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戯曲 トルーデン  作者: 岩﨑大翔
10/11

第三幕 第二場 アルキメデスの金冠(きんかむり)

 第三幕第二場

 

 大広間 長い机とそこに数脚の椅子が並んでいる。昼食のために王、妃、トルーデン、それからオリヴィアも席についている。

 

 テルダール

オリヴィア、そなたトルーデンとは上手くやれておるか?

 オリヴィア

はい、と返事をするのもお恥ずかしいかもしれませんが、私はトルーデン様に惚れているのです。今も昔もそれは太陽や月のめぐりのように変わるものではございません。このお方をお側でお守りしたいと、お支えしたいと、そのように想い続けております。

 トルーデン

ははは。父上、私は本当に幸せ者です。少し恥ずかしいくらいだよ、よしてくれオリヴィア。

 テリーヌ

トルーデンあなた顔が少し赤らんでいるのね、オリヴィア、こっちを向いてちょうだい?ふふふ、とても目の色が澄んでいるのね。息子のこと、よろしくお願いね。きっとあなたたち二人は、優しい国を作ることができるのよ。テルダールがそうしてきたようにね。そうでしょう?

 テルダール

ああ。その礎を建ててから私は退くことにしよう。いいかい、アルキメデスの金冠の話だが

 トルーデン

質量と体積の話ですね

 テルダール

ああそうだ。体積とは見かけでわかるものだが質量はそうではないな、もっともあの話では質量の違いを水の浮き沈みによって暴いたがこれは・・・

 テリーヌ

ふふ。二人とも。意外とためになるわよ、よく聞いておくことよ。

 テルダール

意外は余計だろうに、まあ良い。そう、それでだな、恋愛にも同じことが言えるという話なんだこれは。いいか、体積とは容姿なのだ。質量とは内面なのだ。案外なことだが環境や家柄なんていうものはそれを扱うものの意識でどちらにだって帰属できる。つまり、自分がどのようにありたいのかだろうな。大切なことというのは。そして、水とは、そうだな、すなわち逆境のことを指すのだ。分が悪い時、なんだってそうだ、心にもっともな余裕がないというのはとても危ない。そういう時にその水圧に耐えられなくなってああもう駄目だと浮いてきてしまっては、金、これに値しないのだ。王やその妃というのは憧れであり責務であり、隔てられてはいないが、その間は遠く離れている。ただ夫婦になるのとは、また違うということだぞ。今はわからなくともそれを知っておいてほしい。

 オリヴィア

では、体積はどうなのですか?

 テリーヌ

ふふ。

 テルダール

質量との平衡感覚との上で天秤にかけられていることを知っていれば良いのだ。

 トルーデン

天秤の傾きはでは重い方に合わせるのが良いのですね。

 テリーヌ

あら。賢いわね。

 テルダール

大切なのは何もかもが一人で歩いてはいないということ。それを知ること、それは知らないことを知るよりも、崇高なことだ。覚えておきなさい。

 トルーデン

はい。今の忠言、確かに心にしまっておきます。

 オリヴィア

ええ。わたくしも。

 トルーデン

それでは私たちはこの辺で失礼いたします。

 

(トルーデン・オリヴィア退場)

 

 テルダール

意外に良い話だったろう?

 テリーヌ

素敵だったわ。たまには良いかもしれないわね。

 テルダール

たまにだな。

 テリーヌ

ええ。たまにね。

 

 暗転

 

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