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異世界で料理人を命じられたオレが女王陛下の軍師に成り上がる!  作者: すずきあきら
第四章 東の砦の決戦
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3 リュギアス軍の陣

リュギアス軍の陣立てです。

言葉で説明するのはなかなか難しいですね(^-^;


 ひと晩をかかって行軍してきたリュギアス軍は午前十時、戦場となる砦東側の平原に到着した。


 そのまえの夜明け近く、砦まで十キロほどの地点でリュギアス軍は四時間の大休止を取り、兵たちに睡眠と食事を取らせている。

 そうして時間を調整したうえで、戦場へ到着したことになる。


 戦場では、なだらかな丘陵の頂上にアイオリアの本陣をかまえる。


「へえー! よく見渡せていいわね!」

「いや、基本だろ。ふつう……」


 アイオリアに言わせれば、いままで戦場は慣習で選ばれていたらしい。

 つまり東の砦をめぐる戦いではこのあたり、と両軍がこれまでの慣習をもとに適当な場所に向かい、布陣する。


 戦端が切られる時間も決まっていて、ほぼ午後一。

 これは兵に昼食を取らせたあとで戦うからだ。

 戦いはたいてい一、二時間程度で終了し、どんなに遅くとも日没後は両者とも兵を引き上げる。

 翌日は自動的に休戦となり、死体の収容や捕虜の交換が行われる。


「はぁ~、ほんと、スポーツだな。夜襲なんて金輪際ないんだろうな」

「夜襲? 夜に戦うなんて野蛮人のすることよ」

「はいはい。とりあえずはこの世界の慣習に従うよ。てか、利用されてもらう。けど、そいつに囚われるのはナシだ。スポーツみたいに戦うことはできても、戦いはスポーツじゃないからな」

「なによそれ。卑怯な真似はアイオリアが許さないわよ! ……でもまあ、今回は衝太郎、おまえに賭けてみるわ!」


 そうして陣立てもすべて衝太郎に任された。

 衝太郎が取った布陣は……。


「まず戦列を布く。これまでみたいに、ごちゃっとひとかたまりになって勝手に戦うのはナシだ。すべてがオレ……じゃない、アイオリアの命令で動くものとする」

「これが、戦列?」


 アイオリアが手元の地図を見つめる。いまからこの地図のとおりに部隊が移動することになっていた。


 戦列とは、部隊が一本の線のように横に長く整列することだ。

 必ずしも横長である必要はないのだが、敵に背後へ回られる危険を少なくするためには、部隊を横へ伸ばす必要がある。


「そうだ。歩兵の鑓部隊を基本にする。ほんとうは鑓の長さも統一したかったんだが、今回は時間がなかった。だから最前列と二列目だけ、三メートルの鑓でそろえてある」

「三メートルの鑓は、館の武器庫でもいちばん長い鑓よ」

「もっと長くてもいい。古代マケドニア軍はサリッサっていう五メートルの鑓を持ってたし、織田信長は六・八メートルの鑓を足軽に持たせたんだ」

「負け、どにあ? おだの、ぶなが?」

「ごめん、聞き流してくれ。で、戦列の長さは全部で一キロほどになるだろう」

「一キロも! そんなの、命令が届かないわよ」

「伝令を出せばいい。つねに伝令の騎兵を何人も側に置いておくんだ。一部は旗で合図できるよう、かんたんな事柄だけを決めてある」


 いまは、旗の色によって突撃、後退、その場にとどまれ、くらいしか指示できないが、いずれはもっと高度な内容も伝達できるようにしたいと衝太郎は思っている。


「鑓隊のまえに弓隊を置く。騎馬隊は本陣直属のがひとつ。あとひとつを右翼に置いて、どちらも遊撃機動部隊にする。ようは、敵のかく乱だ。隙を見つけたら突撃する。そのあたりの差配は部隊長に任せる」

「なぜ騎馬だけは部隊長任せなの?」

「スピードが速いからな。いちいち伝令なんて出しても追いつかない。旗で合図ってのも現実的じゃない。ある程度は任せるほかないよ」


 アイオリアは納得するが、もっとも理解できない部分もあった。それは、


「どうしてこっちの本体だけが、こんなに多くてほかは少ないのよ。これじゃ、敵が攻めて来たら右のほうはどうなっちゃうの?」


 アイオリアの言うとおりだった。


 最右翼の部隊は五百人。

 鑓隊が二十五人で一列を形成する。同じ列がその後ろに十九段、つまり全部で二十段あった。


 この右翼部隊が異様に分厚いのに対して、他の鑓隊は同じ横二十五人で一列でも後方は薄く、全部で三段しかない。

 二十段と三段。ざっと七倍も違う。

 つまり二十段・五百人の鑓隊を左に、そこからは三段・七十五人の鑓隊が八つ、横へと並ぶ戦列だ。


「これがこの陣形の肝さ。もう敵に情報は行っていると思うが、とにかく部隊を多く見せたい。それに、ケルスティンの軍は騎馬が主体だから、かんたんに後方へ回り込まれないよう幅がいる。部隊を横へ伸ばさなくちゃならなかった」

「なら、均等に伸ばせばいいのじゃなくて」

「それじゃ多少弱さはカバーできるが、強くもない戦列が均等に一キロ伸びるだけになる。弱いところができても、確実に強い部隊を作らないとな。勝てない」

「でも弱いところを衝かれたら」

「そんときゃ、負ける」

「なによ、負けないって……!」

「ああ。負けないさ。こっちの思いどおりにはこべばな。いや、そうさせる!」


(資料本に書いてあった、古代ギリシアの戦いをアレンジしたんだ。うまくいけよ……いや、うまくやるさ!)


 ふたりが会話する間に部隊は移動し、じょじょに陣形が完成していった。

 一時間もするころには、すっかり布陣が完了する。

 めのまえに広がる、整然とした戦列のパノラマ。


「わぁ! これが、あたしの軍なのね! リュギアス……!」


 目を見張るアイオリア。

 布陣を終えた部隊の向こうにはまた平原が広がり、その向こうに林が、そしてさらに向こうには東の砦の物見櫓が見える。

 そろそろ陽が中天にさしかかろうというころ、


「来たぞ!」


 ドルギア軍が姿を現した。

 林に隠れるように進んで来たのだろう。平原へ出ると、横へ展開する。ほぼリュギアス軍と同じ長さに戦列を布いた。


「あれは……ケルスティン!」


 早くもアイオリアが見つける。

 中央に、高々と旗を掲げた本陣。その中に、陽を弾く銀色の甲冑をまとったケルスティンの姿がある。


「いたか。陣形も、思ったとおりだ!」


 衝太郎も見つめる。

 ここからだと人ひとりは豆粒よりも小さい。距離は三キロ近くも離れている。

 しかし衝太郎には、ケルスティンもまたまっすぐにこちらを、アイオリアと衝太郎を見つめている、そう確信していた。


次回はついに両軍が激突! のはず・・

お楽しみに・・よろしくです。

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