呼寄会
呼寄会。火華はあまりこの会が好きではない。理由は単純に人が集まるからだ。人が多い空間は昔から苦手な火華は参加しても隅の方で1人でいる事が多く、あまり自己主張もない。それなのに一際目立つ尾のせいで声をかけられる事もあり、めんどくさい事に関わりたくない火華は尾の手入れを怠って、敢えて見た目を悪くしていた。
その火華は今日の呼寄会では珍しく、尾の手入れをして立っていた。いつものボサボサの尾から一転、光沢を放つ綺麗な尾になっていた。10秒ほど立って周りの人に目を向け、人の多さに顔を押えながらしゃがみ込む。
「……はぁ…この間、ちょっと話してワックス貰っただけなのに…手入れして呼寄会来ちゃうとかちょろいな…わたし」
小声で呟き、顔を上げて羽人を探す。たしか……鶴だったけ?あ、違うタンチョウ……だったけ?白っぽい鳥だったよね。火華は普通に目的の人を探し始めたが、こんなに人が多い場所で目的の人物を動かずに探し出すなんて芸当は不可能に近い。
「あはは……何やってるんだろわたし………帰ろかな」
「あれ何やってるの火華ちゃん。手入れまでして珍しい」
「きゅ、急に声をかけないでください!!」
声をかけてきたのはヨウさんだった。この人は割と美形で見た目がいい。とても。正直同じ人間か疑うレベル。あと、角もかっこいい。私の目立たない尾とは違って主張もあって羨ましい。
私の反応にヨウは笑いを噛み殺しているような表情をし、出した手を引っ込めた。
「…………」
「…………」
無言の時間があり、ヨウが口を開く。
「それで?何してたの?」
「……たまには呼寄会に参加しようかと思っただけです」
「いつも参加はしてるじゃん。手入れはしてないけど」
「うるさいです一言余計です」
手入れしてないのは事実だけど……それはそれ、これはこれ。ん?これってなんだっけ?まぁいっか。ふらつきながら立ち上がる私をヨウさんが支えて起こしてくれた。
この人女の子の扱い上手いよなほんと……まぁだからと言ってそんな仲のいい訳でもないし……恋人とかになりたいとも思わないけど。なんか暴力的そう。雰囲気が。
「確か火華ちゃんは人混みが苦手だったよね?1人で帰れる?」
「大丈夫。あっちだよね出口」
私が指を指すのを見てヨウさんは呆れ顔で反対側を指さして言った。てかこの人呆れ顔もいいんやな顔がいいのか。私も美形に生まれたかったわ……
「出口はあっち。反対側だよ反対……やっぱり送ろうか?」
「いい。遠慮しとく」
ヨウさんの誘い(?)を断って1人で歩いて帰る。結局、目的の人は見つからなかったなぁ。ズボンのポッケに触れて中のワックスの入れ物に軽く触る。もう使わないかもしれないなワックス。帰ったら仕舞うか。そんな事を考えながら火華は帰路に着いた。