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恐怖の笑顔

書いていた物が、ドロンっと消えました…。

手直しして保存しただけなのに・・・。

シクシクシク(T^T)



とっても拙い物語ですが読んでいただけて大変嬉しいです。

ありがとうございます。


忍び込んで来た笑い声に心が引き釣り、歪に歪む。


全身でゾクリとする何かを感じ取り、それが身体中を駆け巡る。


鳥肌が立った…。


その感覚に俺が嫌悪を示したのは、ほんの一瞬だけ。


注意して見ていなければ誰も気が付かないだろう、そんな僅かな時間。


実際、今、共に歩いているラインは全く気付いていない。


俺に肩を貸し、半ば担ぐ様にして歩いているのだから、気が付かないのは当然と言えるだろう。



「ん?何?」



ラインが訝しげに眉をよせて問いかけてきた。


いつの間にか視線が向いていたようだ。


俺は一度左右に首を振って答えを返す。


「いや、何でも無い。

ボーッと考え事してた。」



ペラッペラのうすっぺらな笑みしか出来なかったみたいだ。


そんな顔の俺を見て、ちょっとの間が空いたが

「そうか」の一言で一応納得してくれたようだった。


しかし、反対側で手を添える様にして支えてくれているケイトには、どうやら分かってしまったようだ。



「・・・・・・。」



口を開きかけたが、思い直したのか、結局何も言葉にする事なく閉じられた。


もしかしたら生徒会室に着くまでは黙って居ようと決めたのかも知れない。


目を向けた先のケイトは難しい顔をしている。


僅かだが眉間に皺を寄せている表情に溜め息が落ちる。


どうしたの?と問い掛けたいのを抑えてくれているようだ。


しかし時折、様子を見る為に見上げてくるケイトの瞳はそれを雄弁に語っていた。


はぁぁ・・・。


心中で溜め息を吐き出し、気持ちの立て直しを図る。


何気なく上げた視線の先には、まだ長く続く石床の廊下を目にして俺はウンザリとした。


そんな感情を持った自分に気付き苦笑を浮かべる。


あー、やりすぎたな。


ほぼ全ての魔力を消費してしまえば身体を正常に維持出来なくなるのは当たり前だ。


今はほんの僅かな魔力が残っていたお陰で意識を失わずにすんでいる。


反省反省っと自身に言い聞かせながら移動し続けていると、前方より自分達の足音とは異なる音が聞こえだした。


一つは、カツーン、カツーンっという無駄に反響している音で、女性だと思わせるヒールの靴音。


これで現れたのが、禿げ教頭あたりなら、腹を抱えて馬鹿笑いしてやるんだがな。


まぁ、誰の靴音かは予想が着く。



「蓮…どうする?」



此方に顔を向けたラインは何時ものふざけた感じでは無く、至って真面目な顔で問いかけて来た。



「そうだな、出来れば直ぐにでも避難したい・・・。」



嘘偽りの無い素直な気持ちのままに答えを返す。


その意見に二人は同時に苦笑を表したが、反対する訳でも無く、ラインもケイトも同意を示してくれた。


きっと、二人とも俺と同じ答えに行き着いたのだろう。


相対してやって来る相手が十中八九、校長である黒薔薇の魔女・ミネバだと。


ヒールの音の他には、擦る様な靴音が3人分聞き取れた。


廊下の先は突き当たりとなり、左右に道は続く。


右に曲がれば各階を繋ぐ階段に向かう。


地下から天井まで続く吹き抜けの空間に階段が縦横無尽に延びている。


実はこの階段、非常に曲者なんだ。


段に足を乗せると階段が伸びる…。


途中で捻りが入ったり、逆さまになったり、一回転や波打ったり、一段の高さが人の背丈程になったりと実に忙しく面倒臭い。


されど、生徒達は階段を使っての移動が基本とされている。


如何に暴れる階段を宥めて目的の場所に行くか、生徒達の試行錯誤は日々続いている。


そして廊下突き当たりを左に曲がれば、転移ポートのある小さなホールの様な場所に行き当たる。


ホールの中には4~5人が入れる大きさの小部屋が幾つか並んでいる。


部屋を仕切る壁によって光が遮られるという事もなく、中は程好く明るい。


各小部屋の床には刻み込まれた魔方陣と四方に埋め込まれた魔法石があるのみのシンプルなもの。


ここで魔力を床の魔方陣に注ぐと転移魔法が発動し、小部屋の中のもの全てを決められた場所に移動させるのだ。


講師方の学舎内での主な移動手段として使われている。


件の靴音の主は、その転移ポートのある左側から姿を現した。


見かける度に毎回ほぼ同じ様な黒の衣装に身を包んだ赤毛の女性、ミネバ。


ローブの代わりに、簡易的な黒のショートマントを羽織っている。


その側には白いローブを着た3人の魔法師が彼女を守る様に囲んでいた。


先を見る彼女の目が俺の姿をとらえると驚きに見開かれる。


目が合い、思わず視線を反らす…俺…。


その瞬間、マズッタ!!って思ったよ。


後の祭りだけどな…。


そっと目を前に戻し、視界にミネバを納める。


俺の頬がピクッとヒクツイタ。



……うっわぁぁー…'''

満面の笑みだ!!!


まじスッゴい笑顔だ……

ウウッ!!…これはヤバイ"""。


今日が俺の命日になりそうだ・・・。





講師の方々に敬意を払い、学生は廊下の端に寄り道を空ける。


スレ違う瞬間には、頭を下げ会釈を行う、それが学内マナーとして定められている。


出来ればトンズラしたかったが、もう、避ける事も逃げる事も出来ない…仕方なく俺達も学内マナーに殉じた。


壁際に身を寄せ、講師方が通過するのを待っている。


俺に至っては、支えられたままだけどな。


足音は刻一刻と近づいてくる。


通過してくれる事を願うが、さっきの顔を見た限りでは、叶わないだろう。


ほら、直ぐ目の前、下げた頭の位置から見える範囲に艶のある黒いハイヒールが覗く。


次の一歩へ向かう事なく、その場に留まる靴を見た。


あぁ…やっぱりね…等と思う暇もなく頭に衝撃を食らう。


スパコーン!!


大して痛くは無いが、衝撃と音だけはかなりのもの。


叩かれた頭の天辺から、ビリビリとした痺れが全身に広がる。


その痺れはどうやら俺を支えてくれている二人にも伝わってしまった様だ。


それは二人の身体がビクッと反応しバランスを崩した事で分かった。


二人にはいい迷惑な事だろう。


中々にきつい痺れのせいで、俺を支え続ける事が出来なくなり、3人揃って床に這いつくばる。


上げた目線の先では、黒薔薇の魔女が不機嫌オーラを全身に纏って立っていた。


手にはこの異常状態を引き起こした魔法具・ハリセンを握り締めて…。






笑顔デス。


怖イ位ノ極上ノ微笑ミガ今、目ノ前ニゴザイマスデス…”。


特徴ハ目ガ笑ッテイナイ所ダッタリシテイマス。



「れーんー。何か言うことは無いのかしら?」



腰をおろし、ヘタリ込んでいる俺に目線の高さを合わせる。


右人差し指をピーンと伸ばし俺の鼻天辺をグイっと押しながら問うて来た。


俺はと言えば、


鼻押し・・・ヤメテ!!


これ以上低くしないで!!


こんな切なる願いを胸中で叫んでいた。


仕方ないだろ!!


マジでコンプレックスなんだからさ!!


口に出来ない願いを抱きながら暫くは見つめあっていたのだが、やっぱり目線を合わせていられなくなって少し下にずらす。


そうするとミネバの不機嫌オーラが確実に割り増しされた。


コ・・・コワイ"""。



「ほぉ〜、私の問に答えを返す気は無いと言う事かい。」



スウーっと体感温度が5℃位低くなった。


背筋をなぞる様に冷や汗が流れ落ちていく。


気がつけば、彼女の瞳の色が煉瓦色から燃える様な赤に変化していた。


マズイ・・・。


非常にマズイ!!!!!


俺は知ってる。


更なる変化を遂げた後の惨劇を!!


燃える様な赤い瞳の瞳孔に縦の線が刻まれたのを目にした俺は、本能の命じるままに保身に走った・・・。



「も、申し訳ございません!!喋らせて頂きます!!」



ハイ、私、土下座シマシタ。


だって、あの瞳が現れている時に逆らったら、ろくな目に会わない。


情の欠片も無く徹底的に叩き潰された経験があるんだよ。


もぉ〜、ガクガク”ブルブル"もんさ。


前は・・・一月位は寝たきりだったなぁ・・・。


過去の出来事に心を飛ばし思いっきり遠い目をした。


これも現実逃避の一つか・・・。


黒薔薇の魔女は俺の返事に満足そうに頷くと、鼻先に当てていた手を、今度は頭に乗せる。


まるで小さな子供や愛玩動物にでもするようにワシュワシュと撫でられた。


優しく幾度か繰り返され、その度に不安が積みあがっていく。


う〜ん。


とにかく目を合わせたく無い。


と言うか、合わせちゃいけない。


そんな感情が沸き上がっていたが、意を決して目線を持ち上げた。


あうぅぅ!!


恐ろしやぁ~!!!!!


何やっちゃってんの、俺!


何で勇気なんか出しちゃたんだよ!!


全然必要無かったよ、勇気!


目の前にあるその顔は変わらぬ笑顔と笑っていない目が維持されていた。


彼女は優しく撫でていた掌で俺の髪を遠慮無く鷲掴むと乱暴に引き上げる。



「いだぁ!!」



思いの外痛いぞ!!


将来、禿げたらどうしてくれるんだ!!


そんな文句の一つや2つや3つ、思いっきりぶちまけてやろうと、正面から睨み付ける。


・・・・・・・・・・・ニヤリと笑われた。


普段見せる教育者然とした顔とは全く違う。


服だけじゃ無く、中まで真っ黒な様子が見えそうな笑みだ。


ミネバが校長だなんて、絶対間違ってる!!


髪を引っ張る力が明らかに強くなり、痛みも増加。


涙目になった俺にミネバが声を掛けた。


「今、良からぬ事を考えただろう。」



「・・・・・・!!!」


心の臓の鼓動が“ドクン!”っと派手に脈打った。


全身を嫌な汗が伝い流れていく。


声には全く出して無いよな…、何故分かった!!


ジィーっと見ていると、困った奴だとでも言うような呆れ顔をされた。



「前にも言った筈だ。お前は考えている事が顔に出やすいってな。ちゃんと学習しろ、学習!」



俺としては、思っている事を曝しているつもりは全く無かった。


どっちかと言えば、上手く隠している方だと思っていたんだけどな…。


拳にした手で軽く頭を小突かれた。


今日は頭に衝撃をくらう機会が多すぎないか?


自分の頭が少々心配になって痺れの残る腕を上げて触ってみる。


とりあえず問題は無い様なので'ほっ'と一息ついた。



「はぁ~・・・。」



疲れたと言うような溜め息が直ぐ側から聞こえて来た。



「お前の頭には緊張感や慎重という言葉は無いようだな。」



何とも酷い言いぐさに、反論を述べようとしたが言葉にする事が出来なかった。


俺の両隣で痺れという異常状態に慣れていない《ある意味、慣れっこな俺の状態って本来マズイような気がするんだが…》二人が今だに話をする事も出来ずにいた。


それに目を止めたミネバが早急に解痺れの癒し魔法を行使したが故に、黙らざるを得なかったのだ。


俺を除く二人をターゲットにした小さな魔方陣が2つ。


二人の頭上に留まり、魔力の粒子が零れ落ちてゆく。



「パウダースノー!」



ミネバの唇が力ある言葉を紡ぐと、魔方陣の中心からフワリフワリと風に舞踊る雪の様なものがユックリと降り注ぎ始めた。


二人の頭に、肩にと、全身を薄く覆うまで、大した時間は掛からない。


覆いきった途端に、粉の幕は一斉に光を放ち、光が収まる頃には、二人に掛かっていた状態異常は綺麗サッパリ解除されていた。



「どう?まだ、痺れを感じる?」



二人は手足を動かし、体の状態を確認して、それぞれ異常無しとミネバに答える。


良かったと微笑む顔は、さっきまでの恐ろしい笑顔ではなく、素直な微笑みだった。



「随分と態度が違わないかぁ?」



何とも腐に落ちず呟いてみれば、ミネバに、また笑みの種類を替えられた。



「フフっ…そんなのは当たり前だろう?」



鼻で笑われた。


見下されていないか?俺・・・。



「学舎の可愛い生徒と、素直じゃない愚かな弟子(馬鹿)、比べるまでも無い!!同じ扱いにする方がおかしいだろ。」



その考えも、おかしいだろ・・・・・・。




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