影牢の呪縛
こんな意味の分からない話を読み続けるなんて、なかなかできることじゃないよ。
――???
文「うわぁ……まいったなぁこりゃあ」
文「まさかもう気づかれてるなんて」
洋「どういうことだってばよ」
文「うひゃあ!びっくりしたぁ!いつからそこにいた!」
洋「ついさっき来たとこだ」
文「そう」
洋「で?誰に何を気づかれたって?」
文「おや、ご存じない?」
洋「……いや、誰にの部分はわかってる」
はる「そうだね!」
文「ひゃあ!」
洋「うわぁ!」
はる「そんな驚くことじゃないだろ」
文「唐突に出てきたら誰でもびっくりするって!」
洋「つーか何しに来やがった!」
はる「何しにって……そりゃあ君たちを」
文「だろうねぇ」
洋「おう、やるってんなら相手してやるぞ」
はる「相手をしてやるってのはちょっと上からすぎるんじゃない?」
はる「所詮君も創られた存在でしょ?」
洋「くっ……」
文「暁洋、君は一哉たちのところに戻ってくれ。私の世界を渡る力を預ける」
はる「どうぞどうぞ」
文「おや、止めないのかい?」
洋「……わかった。死ぬなよ?」
文「もう死んでるから『消えるなよ?』が正しいけど」
文「かっこいいから訂正はしないであげよう」
はる「行ったか……さて、二人っきりだねぇ慈乃っち」
はる「君は世界を続ける、いや終わらせるために世界を崩し過ぎ」
はる「あんな敵になんの緊張感もない」
文「緊張感のある敵なんて作れないくせに」
はる「次からは僕の知る、僕が創った敵が彼らに襲い掛かる」
文「もう私にアクセス権はないらしいからね」
はる「そこで、僕は勝負を提案したい」
文「勝負?」
はる「君の選んだ彼が、最後の世界までたどり着き、すべての世界を終わらせていたら君の勝ち。一つでもダメだったら僕の勝ち。どう?」
文「いいけど、なぜそんな提案を?」
はる「僕は君を消したくもない。そして君の意見を尊重したい。彼を見逃したのもそのためさ」
はる「まぁ、君のアクセス権は復活させないけどね」
文「へぇ、まだ私のこと気にしてるんだ」
――ヤタカ王国 PM.04:00
一哉「ということがあったのさ」
初花「だいたいわかったわ」
一哉「慈乃文ぜってぇ許さねぇ!」
初花「いや、何であなたはそんな怪しい『うどん太郎』なんて名乗った奴を信じてるのよ」
有紗「うどん好きに悪いやつはいない!」
初花「…………そう」
一哉「お前もなんで唐突に現れたその暁洋ってやつを信じてるんだよ」
初花「いやでもうどん太郎よりは胡散臭くないでしょ」
一哉「それはどうかな」
有紗「洋は助けてくれたからっていうのもあるからねぇ」
初花「そうそう、それに話からすると慈乃文が消えた時にそのうどん太郎って奴が現れたんでしょ?怪しいじゃない」
一哉「うーん、めんどくせぇ!慈乃もうどんも暁ってやつもぶん殴ってみれば敵かどうかわかるだろ」
初花「ダメだコイツ……」
ハル「楽しそうですね」
レイニー「そうですね。ところで」
一哉「どうした!?」
有紗「何があった!?」
初花「うるさい!」
レイニー「いや、街に入ったというのに人の気配が全然無いなと思いまして」
ハル「そうね……また来るかしら」
一哉「どこだ!出て来い!ぶっ殺してやる!」
有紗「さっすが一哉!頼りになるぅ!」
初花「……さすがに出てこないか」
ハル「そうですね」
レイニー「というかあの魔物もいないんじゃ?」
初花「じゃあなんで人がいないのかしら」
レイニー「うーんうーん」
一哉「考えても仕方ない、出てきたらぶっ殺せばいいんだ!」
ハル「姉さんは大丈夫かしら」
一哉「ところで、アンタ本当にアレの妹なのか?」
ハル「よく言われますが、本当に姉です」
一哉「そうか!わかった!」
――ヤタカ王国宮殿内 PM.04:28
レイニー「さすがに兵士ゼロは怪しすぎます」
一哉「オラァ!戻ったぞ!」
有紗「わざわざ鍵の開いてる扉を無理に蹴破るなんて、なかなかできることじゃないよ」
初花「あれは」
ハル「姉さん!」
ユキ「…………」
初花「様子がおかしいわ」
ハル「ッ!皆さん下がってください!」
有紗「うっひゃあ!!」
ユキ「グ……ギ……」
一哉「あの野郎!せっかくここまで妹連れてきてやったのに!」
レイニー「いや、自分の意志と関係なく私たちを襲っているように見えます」
ハル「レイニー!皆さんをお願いします!」
一哉「俺は戦うぞぉ!!」
ハル「止めてください!あなた姉さんを殺すつもりでしょう!」
一哉「チッ!わーったよぉ!殺さないようにするよぉ!」
レイニー「大丈夫でしょうか」
初花「さぁ?」
有紗「ふふん、一哉は約束はなんだかんだいいつつ守るよ。信じてみなって!」
一哉「オレチャントヤクソクマモルヨー」
ハル「……わかりました。でも少しでも殺気を感じたら容赦なくあなたを叩き切ります」
一哉「ウンウン、ダイジョウブダヨー」
ユキ「グギ……ギ……」
一哉「ひゃっはぁ!吹っ飛べ!シャイニングスパーク!」
有紗「あ」
初花「私ってこんなの信じてたんだ……」
ハル「光の結界」
一哉「あ、なんであいつを守るんだよ!」
ハル「次やったら本当に殺しますよ」
レイニー「うわぁ、あんな怒ってるハルさん見たの久しぶり」
一哉「サーセン」
一哉「ま、いいや。借りは返すぜ」
有紗「とかなんとか言ってるうちに尖った岩が私たちの頭上に!」
レイニー「シューティングサファイア!」
ハル「ホーリーバリア」
一哉「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
有紗「難を逃れた私たちは後方へ下がり、ただこの戦いをじっと見守ることしかできなかった」
初花「なんで急に口調が変わってるのよ」
有紗「などと初花は私の説明口調にダメ出しをする」
レイニー「地の文ですか?」
有紗「そうね、なんだかやらなきゃいけない気がして」
初花「わけがわからないわ」
一哉「てりゃあ!」
ハル「てぇーい!」
ユキ「グッ……ギギギ……」
一哉「ところで殺すなというからには元に戻す方法があるんだろうな?」
ハル「いえ、見たことのない魔法なので見当もつきません」
一哉「ハァ?てめぇの頭はハッピーセットかよ」
ハル「家族を守りたいと思うことはそんなに変なことですか」
一哉「あんなのが家族と言えるなんてさすがだなぁ、あこがれるなぁ」
ハル「なんでそんなに私を煽るんですか?楽しいですか?」
一哉「ああ!」
一哉「俺はちっとも面白くないやつを煽るのが大好きだ」
――
有紗「戦闘しながらなんか言い争ってる」
初花「わかるの?」
有紗「そんな気がする。女の勘」
初花「ああ、うん。わかったわ」
レイニー「でもハルさんはかなり一哉さんにキレてますねぇ」
――
一哉「仕方なーく動きだけ止めてやる」
一哉「その間になんとかしろ」
一哉「できなければ多分死ぬ」
ハル「わかってます」
一哉「デモンズ・チェーン」
ユキ「グゥッ……」
ハル「姉さん!目を覚まして!」
ユキ「グ……ガ……ギ……」
一哉「持ってあと20秒だ!」
ハル「ユキ姉さん!」
ユキ「グッギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ハル「え……」
有紗「ああっ!ハルさんの体に岩が突き刺さってる!」
一哉「クソがッ!」
ユキ「ガガガガガガガ」
有紗「一哉は即座に光の斧でユキの体を真っ二つにした。体を分断されたユキは影となって消えた」
ハル「ハハ……本物じゃ……なかったんだ……」
一哉「だから言ったろ。あんなのでも家族って言えるのかって」
ハル「わかってたん……ですか……?」
一哉「俺が戦った時と戦い方が全然違った。動きの癖とかそんなのも含めて狂っててももっと強かったはずだ」
ハル「そんな……なんで……言って……」
一哉「家族だって周りが見えてないやつに何言っても聞かないでしょ。それにさっき言ったじゃん。アンタみたいな面白くない奴は嫌いだって」
ハル「すみませんねぇ……面白くなくて」
ハル「ハァ……私、こんなことで死ぬのかぁ」
ハル「やだなぁ……こんな恥ずかしい死に方」
初花「じゃあちょっと黙ってなさい」
レイニー「なんでハルさんがこんなとこで死んだりしますか」
有紗「生きることをあきらめちゃダメだよ!」
ハル「皆さん……」
一哉「しょうがないなぁみんな。こんなの生きながらえさせてもどうしようもないのに」
一哉「まぁ有紗がやるってんなら俺も手伝わざるをえない」
一哉「そういうことだ」
――宮殿内 PM.05:47
初花「こんなところかしら」
有紗「すごーい!初花って医者だったの!?」
初花「何言ってるの。ただの女子高生よ」
一哉「今どきの女子高生ってすげぇな」
有紗「私等の時とはレベルが違うね」
レイニー「すみません、いろいろと迷惑をかけて」
一哉「別にぃ、滑稽で面白かったからイイしぃ」
有紗「私たちはハルさんに助けられたし」
初花「お互いさまってことで」
レイニー「そうですか、わかりました」
洋「とうっ!呼ばれて飛び出てジャンジャジャーン!」
一哉「誰だ!敵か!」
洋「お前が一哉か、俺は暁洋。よろしくな」
初花「遅い。慈乃文は?」
洋「困ったことになってる。で、俺がお前らを異世界に送る役になった」
一哉「ぜってぇ許さねぇ!」
洋「おぅふ!なぜ殴る!」
有紗「洋が本当に味方かどうか試すんだってさ」
洋「味方だよ!味方じゃなかったらこんな面倒なことしねぇよ!」
一哉「いや、味方だと思わせて『ジャンジャジャ~ン!今明かされる衝撃の真実ぅ~!』とかするかもしれない」
洋「誰がそんな三下のマネするか!」
レイニー「あの、こちらは?」
洋「アカツキです。君のようなかわいい女の子と出会えるなんて俺って幸福だなぁ。今度一緒に食事にでも行かない?」
レイニー「あぁ、キモイタイプの人ですね」
一哉「そうか」
有紗「私たちにはそんな態度取らなかったよねえ」
初花「私も自称ながら美少女だと思ってたのになぁ。やっぱり異世界人とは合わないのかしら」
洋「いや、その、気にすんなよ!さっきのもギャグだって!ちょっと大変なことになりすぎて俺も混乱してんの!」
一哉「そうなのか知らなかった」
初花「どうでもいい」
有紗「そっとしておこう」
洋「とにかくだ、まずはこの世界を出るぞ」
洋「お前らと一緒に行動してたその二人は影響を受けてないが、この世界の他の生き物は全滅している」
一哉「どういうことだってばよ!」
洋「つまりこのままだと俺たちも世界の滅亡に巻き込まれる!」
有紗「な、なんだってー!?」
初花「じゃあ早く行きましょう」
レイニー「ちょっと待ってください!」
一哉「あ」
有紗「そうだ」
レイニー「この世界が滅亡しているってどういうことですか!」
洋「済まないな、俺ごときじゃ神には勝てなかった」
洋「君はそこに倒れているハルと一緒に異世界に来てもいいし、このまま世界と共に滅んでもいい」
レイニー「…………もうこの世界を捨てろと」
一哉「まぁ、そうなるな」
初花(正直私はなんだか知らない間にここにいたんですけど帰れるんでしょうか)
レイニー「…………」
洋「あと数十分しか余裕がないんだ。決定は早くしてくれ」
一哉「そんな余裕ねぇのにギャグかましてたのかてめぇ!」
レイニー「私は……こ」
ハル「行きましょう、レイニー」
レイニー「え……」
ハル「さっきの話は聞いてました。正直さっぱりですがこの世界にいても仕方がないということはわかります」
ハル「なら、私は生きます。せっかく助けてもらったのに、こんなところで消えてなくなりたくはない」
レイニー「ハルさん……」
一哉「ちぇー、おもしろくねぇ答えだなぁ」
有紗「まぁ知ってる人間がこんだけいれば楽しくなるでしょ」
初花「このキチガイと一緒にいたらホームシックになってる暇なんてないわよ」
レイニー「わかりました。行きましょう、ハルさん!」
洋「オーケー、飛ぶぞ!目を瞑っとけ!」
有紗「うあおおおおおおおおおおおおおおお目が回るうううううううううう」
洋「瞑ってろって言ったじゃん!」
デストーイ・シザー・ベアーを有効に使う方法を考えてます。