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アルテリオンの名において  作者: フリージア
8/40

相性というものがありまして3

 三人のもとに戻った雪吹は、不思議な感覚に陥った。

 それもそのはず。仲の悪かった桜花と灯真が楽しそうに会話をしていて、桐島は壁に向かって頭を下げているのだから。

 私がいない間に何があったの。

 雪吹はそう思いながら、とりあえず桐島に声をかけた。

「桐島、壁に挨拶してないで説明してほしいんだけど。私の居ない30分に何があったの。」

 その声に喋ることに夢中になっていた桜花が答える。

「なんか悩んでいるみたいだからそっとしておこう。そんなことより宿なんだけど…。」

 言いにくそうに尋ねる桜花に、雪吹はなんてことないという口調で言った。

「あぁ、泊めてくれるって。民家だけど。」

 その言葉に、桜花の表情は明るくなった。

 早く行こうと桜花に急かされて、雪吹は動こうとしない桐島の腕を引いた。

 桐島は雪吹にだけ聞こえるように呟いた。

「世の中は理不尽だね。」

 雪吹は何のことかわからなかったが、なんとなく桜花が何か言ったのだと思った。

 3人は雪吹に連れられるまま、村の中心に入る。市場のように店が並ぶ通りを抜けると、小さな屋敷に着いた。

 老夫婦に出迎えられ、案内されたのは2階にある部屋だった。

 老婆が襖を開けると、イグサの香りがした。替えたばかりなのか、綺麗な畳が敷かれている。10畳程あるその部屋には、長方形のテーブルと布団が2つ置いてあった。

「疲れているでしょう、お食事ができるまでゆっくりしていてね。」。

 4人はそれぞれの言葉で礼を言うと、部屋を出ていく老婆の後ろ姿を見送った。

「物腰が柔らかい女性ですね。ここなら安心していられます。」

 桜花は嬉しそうに言いながら、座布団の上に座る。

「そうだな。いい人そうで良かった。」

 灯真はそう言いながら障子を開け、窓際に腰を下ろした。革のコートの内側から黒い箱とライターを取り出すと、箱から出した細い棒に火をつけて口に咥えた。その様子を見た雪吹は灯真の隣に座って言う。

「あんた煙草吸うんだ。匂い残るから食事の前は止めてよね。」

 灯真は数秒考えてから、指で煙草の火を消して窓の外に投げた。

「あんたけっこうワイルドっていうか、なんていうか、意外と雑なんだ。」

 雪吹はそう言いながら、灯真の指先を見る。彼がしている黒い革の手袋は、5本の指先が出るように穴が開いている。

 良い武器にできるかも。

 雪吹がそう思った、ちょうどその時だった。

 襖がノックされる。

 はい。と桜花が返事をする。

「お食事をお持ちしました。」

 老婆と共に食事を持ってきたのは、可愛らしい風貌の女性だった。老夫婦のお孫さんで、隣町の祭典に行くため、ここに泊まっているのだという。

 2人は手際よく食事を並べると、気を使ってくれたようで長居せずに部屋を後にした。

「和食ね、美味しそう。」

 桜花は並べられた食事を見て嬉しそうにする。お米に味噌汁、焼き魚に漬物。いたって普通の和食なのだが、この世界に来て初めての食事ということもあり、とても美味しそうに感じられた。



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