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異世界で料理人を命じられたオレが女王陛下の軍師に成り上がる!  作者: すずきあきら
第五章 ベジタリアンの濃厚メニューと、新たな敵
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9 接近戦

戦いの備えのないリュギアス軍はどんどん押し込まれていきます。

跳ね返せるのか、衝太郎。

 衝太郎の予想どおり、戦いは午前九時には開始された。

 敵のいっせい攻撃によって。


「西の城壁が危ないって、連絡が! 衝太郎!」


 アイオリアの言葉に、衝太郎がすかさずその方向へと駆け寄る。ベランダから見下ろすと、まだ未成の城壁にとりついた敵兵が、集団で乗り越えようとしている。味方の兵はけんめいに食い止めるが、劣勢は免れない。


「予備の部隊、百名を送るんだ! なんとかもたせろ!」


 衝太郎が指示する。


 けっきょくこの館のベランダが、もっとも街で高い位置にあり、四方が見渡せることから、衝太郎とアイオリアはこの場所に陣取って、次々と指示を飛ばしていた。連絡係の兵がひっきりなしに出入りする。


「どうなの、衝太郎」


 アイオリアの不安そうな表情。


「正直、あと数時間てところだな、このままじゃ」

「数時間? じゃあ、どうなるの……」


 負ける、という言葉は、返せずに呑み込んだ。衝太郎はアイオリアから視線を外すと、必死に考える。


(くそ! どうあっても兵が足りねえ! 東の砦から援軍が着くのが夜。戦えるのは明日の朝か。なんとか夜襲で……いや、やったこともないのに、できるわけねえ! 訓練もしてないんだぞ)


 考えるだに、絶望的な状況。

 しかしアイオリアに伝染してはまずい、と衝太郎は、


「ところで、あの手紙のハイドラって敵の指揮官のことは、知ってるのか」


 話を変えた。


 戦いのまえに届いた手紙。最後通牒。

 そこには「ガンティオキア帝国 フィレンツァ公領 騎士姫 ハイドラ・オルナティア」の名で、ただちに街を明け渡すこと。アイオリアは投降すること、などが書かれていた。

 履行までの猶予はたったの一時間。

 もちろん応じるわけはなく、すでにもう数時間が過ぎている。


「ううん。聞いたことがあるだけ。ドルギアの向こうの国で、商人どうしの交易はあるけれど、直接会ったことも、手紙を交わしたことなんかもないわ」


 アイオリアが答える。


「やっぱり、ドルギアとの戦いを横から見ていて、つけ入るすきを窺ってたんだな」


 そして一気呵成に押し寄せた。

 それも湖を押し渡って来るという奇襲戦法だ。


(このままじゃ必ず押し込まれる。城門を一か所突破されたら街はもうおしまいだ。あとはこの館にこもって戦うしかない、か)


 頼みの東の砦の戦力が到着するまで耐えられるか。

 時間との戦い。


「いや」


 衝太郎はベランダから部屋の中へ戻る。


「どうしたの? なにか」

「城門、市の正門を開けるんだ」

「ええっ!? そんなことをしたら」


 驚くアイオリア。

 あっという間に敵兵が街にあふれ、負けは必至の自殺行為だ。


「このままじゃ、いずれ城壁は突破される。それも複数でだ。そうなったら収拾のつかないことになる。それよりも……!」



「なんと。リュギアの市門が開いた? おかしいでありんすねえ」


 報告を受けたハイドラがいぶかる。

 大天幕を出たあとも、湖の岸近くの水の中に腰から下を浸けている。左右に従者の少女騎士が鑓をもって控える。

 周りには天幕が張り巡らされ、横や後方には本陣警備の騎兵や鑓兵が侍っていた。


「降伏の準備かもしれません」

「リュギアスの奴ら、腰抜けでありますれば」


 少女従者たちが口々に言う。

 しかしハイドラはまだ不審そうに、


「なにやら企んでありんすか。なれど……飛び込んでみなければわからぬの。よい。兵を進ませよ」


 ぐーっ、と身を伸ばす。五メートル以上も伸びた胴体の上から街を見下ろし、


「街へ突入でありんす!」


 下令した。



「来るぞ!」


 衝太郎が言うのと同時に、敵兵が固まって突進して来た。

 市門を開けても、敵はすぐには入って来なかった。警戒するように遠巻きにした。

 だがハイドラの命令が伝わったいま、我先にと突っ込んで来る。


「よく引き付けて……放て!」


 アイオリアの声が響き渡る。

 衝太郎もアイオリアも、門の近くに降りて来ている。間近で指示するためだ。


 市門の内部、その正面。構築された障害物の陰に隠れていた弓兵が半身をさらすと、いっせいに矢を放った。

 距離は約五十メートル。直接に狙って当たる距離だ。

 思ったとおり、


「うぅぅうあ!」

「ぐぁ!」


 バタバタと敵兵が倒れる。しかし十人倒れても、その屍を超えてすぐ二十人が迫って来る。


「かかれえ!」


 こんどは衝太郎が声を上げる。


「わぁぁぉぉぉおおお!」


 掛け声とともに、左右から鑓兵が進み出る。もちろん、入って来た敵兵を突き崩すためだ。

 案の定、二度、三度と鑓襖に突かれると、敵兵は倒れ、ひるみ、勢いを失って、とうとう後退した。

 下がる敵兵のために、市門は閉じていない。

 全滅させるのではなく時間を稼ぎ、敵を疲弊させるのが目的だからだ。


「よぉーし! 持ち場に戻れ! 矢を補充するんだ! 傷を受けた者は代われ!」


 と衝太郎。

 敵の最初の攻撃は撃退した。

 しかし、衝太郎の心配は的中した。

 三十分もしないうちに始まった敵の第二次攻撃は、最前列に盾を並べ、その間から鑓を突き出して整然と進んできた。

 これには弓も跳ね返されてしまう。

 だが衝太郎には策があった。


「いいこと? 始め!」


 アイオリアの掛け声で始まったのは、


「わああああっ!」


 投石だった。

 敵の正面、それに左右からの投石。距離はないから、その分大きな石を、山なりに投げつける。

 当然、石は敵の密集した中へ、上から落ちる。


「ぎゃぁ!」

「うご!」


 雨のように降り注ぐ石に、兜をかぶった兵も倒される。一般兵は鉄ではなく革の被り物だから、被害はより大きい。

 門の上からも大きな石を落とす。

 敵の隊列が乱れたところへ、


「いまだ! かかれ!」


 ふたたび鑓隊の突撃。

 さんざんに突き崩され、またも後退する敵兵。


「よ、よし。まだいける。いけるぞ!」


 周りを鼓舞するように、衝太郎が大きく声を上げる。


「おおおおー!」


 鑓を振り上げ、兵も応える。

 あえて市門を開け放ち、敵を誘いこんで四方から叩く。日本の城にある、升型虎口の発想だ。


(けど、どこまでもつか……)


このままではもたない

けど援軍も期待できない。

となれば……(;'∀')

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