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再び集合です

 ところでウキ、披露パーティって百人くらいだって言っていたけど、それって着席? それとも立食?

「今回は着席だ。テーブルごとに会話を進めてほしいという姉さんとルファーの意思もあるらしいからな」

 そっかあ。

 ねえイスムさん、ザゼルさん、着席のパーティーはどんな順番で料理を出すの?

「知らん」

 冷たいなイスムのおっさん。

「お祝いの席ならばこうでしょうね」

 頼りになるなザゼルのおっさん。

 

『アペリティフ』

『オードブル』

『サラダ』

『スープ』

『フィッシュ』

『ミート』

『デザート』


 へえ、要は


『食前酒』

『前菜』

『野菜』

『汁物』

『魚料理』

『肉料理』

『水果』


 ってことだな。

「そんな決まりごとがあったのか!」

 何でいまさら驚いているんだイスムのおっさんたちよ。


「せっかくですから、それぞれを手分けして得意料理を提供するのも面白いですね」

 ザゼルのおっさん、楽しそうだな。

 それじゃ分担を決めようよ。そしたらネタも事前に調整できるからさ。味が重なったりしたら最悪だものね。

「それではこんなところでいかがですか?」

 仕切るなあ。ザゼルさん。

 

『アぺリティフ』 イスム

『オードブル』 ユーキ

『サラダ』 ザゼル

『スープ』 ユーキ

『フィッシュ』 ザゼル

『ミート』 イスム

『デザート』 ユーキ


「で、せっかくですから、こいつはサキさん達に提供しましょうよ」

 ザゼルさんが指さしているのは『蛇姫馬メデューサホース』を解体したもの。

「そうじゃな。肉はこれで百人前くらいはどうにでもなるじゃろ」

 イスムのおっさんも上機嫌だ。

「それでは、それぞれ宿題にして、明日のお昼にでもここで再度打ち合わせしましょうね」

 最後までザゼルのおっさんに仕切られたぜ。

 それじゃ、今日は帰るか。

 

 街はとっぷりと日が暮れている。

「なあユーキ」

 何だいウキ。

「明日の晩は父上、母上と姉さんを三人だけにしてやりたいんだ」

 そうか。そうだよな。嫁入り前日だもんな。

「でな……」

 ん?

 ……。

「なんでもない。明日の打ち合わせには俺も連れて行ってくれ」

 うん。


 帰り道は月がほのかに街道を照らしている。

 ウキがオレの手を引いてくれている。

 

「月がきれいだな」


 そうだね。ウキ。


 右手が暖かいや。

 


 

 ということで今日も元気に朝が来たぜ!

 朝ごはんだ朝ごはん!

 よっしゃ! 久しぶりにバッターワームのホットケーキ尽くしで行くか待っていろよサキウキ!

 そしてオレ最高!

 いくぜリート、リル、フル!

 

 あれ?

 ……。

 あー。

 

 やっちまった……。

 ここはサキとウキのご両親がお住まいでしたね。

 どうしよう、この勢いで焼いちゃったホットケーキ……。


 そしたら部屋の扉が開いたんだ。

「ユーキ、腹減った!」

 あ、おはようウキ。

 ねえ、朝食を勢いでこしらえちゃったんだけどさ、確かケータリングで用意されているんだよね?

「おう!」

 そっか。仕方がねえ、冷やしてスポンジベースにするか。

「ユーキ、何やってんだ?」

 ホットケーキを片付けているんだよ。

「アホか。それもって早く食堂に来い! マーマレードとジャムも忘れるなよ!」

 え?

 

「ケータリングの朝食はいつも砕いた棒パンにミルクをかけたものだけでな。正直辟易しておったんじゃ」

 そうなのかお父様?

「サキが言うには、ユーキさんはとてもフルーティなトッピングをご用意されるそうですね。ご面倒でなければわたくしたちにも試させていただけませんか?」

 上品に要求してくるなお母様、さすがだ。


「父上、母上、これを食って驚け」


 だからなんでお前が威張ってんだよウキ!

 仕方ねえなあ。

「バッターワームホットケーキに二種類のジャムとマーマレード添えです。ご賞味くださいませ」

 畜生! 思いつく限りの最大限の敬語を使っちまったよ恥ずかしいぞ死ぬ!

「ユーキ、ホイップクリームとカッテージチーズもありますよね。デカメロンの大玉果汁もありませんでしたか?」

 畜生優雅だなサキ姉さま。はいよ、すぐ用意してくるよ! 

 もう、あの優雅さには勝てねえよ!


 ……。

 

「ユーキ、なんでご機嫌斜めなのかい?」

 わかんねえかなサキ姉さま。オレは美味いもんをこしらえる道具じゃねえぞ!

 なんでやさしく微笑むんだよ姉さま!

「ウキに聞いたよ。今日の午後から、あたしとルファーのためにいろいろ考えてくれるんだってね。ありがとうね」

 ……。

「ほらユーキ、お前にはこれが似合うと思うよ」

 いつの間にかサキ姉さまに連れていかれた市街のブティックで、オレはサキ姉さまに萌緑のワンピースドレスを胸にあてがわれたんだ。

「お前は何色が好きだい? ユーキ」

 そう優しく声をかけてくれるサキ姉さまの水色の瞳が美しくて美しくてさ。

 だからオレは胸を張って答えたんだ。

「今はサキが好きな色がオレも好きだ! ざまあみろ!」

 ってさ。


「私の大好きなのを父様と母様にも食べさせてみたいからね」というサキのリクエストに、サキが大好きなツナマヨトルティーヤとエクスタシトロンのモヒートを昼前に食堂に用意してから、オレはウキと一緒にご両親の館を出たんだ。屋台とリート、リル、フルと一緒にね。


「ユーキ、このままおっさんたちの食堂に行くのか?」

 そのつもりだけどさ。


 街角は騒々しい。

 あちらこちらから誰かの声が響き渡る。

 金髪族こそ至高であると誰かが叫んでいる。

 それに誰かが反論している。

 そしてそこに喧騒が重なる。

 揉め事が始まる。

 憎しみ合いの雑言を互いに重ねて。

 

 怖いな……。

 

「ユーキ、大丈夫か?」

 うん、何でもないよウキ。

 って?

 

「よう! ウキ、それにユーキちゃん! お前らもゴッドインパルスに来たんだな!」

「死ねよウキ! ユーキちゃん愛しているよ!」

「お、ウキとユーキか! 酒飲もうぜ」

「てめえウキ、まだ勝負は終わっていねえぞ!」

「ねえユーキちゃん、もしかして俺のちんこ見た?」


 目の前で大騒ぎしているのは、黒髪族の『ボンテ』達五人だったんだ。


「お前らここで何している」

 いきなりけんか腰かよウキ。

「任務を明日果たせるもんでね」

 肩の力が抜けているなボンテさん。

 

 ボンテたち五人は、無事ゴッドインパルスの金髪族領主に謁見がかなったんだって。

 ただ、出てきたのは領主本人ではなくて、その名代だったらしいのだけどさ。

 で、名代は、「明日この場に五人で訪れよ、悪いようにはしないからな」と回答したらしい。

「ね、信ずるものは救われるだよねユーキちゃん!」

 すまん、相変わらずオレは兄ちゃんたちの名前がわからねえ。

 どうするウキ?


「楽しそうなのはわかった。なら俺にちょっと付き合え」

 え? なんでいきなり喧嘩売っているのウキ!

「ほう、改めて勝負か?」

 何やる気になっているのボンテさんよ!

「それでもいいがな。まずは祝いの方だ。ユーキ、五人も連れて行こうか」

 あ、そうか! そうだね。

 ウキはこの五人と仲良しさんだものね。

「余計なことは言わなくていい」


 うふ、この照れ屋さん! 

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