Rap1081-高齢出産・陣痛促進剤 産婦人科-3
Rap1081-タムラ先生夜間外来総合
Rap1081-高齢出産・陣痛促進剤 産婦人科-3
計画出産 陣痛促進剤
「矢沢さん、水沢さんの旦那さんに連絡とって下さい!」
「はい、わかりました!」
水沢さんの出産が微妙なのだ。
連休に出産予定日がぶつかっている。
この様な場合、最近出産日をある程度決めてしまう事を、
多くの産科では行われる。
出産日を土日、祝祭日を避けるのが最近多い。
世の中、情報公開が盛んになり、その事に対して、
賛否両論ある。
要するに陣痛促進剤を使う事に対する、良し悪しだ。
最近は、陣痛促進剤は、最近は極力使わない方向が主流だ。
患者の陣痛が微弱な場合、陣痛促進剤で陣痛を、
強めようということになります。
陣痛促進剤とは、子宮収縮剤です。
子宮を収縮させることによって、陣痛をおこしたり、強めたりする薬です。
陣痛促進剤にはプロスタグランディンと、
オキシトシンという薬があります。
プロスタグランディンには内服薬と、
点滴で静脈内に少しずつ注入して使う、
注射薬の二種類があります。
オキシトシンは、もっぱら点滴で使います。
また、お産後の子宮がゆるんでおこる、
弛緩出血を止めるために使うこともあります。
「恵子先生、お願いします。」
「水沢さんの旦那さんが、いらしてます。」
「そうですか、お通して、奥さまも一緒に・・ね」
「はい、かしこまりました!」
水沢夫妻は少し不安気味に応接室入っていった。
「先生、何か?」
「はい、予定日が明日なのに、奥さま 子宮口の開き具合が、少し遅いのです。」
「そうですか、で、どうしたら?」
「いろいろ、物理的な方法で開くように、行っているのですが!」
「それで、効果が現れない場合、陣痛促進剤を使わなければならない可能性が・・・」
「陣痛促進剤と言うと・・・」
「最近世間で・・・」
「そです、世間の風潮は使わないで何とか・・・」
「と言う意見が、最近根強いです。」
「それで、その薬を使うと・・・」
「危険・・・なんですか・!?」
「世間は、かなり無責任な発言が多いです!」
「しかし、促進剤を使わないと決めてしまうと、それ以上の大きな危険因子が、
たくさんあります。」
「では、どうしたら良いのでしょうか?」
「私に、一任頂きたいのです。」
「なるべく使わない方向で! と、考えております。」
「そうですか・・・!」
「必要な時に使わなくて、母子ともに危険な状態になる可能性も・・・・」
「ありますから!!」
妊娠中、そう精子と卵子が無事巡り会い、
受精した卵子が子宮の中で育まれ、赤ん坊として世に出るまでの期間は、
寿命の2%に満たない。
が、細胞分裂の回数から見ると何と、80%を占めるのだ。
それほどまでに凄まじい勢いで、細胞分裂が繰り返され、
生長する期間になるのだ。
薬や放射線などは、細胞分裂の時に最も強く細胞に影響を与える。
従って妊娠期間中は可能な限り薬を飲むべきではないし、
レントゲンを受けてはいけない。
だから、陣痛促進剤も可能な限り避けるべきである。
ましてや、医院の勤務の都合での施薬は断固拒否すべきだ。
生まれくる子供のために・・・正論だろう・・・
水沢さんは、高齢出産に該当する。
妊娠もしづらい体質でやっと受胎した。
彼は超多忙なエリート社員で出張が多く、
産婦になかなか付き添ってあげられない。
彼も出来れば、予定日にと出産を望む。
何せ、2ヶ月前から予定日に併せて休みを2日取れたのだから。
いやむしろ取ったのだ、無理やり。
恵子先生もなるべく陣痛促進剤を使わないように、
出来るだけの努力をした。
が、しかし、何せ彼女の年齢も気になる。
40近いのだ、当然初産、全てに対して、不利だ。
下手をすると、帝王切開も・・・がしかし、
彼女は出来れば自然分娩がいいと・・・
何せ、子宮口の開きも良くないなのだ。
そして肥厚も・・・
「水沢さん、どうです?」
田村恵子先生が少し呆れ顔で聞く。
「はあ・・・どうと言いますと・・?」
「だから、陣痛よ・・・痛みが定期的に・・・」
「いえ・・・少しは痛みありますが・・・」
「そうね、あなたを見ていると・・・」
「わかる・・わ!!」
「そうです・・ね・・・」
「まるで他人事みたい・・・かな?」
「内診しましょう・・!」
「あっ・・・はい!」
「うん・・・はいいいです!!」
困った顔の恵子先生、やはり・・・
そんな話の中、出産予定日を過ぎた。
まる2日も、もう決断だろう。
水沢さんには内服してから、陣痛の兆候が見えたが、
それ以上に定期的に陣痛時間の短縮が見られず、
体力かどんどん低下してきた。
もう限界だろう・・・
いま、分娩室の中。生食500mlの中に、
オキシトキシンが入った点滴が彼女の体内に、
当然分娩監視装置を付けて・・・
既にプロスタグランディンは内服している。
今は母体の体力が心配である。既に破水も・・・
「痛い、痛ぁー・・い・・・」
「やっとね!!」
「痛・・・、痛・・・痛いいい・・」
「はい、もっと頑張った!!」
「あう、痛い・・痛い・・痛い・・うう・・・」
・ ・!!・・・!!・・・・・!!・・・・・!!
悪戦苦闘の末、やっと無事2240gの女の子が無事生まれた。
その時既に水沢雄一は、はるか太平洋の雲の上。
結局彼はわが子の顔は勿論出産の現場にいなかった。
恵子先生、本当に苦労した。
二人の希望に出来るだけ沿う形で出産を終えた。
しかし、恵子先生かなりやばい、
ぎりぎりの状態に陥っていた。
「恵子先生・・・どうして?」
先生の傍にいる、看護師の矢沢 梨美はしきりに・・・
訴えるように・・・
そう、恵子先生実は予定が入っていたのだった。
彼と北海道に・・・2泊3日で・・
せっかく都合して・・やっとの事で・・
「いいわ・・平気よ!!」
「うそ、先生すう・・っ・・ごっく!」
「楽しみにしていたのに・・・!」
「大丈夫、次がある・・から・・!!」
「恵子先生、お兄さん達みたいに・・結婚できないわよ!!」
「それ・・・どう言う事?」
「恵子先生の、お兄さん****病院で夜間外来・・・でしょう??」
「彼らは、彼ら、 私は大丈夫よ・・」
「きっと・・彼!!」
「彼が・・・彼が何ですか!!!」
「だから・・寛大なのよ!!」
「うそ・・恵子先生携帯で・・・」
「携帯に頭下げていました・・けど!!」
「莉美さん、そんなに攻めないの!」
そう言って、恵子先生をかばう、助産婦の大川喜美。
彼女は相当優秀な助産婦だ。
基本的に産婦人科の、良い悪い、の評判は、
その産婦人科の助産婦の力が非常に大きい。
元来出産は、助産婦が大きな働きをする。
医者の出番は異常事態や、非常事態に備えていると言った、
考え方が古くからある。
最近は医師自らが主体となって行うこともあると思うが・・・
今日も患者重視の恵子先生、看護師の矢沢莉美を、
少しきつくにらみななら、
「次・・がんばるわ!!」
「そうですね・・・私も応援します。」
「そう言う、莉美さんも・・まだでしょ!!」
「それを、言われては・・・負けですね!」
「そうよ、二人とも頑張って!!」
最後は余裕の大川喜美が締めくくる。
みんな大笑いで・・・・
最近産婦人科希望の、いや産科だ。
産科希望の医者が非常に少ない。
何とか成らないものか・・・・
少し、出産に関して、陣痛促進剤、
○ 陣痛促進剤
陣痛促進剤とは、子宮収縮剤です。
陣痛が微弱だと判断されると、陣痛促進剤で陣痛を強めようということになります。
子宮を収縮させることによって、陣痛をおこしたり、強めたりする薬です。
陣痛促進剤にはプロスタグランディンという薬と、オキシトシンという薬があります。
プロスタグランディンには内服薬と、点滴で静脈内に少しずつ注入して使う注射薬の二種類があります。
オキシトシンは、もっぱら点滴で使います。お産後の子宮がゆるんでおこる、弛緩出血を止めるために使うこともあります。
そして、この二つの薬は、実は生体内でつくられている子宮収縮ホルモンなのです。
自然の陣痛は、自分の身体がつくるホルモンがおこしているのです。
しかし、このホルモンに対して、どんな妊娠週数の子宮も反応するかといえば、
そんなにうまく行かないのがこの世の中です。お産の準備が整った子宮のみが反応するのです。まさしく自然のしくみの巧みさですから・・・
なお、プロスタグランディンと、オキシトシンにはそれぞれ特徴があります。
プロスタグランディンには子宮口を柔らかくする作用がありますが、子宮収縮を強める作用はちょっと気まぐれです。
陣痛はおこします。が、その陣痛は強さや時間や間隔が不規則です。
それに対してオキシトシンは、規則的な陣痛をおこすことができますが、子宮口を柔らかくする作用はありません。
同時に使うと、陣痛が異常に強くなることがあり、危険なのです。
そこで、子宮口があまり開いていないときにはプロスタグランディンを、開いてきたらオキシトシンを使うという使い分けがされたりするのが一般的です。
陣痛促進剤にまつわる事故は、マスコミによく取りあげられています。
“陣痛促進剤の被害を考える・・・”などの活動に関する報道をご存じの方もいらっしゃるでしょう。
この会の活動などを通じ、促進剤の使用基準が改善された経緯もあります。
陣痛促進剤に関するマスコミ報道のためか、妊婦さんから促進剤に対する質問や、
「使わないで」という意見がときたま起こります。マスコミ報道の結果、お産に対して意識が高まることはいいことだと思います。
そして、あまりにも悲惨な事例があることも事実です。
しかしながら、極端な事例の報道のため、分娩と薬剤に対する恐怖、産科医療に対する不信が、必要以上にあおられている側面もあると思われます。
また、“陣痛促進剤の被害を考える・・”では文面に、薬の安全な使用法を求めた結果として、陣痛促進剤は、分娩監視装置を装着して使ってもらいましょうと・・・あります。
けれども、それではあらかじめ陣痛促進剤の使用を想定、肯定していることになってしまい、少し矛盾です。
陣痛促進剤はきわめてよく効く薬です。
要するに、使い方を誤れば、大変怖い薬です。
ですから、まず基本は使わないことです。
ですから、どのように使ってもらうかを知るよりも、まず、使わないでお産することを考える事が重要です。
○ 自然な陣痛促進法
お産が長引いてしまうことはあります。今度はそんなとき、どうするかを考えましょう。産婦さんが疲れてしまって、お産をする体力がないとき、陣痛は弱くなります。
疲れてしまった場合、意識して、積極的に休んだり、リラックスする事を頭においてください。
頑張りきれる体力を維持するため、飲まず食わずはいけませんよ。
口当たりのよいもの、食べたいものを少しでもいいから食べる。
水分補給も積極的に行っていいでしょう。
妊娠中控えていたケーキやジュースもお思い切って・・・。
自然な陣痛促進法に対しての、工夫も怠らない様にしてください。
まず第一に、重力は、お産の強い味方ですね。
ベッドに横になっていないで、起きあがってください。
旦那等につかまって、お相撲さんのそんきょの姿勢そして、
その状態から立ちあがってみると良いでしょう。
看護師さんたちは全開大になっている産婦さんと、早足の散歩に出かけることも行う。
マンションの階段を上り下りすることもあります。
歩いている最中に陣痛が来たら、立ち止まって逃します。
もちろん、そんなときはそばにいて、身体を支えてさしあげます。
そして、お風呂は大変有効です。
ぬる目でも熱目でも、気持ちがいいと感じる温度のお風呂に、ゆっくりとつかるのが良い。
気に入ったアロマ・オイルや、ラベンダーなどの香りがリラックスにはおすすめです。
お風呂では陣痛の痛みが和らぎます。
お風呂から上がった後に、陣痛が強くなる事が多くあります。
マッサージも有効です。
そして、三陰交などのつぼを押したり、アロマテラピー・マッサージをしたり、イトオ・テルミーをかけたりと、ありとあらゆる工夫を試みます。
そして、気持ちのいいものが、その人に適したものです。
是非、お試しください。
やむなく陣痛促進剤を使う場合
残念ながら、やむなく陣痛促進剤の力を借りることもあります。
大きく分けて、理由はふたつになります。
ひとつはお産が非常に長引いた場合です。
たとえば子宮口が全開大、つまり10センチまで全部開いたのち、なお1日以上経ったりした場合です。
産科学の教科書には、全開大になってから、初産婦さんなら2時問、経産婦さんは1時間以内に生まれなければ、異常と書いてあります。
けれども、この程度のことは非常によくおこりますので、異常とはいえないと私は考えて良いでしょう。
子宮口が全開大になってしまえば、後は産道を下がって出て来るだけです。
出て来ないときは陣痛が弱いか、産道が固いか、狭いか、又は赤ちゃんが少し大き目か、もしくは回旋を少し間違えたかです。
あるいは産道が固かったり狭かったりするとき、無理やり強い陣痛で出て来ると、
産道を大きく傷つけてしまうことになります。
こんな時自然のしくみは、陣痛を弱くします。
そして、ゆっくりと柔らかく、赤ちゃんの頭で産道を伸ばし、傷つけないようにするのがよいです。
どうして産道が固かったり狭かったり、あるいは赤ちゃんが大きくなりすぎたりする理由と言えば、
それは、妊娠中の運動が足らなかったり、太りすぎて産道に脂肪がついたり、赤ちゃんに糖分がゆきすぎたりしたときです。
ですから、身長が低い、身体が固い、年齢が高いなど、産婦さんのもともとの身体条件はありますが、それでも予防のコツは、やはり安産法に大きな比重が・・・。
全開大後、時間がかかっても、赤ちゃんの心音がよければ、いろいろな工夫をしながら待ちます。
しかしながら、さらに非常に長引いて一日以上経ったような場合、
そして、産婦さんもパートナーもほとほと疲れ果ててしまった時、
あと少しのところに頭があって、陣痛を少しだけ薬で強くすれば、
確実に生まれると見込める時、産婦さんとよく話し合ったうえで、
促進剤を使う事があります。
満を持して使うとき、陣痛促進剤は少量でも有効です。
そこまでがんばったあとなので、産む人も敗北感等は決して感じないでしょう。
分娩が遷延していても、子宮口の開きがまだまだ、例えば5センチとか、
8センチという時は、陣痛開始からすでに3日経っているなど、相当に時間がかかっていても、促進剤の使用は躊躇します。
なぜなら、子宮口が固くて開かないのに、陣痛だけむやみに強めると、
間に挟まった赤ちゃんが、苦しくなってしまうことを恐れる為です。
こういった時は、実は陣痛が弱いのです。
そしてこれまでお話しの様に、弱い陣痛しかおこらないのは、それなりの理由があって、自然の安全確保機構でもあるのです。
そこで、破水していない状態なら、産婦さんや家族とよくお話し合いをしながら、
待つことが賢明でしょう。
もちろん自然な陣痛促進法は、思いつく限り試みることは、いうまでもありません。
そして、第二の理由は破水です。
いったん破水してしまうと、赤ちゃんのいる羊水腔は、外界と交通しているわけですから、赤ちゃんに感染がおこってしまう危険が出て来ます。
破水そのものが、感染のため卵膜が弱くなって、起こっている事もあります。
破水からお産が始まり、抗生物質などで感染を防ぐ工夫をしながら2日、
3日と待っていても、なお陣痛が来てくれない時は本当に困ります。
この様な場合、陣痛が来ない遠因が、お産に対する緊張や不安や、
葛藤にあることも多いと思われます。
そこで自然な陣痛誘発法を試みます。
ただしこの時、お風呂はまずいです。感染の原因になるからです。
運動不足のため、子宮口がお産に対する準備ができていない時も、
破水はしても陣痛はなかなかやって来てくれません。
やはり安産法が一番大切です。
感染して赤ちゃんの状態が悪くなってから、帝王切開するというわけにはいきません。自然な誘発法がうまく行かない時、慎重にタイミングを見計らって、陣痛誘発に踏み切ります。
このときも可能な限り少ない量で試みます。そして、見聞、実行していた量と比べ、非常に少ない量です。
機が熟してから使うとき、陣痛促進剤が非常によく効く薬であることを実感出来ます。
以上のことから、陣痛促進剤を使ったほうがいいのは、まれなケースです。
上手に使うことにより、吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開を避けることができると考えています。けれど読者の方はそんなことを考える前に、どうか安産法を実行してください・・・
田村恵子先生は(田村先生(夜間外来))の妹で、(タムラクンの恋)の姉という設定です。
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1081
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr