生み出した分体達。

 単純にその能力は、三倍近く向上していた。

 死線を何度も切り抜けてきた歴戦の戦士達が、次々と倒れていく。


「お、おい。アンちゃん。やっこさんを海から出したら勝てるんじゃなかったかぁあ!?」

「ん……余計、面倒臭くなった、よ?」


 その戦況に、剣聖と武神の二人ですら、苦悶の表情をあらわにしている。

 この闘いは、それ程、地獄の様な闘いと化してしまった。

 ……が、コータは、仮面の下でニヤリと笑い、《聖剣エクスカリバー》と《神剣アスカロン》両手に装備した。

 そして、


「お前らの目は節穴か。やっと奴が、窮地に陥ったて事だろ?」

「「――っ!!」」

「それに、だ。今、奴がやっている事はただの分裂。海水で体組織を超回復が出来ない以上、底がある」


 そういって、分体の山を斬り捨てた。

 ……今までの海神王はあくまで、ただ邪魔な小石を蹴り飛ばそうとしていただけ。

 だが、今は全力で敵を排除しようとしている。

 コータ達はようやく、海神王を脅かす存在となったのだ。


 つまり、


「攻め時だ。全員、一丸となって分体を殲滅するぞ!」

「「「「うおおおおおお――ッ!」」」」


 海神王リヴァイアサンとの最終決戦の始まりであった。

 

 ……30分後。

 海神王の分体が減ってきた頃合いで、コータは、アレクサンダーとアレスを呼び集めた。


「二人とも。そろそろ、本体を倒すぞ」

「……ん」

「……だな」


 海神王は、海水で超回復が出来ないのも関わらず、分体を造りつづけた。


(他に攻撃手段も無かったんだろうがな)


 そのおかげで、海神王の身体は最初の三分の一程までに縮んでいる。

 ……ここが勝負に出るとき。


 歴戦の英傑達は、コータに言われずとも自ずとそれを悟っていた。


「じゃあ……久し振りに本気でろうか!」


 コータは言いながら、神剣ラグナロクの力を解放し、神聖属性を纏わせ物理攻撃力を高める。


(リゲル……お前の遺志。使わせて貰うぞ)


 更に、切り札として、残しておいた、聖剣の力も解放した。

 一度使うと、再使用まで、一日かかる聖剣の奥義。


超神聖爆裂スーパーノバァ


 物理・魔術含めて、全ての属性を収縮した莫大なエネルギーを聖剣の刀芯から放出した状態。

 

「これで……逝け。海神王!!」


 海神王の背を駆け上がったコータが、《エクスカリバー》と《アスカロン》の二振りを《超硬甲羅アダマン・シェル》に叩き付ける。


 直後、凄まじい衝撃と火花。

 武神の拳ですら凹ませる事しか出来なかった甲羅を簡単に打ち砕いた。


「次はオレだぜぇ!」


 一番厄介だった《超硬甲羅》が壊れ、丸裸同然となった海神王の身体に、すかさずアレクサンダーが飛び掛かり、


「――アンちゃんを見習って、オレも本気になってやるぜぇい!」


 身体神化……《狂神聖剣士ベルセルク》を発動。


「ぐぅぅぅおおおおおおおおおおおおおお――ッ!」


 自我・理性を犠牲にして刹那的にだが、肉体に狂神の力を宿す極技。

 ベルセルク状態で、ファルシオンを振るう。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――ッ!」


 その一撃は、海神王の準アダマンタイト級の肉を深くえぐり、海神王の弱点。核を露出させる。

 もちろん、核自体の硬度も、準アダマンタイト級なのだが……


「……ん。ワタシも本気。だす、ね」


 武神アレス・ラクレスの一撃の前には無力である。

 なぜならば、彼女は武神の神子。

 コータやアレクサンダーの様に、奥の手など無くとも、初めから同等以上の力を引き出せる。


(これで、王手チェックだな)


 コータがそう、思った時。


 ――ざぁぶ~んっ!


「「「……ッ!」」」


 突然、亜空間に亀裂が入り、そこから、海水が降り注いだ。

 海水は、アレスの拳よりも一瞬、早く海神王を濡らす。

 そこから、アレスの拳が叩き込まれるまでは、刹那の時間。


 しかし、海神王にはそれだけで――

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 ――完全復活。

 更に、流れ落ちてきた海水を触媒に《海神槍》を起動。


「ラクレスッ!」

「ん? ――ッ!」


 ブズゥンッ!


 アレス・ラクレスの身体を貫き、腹腸ハラワタをはじけさせた……。


 ……流れ落ちてきた海水は、そこまで多くない。

 空間の亀裂も協調魔術に不慣れだったエルフィオネ達が、魔力を少し乱しただけであろう。

 ……だが。


 その少しの失敗は、海神王の前では致命的なものになってしまった。


「…アンちゃん!?」


 ……どうすれば良い?

 そんな意味のアレクサンダーの言葉に、コータは魔眼を開眼させながら、アレスの骸を回収し、


「一度、下がるぞ! 生き残り全員を集めろ」

「……おうよ」

 

 海神王から距離をとった。

 ……後手後手で、受け身だが、今はそうするしか無い。


 外と相対的に見れば、少量とは言え、亀裂から入った海水を操る海神王の前で、ウロチョロするのは、アレスのニの前になってしまう。


(リゲル。済まない。だが、無駄にしない。――しないが……)


「ちっ」


 ……打つ手が無い。

 実のところコータには少量の海水をあやつる海神王との闘う策はあった。

 されど、聖剣エクスカリバーの《スーパーノバァ》を使ってしまったコータに、再び、《超硬甲羅》を壊す事が出来ない。


「アレクサンダー……《ベルセルク》は?」

「……わりぃな。ふにゃチンみてぇだ」


 そしてそれは、アレクサンダーの《ベルセルク》とて同じ。


「……さて」


(本気でヤバいな。……こうなったらもう、まるで勝ち目が無い。出来れば、クロとお姫様達を連れて逃げたいが……)


 海神王が支配する海を逃げることは出来ない。

 

「……ちっ」


(……クソッ! 余計な事に頭を使ってる場合じゃない)


「また、時間を掛けて――」


 ――消耗戦だ。

 そう、コータの言葉が喉を出る寸前。


『ユグドラっ! ユグドラっ!』

「――っ! エルフィオネ姫っ!?」


 現実世界で亜空間転送魔術ディメンジョン・ユニゾンを維持している魔神エルフィオネの声が、コータの頭に直接響いた。

 現実世界のエルフィオネは亜空間の闘いをずっと見守っていたのだ。


(このタイミングでエルフィオネが声をかけてきたと言うことは……)


 無駄な訳が無い。


「前置きはいい。手短に」

『申し訳ありません。これ以上はこちら側が持ちません。後数分で、その亜空間は崩壊します』

「っ!」


 最悪には最悪が重なるもの。

 エルフィオネからの報告は、タイムリミットが近いという報告だった。

 ……コレだけの大規模な魔術を起動・維持しているのだ、当然と言えば当然のこと。

 だが、


「魔神の神子だろ! 甘えるな。気張ってろ!」


 今、この魔術が崩壊すれば、本当にコータ達は海神王に殺されるしかなくなってしまう。

 ここは、多少の無理はしてもらなければいけなかった。

 ……優しい言葉を掛けれる状況ではない。

 しかし、


『いえ……わたくしではなく……』


 エルフィオネが言葉尻を濁した事で、逆にコータは解った。

《世界三大美女》の中で、一番、闘いに慣れていない人物。

 ……それは、


「……っ! まさか。ロニエスか!」


 そう、ロニエスが限界だった。

 ヒーラレルラ王宮から抜け出して以来ずっと、コータに守られてきたロニエスにとっては、コレが初めての『命をかけた本闘い』だった。

 背負う命は、多く、大きい。その中にはロニエスにとって一番大切なコータもいる。

 眼前で、ロニエスを支えつづけてきたリゲルの最期を看取った。

 美神の力を使いすぎたせいで、マリアから貰った十字架もヒビ割れてしまっている。

 

「こ、コータさま……っ。私は、まだぁっ……大丈夫ですからぁ……頑張れますからぁ……ッ』


 ロニエスはもう、とっくの昔に心身共に限界を超えていた。


「……っ!」


 ……これ以上は命に関わって来る。

 だが、辞めろと言って素直に辞める性格でもない。


(お姫様が死ぬ!?)


 コータはそう直感した途端、頭がかつて無いほど高速で回転していく。


 海神王をいますぐ倒す方法を考える。

 考える。考えて、考えて……考えて!


「……そうか」


 思いついた。

 海神王を倒す方法は、


「核を壊す。それだけだったな」


 難しいことは何も無い。

 もう、勝ち筋は整っている。


「さあ、終幕にしようか。泣いても笑っても、な?」


 コータは覚悟を決めた瞳で《アスカロン》と《エクスカリバー》腰に戻し、開いた両手を漠然と前に伸ばした。

 そして、


「エルフィオネッ! 『神鎗』をよこせ」


 そう叫んだ。


『……神装召喚っ!? 今、ですか?』

「……ああ。今すぐだ」


 正直な話。

 何度考えても、もう、コータには海神王を倒す術は無かった。

 ……だが、


「よくよく、考えてみたら、俺が奴を倒す理由も必要も無かった、な」


 そもそも話、海神王リヴァイアサンを復活させたのはエルフィオネである。

 ならば、だ。


「最期にケツを拭くのはお前だろ? 世界三大美女が一柱。『ハイエルフの王女』エルフィオネ・フィンネラルッ!」

『……』


 もちろんエルフィオネは、既にこの闘いで誰よりも、大変な事を成し遂げている。

 エルフィオネがいなければ、海神王を亜空間に転送し、維持することは出来ない無いだろう。


(根をあげたうちのお姫様よりも、辛いはずだ)


 コータの指示は、そこから更に無理をしろと言うもの。

 ……だが、


「やれますよね? 姫様」

『ッ!』


 騎士と姫の間に、それ以上の言葉は要らなかった。

 答は決まっている。


『《雷神よ・裁きの槍を・ユグドラに》』


 エルフィオネの固有魔術。《神装召喚ゴッド・サモン

 更に、それを別空間のコータの手に転移させる合わせ技。


 コータの前に魔方陣現れて、『雷神の槍』ゲイボルグが出現した。

 コータはアレクサンダー程あるゲイボルグを両手で掴み、その力を解放する。


「……神鎗ゲイボルグよ《覚醒しろ》」


 ゲイボルグの能力は、あらゆる事象を貫く力。

 ……と、言う建前がある。

 建前通りならば海神王の甲羅も貫ける筈。


「この一投に賭けよう」


 言って、コータは《ゲイボルグ》を全力で投擲した。

 核の位置はもう知っている。


 ゲイボルグは、その能力で勝手にコータの狙った場所に突き進む。

 ……衝突。

 

 しかし、投擲されたゲイボルグは、《超硬甲羅》を数セルチはえぐったもののそれ以上進まない。


 ……ビキビキ。

 ゲイボルグにヒビが入る。


「チッ! 回復力が高いのか」


 やはり、同じ神の力を秘める者。

 そう上手くもいかなかった。

 ……作戦失敗、か?


「粉クソガァァアアア――ッ!」


 しかし、誰に言われるまでもなく、動いていたアレクサンダーが、《ファルシオン》をフルスイング。

 再生に邪魔される《ゲイボルグ》にたたき付けた。


 ミリミリミリミリミリ……ッ!


 海神王の再生力より、ゲイボルグの貫通力が僅かに上回り、ミリ単位だが、甲羅を掘り進めていく。

 ……イケる。

 が、あと一手。


 だが、一手打てる人材がいない。

 コータは投擲の反動で動けず、他の者達は状況に着いてきていない。


「後……一手。あと一手」

「ん。今度こそ私の出番、だね」

「……っ!?」

 

 むくり……


 心臓を貫かれ、確かに命を失った筈のアレスが起き上がり、そう言った。

 コータも知らない武神の神性能力。


《七転び八起き》……色々な恩恵があるスキルだが、単純な事が一つ。

 それは一日七回まで、武神は生き返る。と言うこと。


「ん……任せて。コータの為に頑張る、よ」


 ダンッ!


 アレスは言葉と衝撃波、そして、ほんのりと赤らんだ笑顔。

 だけ残して、全力で翔けた。


 全ての事象を置き去りにして、光よりも速くアレクサンダーの真上に移動。

 右足を大きく振り上げて、ファルシオンに振り下ろす。


 ダダダダァァァアアアアアアアアンンンッッ!


 コータ。

 アレクサンダー。

 アレス。


 かつて世界を救った三人の英傑の力が、一つに集結し……

 遂に、ゲイボルグの槍が、海神王の《超硬甲羅》を貫き、その奥くに護られる核をも付き壊した……


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――…………」


 海神王の断末魔。

 そして、砕ける神鎗ゲイボルグ。

 更に、亜空間が完全崩壊し、現実世界の大海原に投げ出されるコータ達。


 ……疑う余地はない。コータが絶対に倒せないと言っていた海神王を倒したのだ。

 が。


(まずい。流石に身体が動かない。……このままじゃ、海に落ちて……凍死する)


 外にいたエルフィオネ達にも、コータ達の落下を防ぐ力は残っていない。

 ……敵を倒して、自分も死ぬ。

 それが、海神王を倒した代償ならば、安いとうもの。


 闘いの終結で、気が抜けたコータの意識が、満足の中で消えていく……


「にゃ~」


 仕方ないにゃ~


 そんな風にクロが泣き、ロニエスの頭から海に飛び降りると、海面を一斉氷結。

 海の神を打倒した英雄達を受け止めた。


「……クロ、か。いつも、助けられるな」

「にゃ~おん♪」


 そして、クロは気絶するコータの頬に、ほお擦りをするのであった。

 

 《エピローグ》


 海神王を倒してから早くも三日。

 復興不可能と思われていたフィンネラル王国は、大方の予想を裏切って活気を取り戻しつつあった。


 殺し尽くされたと思われていた民達が八割方、生き残っていたのだ。

 民達の殆どが、三年前の大戦で対海神王ように造られた地下防波堤に逃げ隠れていたためであった。


 亡国の夜、国中に散らばった王国騎士や英傑達は、再起に備え、個別に敵襲から民衆守るという柔軟性を持っていた。

 それもやはり、フィンネラル王国がかつて勇者とともに最前線で闘ったという、経験が多大な影響を与えている。

 ……今更だが、武神アレス・ラクレスが一人で闘いつづけていたのもその一環。

 もし、コータ達救援部隊と再開した時、武神の一言があれば、国中で息を潜めていた猛者達が立ち上がった事だろう。

 そうなっていれば、もう少しだけ楽に戦況を進めることが出来た筈だった。

 ……が、それを、究極の脳筋戦士であるアレスに期待するのは酷と言うもの。

 

 そういう理由があり、フィンネラル王国は確実に復興されていた。

 そんな中、コータとロニエスはエルフィオネの御前に召喚されていた。


 正真正銘、フィンネラル王国女王エルフィオネ・フィンネラルとの謁見である。

 しかし、エルフィオネは、すぐに人払いを済ませると、玉座から飛び上がり、コータの胸に飛びついた。


 純白のドレスが舞い踊り、芳醇な薔薇の香が微香を刺激する。

 ……コータの好きだった香だ。


「ユグドラ……単刀直入に言います。どうか、わたくしの元に戻ってきてください」

「……」


 この三日間、いや、コータと再開してから、エルフィオネの頭にあったのはそれだけ。

 

「海神王討伐の功績で、貴方の追放処分を取下げられます。これからわたくしは、フィンネラル王国再興に取り掛かります。どうか、わたくしの隣で騎士として……何より、伴侶として支えてはくれませんか?」

「……」

「もちろん、ロニエス姫も」

「……」


 

 エルフィオネからの求婚。

 それは、コータの夢そのもの。

 男としても騎士として、これ程嬉しいことはない。


「ユグドラ……どうか、この《レッドクリスタル》を再び受け取ってください」

「……」


 ……嬉しいことは無いが。


「貰えません。私の海神王討伐の功績は、リゲル・ウォークレアに」


 コータは、エルフィオネの身体とレッドクリスタルをそっと突き放した。


「……ッ! どうして……? やはり、わたくしを恨んで――」

「違います。私はもう、姫様を恨んでなんか……今でも変わらずお慕い存じ上げております」

「それならば何故!」


 理由……


「今の私には、護るべき姫が居ますので……」

「……ッッ!」


 コータはそう言って、隣で静かに佇むロニエスの肩を触った。

 ロニエスを護る。それが、コータのすべき事……

 何より、今は亡きリゲルとの約束でもある。


「なので――」


 コータが適当に纏めようとした時。


「ばかぁぁぁあああッ!」


 ぺーっち~~ん!!


 ロニエスが思い切りコータの頬をひっぱたいた。

 それは、コータが言葉を失うほど、綺麗な平手打ち。


「お、おい。お前な――」

「あ、アナタはッ~! 馬鹿です! ばかです! 大バカです!!」


 この三日間、いや、エルフィオネと同じだけ、ロニエスもまた悩んでいた。

 もちろんそれは、これからのコータとの事。


「私、知ってるんですよ? アナタがどれだけ、エルフィオネさまをお慕いしているか! エルフィオネさまがどれだけアナタをお慕いしているかぁ……」


 ぽろぽろと、ロニエスの瞳からとどめなく涙がこぼれ落ちる。

 それを拭く事もせずに、ロニエスはコータの胸を連打した。


 ポカポカポカ……


「三年も待ち望んだ事じゃないですかぁ! それを、私なんか、ぽっと出の小娘の為に棒に振ったりしないでくださいよぉ」

「……」


 ロニエスは知ってしまった。

 見ていたから解ってしまう。

 コータとロニエスの運命と言えるまで深い繋がりを……


「今度だってぇ! 私を捨ててまで、エルフィオネさまを助けにいったじゃないですかぁ! それが、アナタの答えじゃないですかぁ! 無理してまで、私を選ばなくたって良いんですよぉ! 私はそんなの全然、うれしくなんて無いんですよ! 馬鹿! ばかぁ……」

「待て、ロニエス。少し話そう」

「嫌ぁ――ッ!」


 それでも、何かを言い繕おうとするコータの腕を弾き、ロニエスは覚悟を決めた。

 禁断の言葉を言う覚悟を。


「私……アナタなんか嫌いです」

「……ッ」

「何時も意地悪で、私を困らせて楽しむ所が嫌いです……嫌いなんです。小さいことから大きな事まで、他にももっともっと! 嫌いな所を上げればキリが無い程です」

「……」

「大体ッ! アナタは、三年前、エルフィオネさまとぉ……、していたじゃないですか! それなのに私には――ッ! 不潔! 大ッ嫌い!」


 これは、ロニエスの本心でもあった。

 だからこそ、ロニエスは隠して起きたかった。

 でも、だからこそ、コータを突き放すには、こう言うのが一番良い。


「……」


 そして、だからこそ、コータにもこの冷たく鋭い言葉が、ロニエスの本心だと言うことは伝っていた。

 ……だから、コータも本当の事を言うことにした。

 

「三年前……エルフィオネ姫に捨てられた時。俺は全てを捨てて逃げ出したんだ」

「「……?」」


 しかし、コータの話は唐突なものだった。

 前後の繋がりがまるでない。

 この状況で話す事なのかと、エルフィオネとロニエス。二人の姫は小さく首を傾げる。


「ロニエス。お前と違って、辛いから逃げ出したんだ」

「……ッ!」


 それはかつて、ロニエスが自殺しようしとしていたとき、コータがかけた言葉。


『辛いから逃げるのか?』


 妙に重みのあったあの言葉は、実のところ、過去の自分に言いたかった言葉だったのだ。


「エルフィオネ姫が俺を嫌いと、気持ち悪いと、言って避けたとしても、俺は逃げちゃいけなかった。……他にいくらでも、やるべきは事はあったんだ」

「ユグドラ……ッ! それは――」

「俺は! あの時、ユグドラを捨てた。お姫様を捨てたんだ。そして……逃げ出した。そのせいで、ユグドラは本当に死んだ事になり、姫様は悲しみにくれただろう。フッ……もう騎士として失格だよな」


 コータはそのことをずっと後悔していた。

 ……後悔していた。


「俺は、過去と向き合うために、姫様に会いに来たんだ」

「「っ!!」」


 言いながら、コータがロニエスの身体を抱きしめた。

 ……しっとりと、抱いた腕に絡み付くほど柔らかい肉。


「もちろんそれは、お前と向き合うためにだ」

「……っ。だめ……ですよ。私……コータさまの事が嫌いだって」

「もう、俺は逃げない」


 ロニエスが再び離れようと暴れるが、コータはぎゅっと抱きしめて離さない。

 ……逃がさない。


「……ッ!」


 コータは、過去を受け入れ、乗り越えて、未来へと旅立つ為に……エルフィオネを救いたかった。


「エルフィオネ姫」

「ハイ……」


 コータがロニエスを抱きながら、エルフィオネを見ずに言う。


「貴女に騎士として誠実で有るために……私はもう貴女の騎士には戻れません」

「……っ」


 本当にエルフィオネの事を想うならば、エルフィオネが辛いとき側に居なければいけなかった。

 ……それが、出来なかったコータに、エルフィオネを護る資格はない。


「……今更、何を言っても言い訳か」


(俺の選択は間違いだらけだな)


「でも、エルフィオネ姫に仕えたことも、ロニエス姫に仕えたことも、その時感じた想いも、間違いだなんて言いたくない」


 だからこそ、今度こそ……誠実な道を作ってくれる。


「お前とフィンネラルで再開してから、何度か言おうと思ってたんだがな、ロニエス、お前とならもう一度、恋愛をしてみたいんだ」

「……だめぇ。それは、だめですよ。エルフィオネさまも、コータさまも、私も、幸せになんてなれませんよ」

「フッ……関係ないな。お前は俺が幸せにするんだからな」

「……っ」

「そして、俺はお前が笑っていれば、案外幸せになれるみたいだ」

「ばかぁ~っ」


 ロニエスのコータの胸を叩く力が弱くなっていく。


「三年後……お前が十六になったら、俺の嫁になれ。嫌がっても、白無垢を着せるからな。前に式の形式は俺の好みで良いって言ってたよな? ヤマト式で良いか?」

「ダメですよぉ。だって、私は、コータさまのこと、嫌いなんですよ? 私の気持ちよりエルフィオネさまの方が、純粋なんですよぉ? 酷いこと沢山言っちゃいますし、嫌なことあったら叩いちゃいます……」


 エルフィオネなら、コータの嫌いな所なんて無いだろう。

 頭に来たからといってコータを叩いたりはしないだろう。

 それは、エルフィオネに仕えていたコータが一番良く知っている。

 でも、


「それで構わないさ」

「……ぇ? いいの?」

「ああ。言いたいことを言ってくれる方が、肩の荷が降りるからな。そっちの方が長くやって行ける気がするんだ」

「……長く? そこは永遠の愛を囁く所じゃ無いんですか? ほら、エルフィオネさまには時々囁いてたのにぃ!!」


 いつの間にか、ロニエスの心は拒否をしなくなっていた。

 自然にコータに抱かれ、腕を背中に回している。


「相変わらず馬鹿だな。俺の記憶を見てるんなら、永遠なんて言葉、軽々しく使わせようとするな。それはもう、懲りてるんだ」

「でもぉッ! 狡いよぉ~! 言ってくれないと嫌いです」

「……おい」


 未来がどうなるかなんてわからない。

 三年前と今で、コータの心が変わったように、三年後、ロニエスの心も変わっているかも知れない。


「私は……ずーっとコータさまと一緒に居たいって、ずーっと。言っていましたよぉ?」

「……」

「ふふふ、先に言いますね? 選ぶのはコータさまですよ?」

「……」


(この野郎。伊達に五年成長していないな。主導権を奪われた……)


「でもでも~! コータさまが自信ないなら、私もちょぉーっと考えないといけないです」

「……」

「ああ……どうしようかな~どうしようかな♪ コータさま意地悪で、浮気性だから、もっと紳士なお方にしようかなぁ~♪ そういえば、ヒーラレルラの王宮で優しい許婚さまがいた気がするな~♪」

「……」


 因みに、ロニエスに許婚などいない。

 居たとしても、ロニエスを前にして理性を保てる男は居なかった。

 それを知らないコータが、ロニエスにしか分からない程度に、抱きしめる力を強めたのを感じた。

 それはまるで、『お前は俺のものだ』と言われているかのようであった。


「一つだけ、お約束してください。私を好きな間は、もう、絶対に私を置いて行かないと……独りは嫌なんです」

「……ああ。もう一生離さない」

「……え? 今ぁ!?」

「そういう努力を互いにしような」

「ッ! 意気地無し!!」


 ロニエスの手がうなったが、途中で勢いを無くしコータの頬を、優しく触った。

 今は仮面をしていない。


「美しいお顔ですよ?」

「……そうか、お前もだ」

「ふふ、私、ウエディングドレスも着てみたいです」

「着せてやる」

「獣の様に愛してほしいです」

「……考えておく」

「ふふ、ぜぇ~んぶ、コータさまとしたいです」

「好きにしろ」


 ふふふと笑い、ロニエスはその場の全てを悩殺しながら、最後にこう言った。


「ふつつか者ですが末永く宜しくお願い致します♪」


 それが、コータが選んだお姫様との結末である。


《完 第二章》

 二章終わり。一旦、完結と言うことで、恒例にするかも知れない後書き芸。


『三章を読みたかったら感想を、早く読みたかったら評価を、絶対読みたかったらレビューを、気長に待つならブクマを、置いていってくだされ』(感想じゃんじゃんこいっ! それで続編書くか決めるので)


――とりあえず先に、一番大事な事だけ書いておきました。

 心にゆとりがあれば、この先も、もう少しだけお付き合いを。


 さて、一章後書きとは別の角度から、色々書いて見ます。

 底辺作家の叫びを聞いていって下さいまし。


 では、一つ目。

【完結して暫く経っていても、感想・ブクマ・評価があると嬉しい件】


 底辺は、と言うか僕は、普段から感想に飢えています。

 そんな中で、完結した作品に感想を置いていってもらえると、続編を作ろうかなと思ってしまいます。

 ええ、僕はちょろいです。


 評価やブクマも、一人二人じゃ、ランキングには打ち上がりませんが、確かに加点され蓄積されるので、意味はあります。


 と言うか、なろうって完結したら終わり。みたいなところあるけれど、小説って、完結してからが始まりですからね。

 続編制作とかも、完結してからの売上(ポイント)で決まりますからね。

 最近はぶん投げるらしいですけど……

 まあ、これは、僕の狭い知識と見解なんで、気にしないで良いです。

 

 次、二つ目。


【底辺作品にこそレビューを書いてほしい件】


 前に活動報告でも書きましたが、上位作品にレビューとか……ずるい。

 あんなん、宣伝しなくても勝手に有名なんだからさ……ずるい。

 ……ただの愚痴になった!?


 次、二つ目。


【次に書く予定の新作も読んでほしい】


 現在、絶賛製作中の新作で、また微妙にテンプレから外れた、『最弱の騎士がハーレムを作ろうとする』話を、もう少ししたら、投稿するので読んでほしい。

 ロリがヒロインじゃないけど……


 ハーレムを割と真面目に作っていくお話です。

 この話の主人公は、完璧だったコータに比べて、『ハーレムを作る!』とか言うクズですが、色々、あるんです。


 ただイチャイチャハーレムするんじゃなくて、イチャイチャハーレムしようと頑張る話です。

 コメディー調にしたけど、やっぱり、シリアスチックかも。もはや作風になってきた。


 そういえば、主人公の過去って最近は、要らないみたいですね。

 最近、僕の話はキャラの過去設定を割と細かくやってるんだけど……


 と、そんな感じの話を近月公開予定なんですので、『作者お気に入り』して待っていて下され。

 そうすれば、活動報告をリアルタイムで読めますので、

 

 因みに、作者お気に入りは、オジsunのマイページから出来ます。

 マイページへの行き方は、上の方にある作者名をクリックか、下の方にある『作者マイページへ』をクリックですので。


【最期に言いたいこと】


 完結した後にブクマが増えると、本当に幸せな気分になります。

 感想・評価も同上。


 さて、ここまで付き合ってくれた方は、是非に作者お気に入り登録して、活動報告も付き合ってください。

 そっちには、二章の裏話や自己反省、今後の予定とかを書きますんで。


 そんなこんなで、長くなりましたが、これにて『黒猫にゃん』二章終わりです。

 後書きの合言葉は、感想・ブクマ・評価・レビュー! 作者お気に入り登録(非公開オッケー)です。

 


 

 追伸。マイページから前に完結させた話とかもありますぜ。暇潰しにどうぞ。ノンテンプレに飢えてて、オジsunの作風が嫌いじゃ無ければ、面白い筈です。

    ただ、作家は常に成長する生き物なので……ある程度、お察しを、

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