第四話 左 クリソプレイス ―睡眠―
注意!
こいつら小学生です。
朝の10時。すでに夏休みに入り蝉がジージーと鳴いている。窓に取り付けた風鈴が時折音を鳴らし、その心地よさが和真を二度寝に誘った。和真の自室は三階にあり風通しが良い。日当たりもよく、四季に関わらず過ごし易い部屋だ。
そんな和真が起こされたのは朝6時。いつも通り旅館の準備の手伝いと朝食のためにベッドから出た。用意されたご飯を食べ寝巻きを着替えた後、客室の掃除を手伝い終えた和真は学校から出された算数の宿題を終わらせて今にいたる。算数の宿題は大したこともなくすぐに終わる量と難易度だったため、これで難しいと言う奴の顔が見たいと思うほどであった。
眠ってから1時間。二度寝を続けていた和真だったが何やら声が聞こえる気がした。
??「か…く…、…き…、か…まく…お……。」
誰だかはわからないが大好きな睡眠を手放すわけにはいかないので布団をかぶった。今までこの布の壁を破った者は一人としていなかった。普段から二度寝はいつもやる事を終わらせてからしていることなのでこうしておけば誰も起こしたりしなかった。今回もそうだろう・・・。そう思っていた。
和真「………ねぇう!?」
布団をかぶっていた和真は体を斜めにしていたが、その一番上となるわき腹に何かが勢いよくのしかかってきた。
??「早く起きてー!かずまくーん!!」
和真「ちょっ!まっ!うはっ!」
上手いこと体を動かしお腹に力を入れて起き上がる。
和真「………優希……なにしてんの…。」
優希「…全然起きないんだもん……。」
和真「とりあえず降りてくれっ…!みぞっ、そこみぞっ…!」
優希「ごっめんなさーい♪」
普段出さない声を出してしまったがために優希は大笑いしてどいてくれた。
和真「…優希…ちょっとそこに正座しなさい。」
優希「?」
和真「どうしてこんなことをしたんですか?」
優希「和真くんがなかなかおきなかったからでーす。」
和真「お腹に乗る必要はありましたか?」
優希「あまりに起きなかったので乗りましたー。」
和真「もっと別なやり方はなかったんですか?」
優希「だって…お菓子作る約束だったのに寝てるんだもん…。」
和真は確かにお菓子作りの約束をしていた。ついさっきまで忘れていたが。しかし今の和真はそれよりおちょくり返しがしたかった。
しばらく同じ流れで話していると優希の頬が膨らんでいくのがわかった。
和真「…んじゃあ。」
和真は頬を膨らませてうつむいている優希に近づいて
優希「……?………むひゅう。」
膨らんだ頬を両手で優しくつぶした。
和真「これでおあいこ。」
元々は今日の約束を忘れていたこちらに非があるわけだしわざわざ遠くないにしろ我が家に来てくれたんだからこれくらいでいいだろう。そんな風に考えた和真は頬をつぶすだけで終わらせることにした。
和真「んじゃ、お菓子作りしますか。」
優希「…………。」
和真「大丈夫か?」
優希「!ごっ、ごめんごめん!平気だよ!」
和真「早くやろうぜ、食いしん坊将軍が腹を空かしてやってくるぞ。」
優希「んもう……、ゼリーにでもする?」
和真「そうだな…。果物とか入れていろんな味を作るか。」
優希「うん!そうしよう!」
ゼリーの中に入れるフルーツを何にするか話し合いながら、そういえば母が中庭の小川に西瓜を冷やしていたことに気づきゆっくりと涼しい風の通る庭に出て行った。