10 来援
ちとネタバレなサブタイトルですが、
お読みいただいてお確かめください(^-^;
「弓隊、下がって! 投石を……ううん、鑓を!」
アイオリアが迷う。
そのいっしゅんの間にも、戦況はいっきにリュギアスに不利に傾く。
「ダメだ、もう混戦になっている! 四、五人をひとまとめに、剣で戦う部隊を作って……」
しかし衝太郎の指示も間に合わない。
兵の足りないリュギアス側は、弓や投石、鑓といった各部隊も、すでに二割から三割の損害を受けていて、想定した攻撃力を出せていない。すると損害がさらにかさみ、攻撃力の減衰に繋がるという悪循環だ。
(予備の兵はもう使い尽くした)
城壁を守っている部隊からも兵を抽出している。
市門を開けて敵を誘い込む戦術を始めてから二時間。五度にわたるフィレンツァ軍の攻撃を退けたが、
「もう、限界よ! 衝太郎!」
アイオリアが叫ぶ。そのとおりだった。
だが、
「また……来る!」
六度目の攻撃が来る。市門の幅いっぱいに、二百名以上の敵兵が盾を前に押し立て、勢いよく突進して来た。
「投石! それから鑓だ!」
続けて衝太郎が指示する。だが、
「もう石がないわ!」
前回の敵を退けたあとの、石を回収するのが間に合わなかった。
舗装の石畳や、壁のレンガも剥がして投げつけているのだが、一度投げるとレンガは割れ、威力が半減する。
それでも、ある分だけでも投げつけるが、
「あいつら、上にも盾を!」
密集した敵兵は、右腕にも小さな盾をつけていた。それをいっせいに頭上にかざし、投石をふせいだのだ。
「鑓兵を……きゃぁっ!」
左右から鑓隊を繰り出そうとしたアイオリア。しかしその命令が途中から悲鳴に変わったのは、敵が分裂して突きかかってきたからだ。
投石が終わったと見た敵は、前と左右の三つの集団に分かれると、垂直に立てていた鑓をかまえ、逆に突進して来る。
これに対する、リュギアスの鑓隊。
隊列を組んで槍衾を作り、防ぐのがセオリーなのだが、もう数が減っているうえ、何度もの戦いで疲弊し、鑓をまともにかまえることもできない。
そのうえ、攻撃いっぽうで防戦の隊形ができていなかった。
「鑓隊が崩れるぞ!」
一線を形成している鑓隊が崩れれば、もうまとまった正規兵はなく、市民兵がバラバラに剣で戦うくらいしかない。
こうなると、市内に引き込んだ作戦が裏目になる。
そのうえ、
「南の城門が突破されました!」
さらに絶望的な報せが、伝令からもたらされた。
「くそ! こっちへ攻撃を集中していたわけではなかったのか!」
歯噛みする衝太郎。
いずれは来るとわかっていたが、それまで市門を開いて誘い込み、敵を撃退しつづければまだ勝機はあると信じていた。
それが、
(同時に崩れるとは、な!)
「どうするの、衝太郎!」
とアイオリア。その表情はもう助けを求めるせっぱ詰まったものだ。
「市門を閉ざせ! いったんこっちを閉めて、南の城壁に!」
しかし衝太郎の指示に門の閉めようとするも、なだれ込んで来る敵の後続に押されて適わない。
衝太郎とアイオリアの眼前でも、守備陣が崩壊しつつあるのがはっきりと目に見えて来た。
すでに陣形、隊形はなく、逃げ散る兵も出始める。
「衝太郎、もう!」
「うん。館へ下がる。館へこもって、なんとか」
数日、いや、一日、もたせられるか。
東の砦の部隊が到着して、それで挽回できるのか。
(できる……いや、やらなければ、アイオリアをオレが守るんだろう?!)
自問しながら、アイオリアの手を引いて館への道を急ごうとした、ときだ。
「きゃぁあああっ!」
アイオリアの悲鳴。
不意に現れた敵兵が剣で斬りかかって来た。味方の護衛兵はいつのまにか離れてしまっている。そこを衝かれた。
「アイオリア!」
とっさに叫ぶ。だが剣も鑓も持たない衝太郎にできるのは、
(逃げる……いや!)
「逃げるか! とりゃぁああああ!」
体当たり! と、そのとき。
「うぐっ!」
うめいて、敵兵が崩れた。
いっしゅん、なにが起きたのかわからなかった。
護衛の兵が戻って来たのか、と思う。回りを見る。すると、
「なんだ? 押してるぞ。こっちの兵が……!」
違う。味方が押しているというより、敵兵が潮が引くように後退していく。いやもっと、算を乱して逃げ帰っていくのに近い。
「どうなったの? 援軍が、東の砦の兵が来たのね!」
アイオリアが歓喜の声を上げる。
「いや、違う。違うぞ、あの旗は……!」
開け放たれた市門の向こうに見える。
黒に赤の三角旗。
つけられた黄色いリボンが何本もなびいている。
「あれは……」
「ドルギアの旗? まさか……」
「ケルスティンが?」
ようやく援軍が!
ヨカッタ(´▽`)




