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アルテリオンの名において  作者: フリージア
7/40

相性というものがありまして2

「遅い、雪吹(ふぶき)ちゃんは何してるの。」

 桜花(おうか)は不機嫌そうにそう言うと、地面に向かって飴玉を投げつける。

 桐島(きりしま)は腕時計で時間を確認し、桜花をなだめる。

「まだ10分しか経ってないよ。もう少し待とう。」

 その腕時計を見て、桜花の目が輝いた。

「桐島さんそれ、その腕時計ブランドものですよね。私とお揃いです。」

 そう言って、桜花は白い服の袖を上げて、時計を出した。

 真っ白な革のベルトにシルバーの金具。時計の3、6、9、12を示す場所には小さなダイヤが埋められている。

 桐島は驚いて、一瞬呼吸を忘れた。

「育ちが良さそうだとは思ってたけど、桜花ちゃんって、どこかのお嬢様?」

 そういう桐島の様子を見て、灯真(とうま)が不思議そうに言う。

「それそんなにすごいのか。」

 桐島は戸惑いながら言う。

「この時計は僕の憧れのブランドで、働き始めてからやっと買えたもので、だいたい20万はしたかな。これでも、このブランドの中では安い方なんだけどね。」

「まじかよ…。」

 灯真は動揺した。しかしこれで今までの桜花の態度に納得がいった。

「こんなお嬢様がいきなりこんな場所に来させられたら、そりゃこうなるよな。桜花、悪かった、お前が苛立つのは当然だ。今度から少しは優しくする、できるだけな。」

 その言葉に桜花は驚いて、それでも嬉しそうに言う。

「私も苛々しないように努めます。」

 桜花と灯真の雰囲気が良くなって、桐島は安堵する。

 もう二人の仲を取り持たなくて良くなると思うと、気が楽になった。

「他にも時計持ってんのか?」

 灯真はなんとなく聞いてみた。桜花は時計が好きなのか、嬉しそうに答えた。

「もちろんです。ピンクとか赤とか黒とか、服に合わせられるようにいろいろ持っています。でも、これが一番お気に入りです。」

 その答えに桐島は頭を押さえる。自分が頑張って貯めて買うものを、年下の女の子がいくつも持っているということがショックだった。

 もう何があってもフォローしたくないな。

 なんて大人気ないことを思った桐島にとって、桜花は止めを刺すような言葉を放った。

「まぁ、これが一番安いんですけど、やっぱり値段より見た目ですよね!」


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