第一話 右 アマゾナイト −道−
相川優希は道に迷っていた。
昨日の入学式は、珍しく家にいた父が車で送っていってくれた。しかし、道は覚えておらずどの道を進めば小学校に着くのかわからなかった。
今はただ十字路になっている道の真ん中で回りを見渡すだけだった。
「………。」
泣きそうになる。まるでこの世界に自分一人しかいないように感じてしまう。
小学生になって怖いものはないと考えていた。しかし優希は小学生になっても、何も変わらず怖いものはたくさんある事を痛感した。
一人ぼっちもそうだ。絶対に慣れることがない。
何もわからなくなり、ただ右左と見回していた。
「あい川…ゆきちゃん?」
不意に声をかけられ、とびあがってしまった。
声の方を見ると男の子が立っていた。その顔には見覚えがあり、一年生にも関わらず学帽を被っていない。眠そうな目をした男の子は入学式の日にたくさんの人と話していた藤原和真だった。
「えっあっえーっと……ふじわらかずまくん?」
とても情けない声を出してしまった。凄く恥ずかしくて、声を出すと泣いてしまいそうで怖い。
和真は表情を変えない。目は眠そうに細くしているがこちらの表情をうかがってるようだった。
「道にまよったの?」和真は図星をついてきた。
「……………。」
答えることは出来なかったが無視するわけにもいかず、首を縦に振った。
きっと笑われる、馬鹿にされると思い必死に涙をこらえた。
「そうか。」
和真は一言だけ言って横を抜けていった。思っていた事とまったく違う反応に優希は安心と驚きを感じたがそれだけではなかった。
和真に腕を掴まれ引っ張られていた。
その手は、小学一年生とは思えないほど手の豆の感触のある温かい手だった。
一話を見てくださり、ありがとうございます。
基本的にこの小説は和真視点、優希視点の同日投稿になるのでもしかしたらペースが悪くなるかもしれません。
ですが、精一杯頑張っていくのでよろしくお願いします!