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戯曲 トルーデン  作者: 岩﨑大翔
8/11

第二幕 第四場 例の魔女狩りの仔細について

第二幕 第四場

 

 城内 謁見の間 

 舞台中央、高二重。王が玉座に座り、その下からは赤い絨毯が下までずっと延びている。宰相ワイゼルがゆっくりと下手から入り、御前でひざまづく。

 

 ワイゼル ご機嫌麗しゅうございます、陛下。良きことと悪しこと、互いに一つずつ、ご報告が。

 テリダール ワイゼル、此度はよくやってくれた。ご機嫌いかがかな。

 ワイゼル はっ。ありがたきお言葉。しかし、胸の鼓動、脈の流れは波打つことこの上なく。然るにそれらは此度の報告によるものに他なりませぬ。

 テルダール ふむ、しかし良い報告もあるのだろう?早速申してみよ。

 ワイゼル はっ。まず良い報告にございます。先日取り上げた魔女の被害についてですが、魔女の悪業この上なく、上から読み上げますに、人攫い、子攫い、秘薬の錬成、金銀と偽った石々での代金の支払い、あれは何の魔法か。しまいには各地の天災、殺人、それらへの疑いもかけられておりました。そこで私が指揮を取り、城下に魔女の疑いのあった者ども十数余人をひっ捕え、北山の麓に括り付け火炙りに処しました。そのご報告で。次に悪いご報告にございますが、これがあまりに奇奇怪怪でございまして。何と申し上げれば良いものか。とかく、魔女が二人、逃げたのでございます。縛り台には一人ずつ見張り役を置いておりましたが、どういう訳かそのうちの二人、いつの間にかくるりと後ろを向いていたのでございます。しかし、当人もあるいはその周りもそれに気が付かず、数分経ったのち、誰かがやっと声を上げるとそれで異変が。その二人の背後、残っていたのは縛り台にめらめら燃え上がる縄ばかり、もう既に、魔女どもの姿は消えていました。巷で魔女は燃えると骨も残らないとは言いますものの、ことの奇怪さから察するに魔女どもは生き延びどこかで事の復讐を企てているやも知れませぬ。燃えた内、骨が残らなかったのは、その者どもを除き三人。そのご報告に。

 テルダール そうか。判った。報告、ご苦労であった。また此度のそなたの貢献、後で褒美を授けよう、退がるが良い。

 ワイゼル はっ。なんと、、。その様なことをおっしゃっていただけるとは夢にも!取り逃しました失態、誠に申し訳ございませぬ。改めてそのご寛大な御心に心からの敬服と忠誠を。では、これにて早速失礼いたします。魔女どもの跡を追わなくては。何かあってからでは私の命ばかりではとても足りますまい。

 ワイゼルが立ち上がる。

 テルダール それと。

 ワイゼル はい。

 テルダール すると疑いばかりで真には魔女でなかった者達がおるのだな。であれば供養を施してはくれぬか。無駄死になどではなくこれは名誉ある死として、墓標を立ててもらいたい。嘘偽りなく。それから遺族ともどもに金銀を幾ばくか。報いとはその物言い無礼極まりないがしかし、その様なものがなくては致し方がなかろう。せめてもの報いを差し上げたいのだ。それらを全て、そなたに任せることにしたい。よいか、ワイゼル。

 ワイゼル はっ。勿論にございます。承知いたしました。今すぐにも。また仔細、お伺いに参ります。

(ワイゼル退場)


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