はじまり
初投稿です。
下手です。
スミマセン…。
そこは、ただの広いだけの空間。他人の空間…。
ベッドや机、椅子等の上等な家具が並ぶ部屋の中で、手触りの良い絹のクッション達に包まれて横たわる小さな人影がある。
その人影は、蜜色の髪の幼い少女のものだった。
パタパタと何度も身体を動かし、そこから脱出しようと試みるが、なかなか上手くいかない…。
それは退かしては、上から崩れてくる、を繰り返えしているからだ。
少女は思うように動けない事に苛立ちながら、そっとため息を着いた。
この部屋にある物は、全てが大きい、幼い少女には、扱いが大変なものばかりだった。
故に、昼間に届けられた、この扱い易そうなクッションの山に、初めこそは喜び勇んで飛び込んだのだ。
結果、クッションの山で蟻地獄を味わっている…。
再び少女は、もがき初める。
幾らかの時が過ぎた頃、どうにか抜け出し、危うくクッションの中で遭難するところだった…と密かに胸を撫で下ろしていた。
さっきまでの格闘で火照った身体と感情を覚ますべく、毛足の長い絨毯を踏みつけながら窓辺に近づいて行く。
少し背伸びして、高い位置に付けられた鍵を外した。
ガラスに手を当て力を込めて押すと窓は音もなく開いていく。
その隙間から外気が部屋に流れ込み、少女は首筋をそっと撫でられた。
春から夏に向かう季節ではあるが、夜の空気は、まだヒンヤリとしていて、まとわり付く空気に身を振るわせた。
素足でバルコニーに出て夜空を見上げると、闇の中に金色に輝く2つの月が並んで浮かんでいる。
その月の回りを数多の星が散りばめられ、キラキラと光を発していた。
更に、その光達を薄いベールで包む様に虹色の幕が揺らめきながら淡く光っている。
夜空に瞬く、光の共演を見るのが好きで、少女は時を忘れて見続ける。
どの位、立ち続けていたのか、扉を叩くノックの音で我に返り、体が冷えきっているのに気が付いた。
ぎこちない動きで部屋の中に戻り、窓を閉じてからノックに応える。
応じた声の1拍後に、部屋の扉が開き、黒衣の女性が現れた。
彼女は少女の間近まで寄ると、うやうやしく膝を付き頭を垂れる。
少女が話し掛ける許可を与えると、彼女は顔を上げ口を開き始めた。
「報告がごさいます。」
彼女は真剣で真っ直ぐな眼差しを少女に向けている。
その視線の厳しさに、何を言われるのかと、警戒し、緊張に身体が強張る。
そんな様子を見て、彼女は微笑みを浮かべ、話を進めるべく、ゆっくりと口を開いた。
「姫様は今宵、10歳にお成りになられました。そのお祝いとして、陛下より魔法を習う許可が下りました。」
淡々と告げられた話の中に、今まで幾度も懇願しては、却下され続けてきた
《魔法を習う》
という事に許可が得られた事実に、警戒も緊張も全てが、ふっ飛んでしまった。
沸き上がってくる高揚感に頬が緩んでくるのを感じて、必死に表情を引き締めようと試みたが、思うようには、コントロール出来なかった…。
そんな様子を見て彼女は、少しだけ悲しいそうな感情を瞳に宿す。
何故そんな目をするのかその時の私は全く分っていなかった。
彼女は、何か躊躇うようなしぐさをしたが、意を決した様に話出した。
「確かに姫様には魔法の才能がございます。
師につき、真面目に学べば立派な魔法師に成られるでしょう。されど、
魔法は人には過ぎた力…
大きすぎる力です。様々な制約や義務が付きまとう物です。」
意味を理解したのか確かめるように、彼女はここで一度言葉を切り、私の思考が追い付いたであろう頃合いを見計らい、再び話始める。
「しなければ成らない事と、してはいけない事が沢山有り、違反をすればもちろん厳しい処罰を受けます。
知らなければ良かったと後悔する事も多いのです。
それでも、
魔法を学ばれますか?」
その場を逃れるだけの嘘も、いいかげんな答えも、してはいけないと
子供の私にも理解出来た。
この答えは私の人生、初の岐路になる。
私は、瞳に意思の力を込め、一度だけ首を縦に振り頷き返した。