Rap1007-意識不明・・・心肺停止! 2-1
Rap1007タムラ先生夜間外来総合
Rap1007-意識不明・・・心肺停止! 2-1
「お姉さん、お酒10本、あとビール6本」
「ハァーィ・・」
「こっちも、ビール3本!」
「あっ、それに、酎ハイ3杯!」
「ハァーィ」半ばやけになっている店員
「またこの季節が来た、今年は大丈夫かな!」
みんな、受験戦争という難関を潜り抜け、
おらが春を満喫している。
この都心の近くにある、某有名大学の学生たち。
これからの学生生活、勉学、部活に夢を
膨らませている学生たちの群れ。
全国から集まった学生たち、
方言もあちらこちらのテーブルで飛び出す。
ここは、学生たちの溜まるJR新大久保近くの安酒場、
部活の新入生歓迎会の風景の1コマ!
人生論や、恋人の事や、恋愛の事、これから先の生き方・・・
みんなが真剣に、熱く語り明かしている。
そんな連中の中に不埒な事を考える、者どもがいる、
卒業を控えた4年生たちや3年生たちだ。
覚めた目で男の4年生グループは、少し酔いの回った新人の
女の娘たちに目が向けられている。
それはまるで若き狼が、獲物を見るような眼で。
こんな邪まな、考えを持った学生はほとんど稀、
多くの学生たちは真面目に今後を語り明かしていだ。
がむしゃらに飲み続ける、男女7~8人のグループ、
話の会話に熱がこもる。
その一角は、なんとなく男の方が押されている感じ。
それは正しく、今時の世評を感じさせる風景だ。
「おい、もう一杯!」
コップに注がれる酒がゆらゆら揺れて今にも零れそう。
「あーおいしい!」
コップに並々と入った日本酒!
「一気飲み!」
「うぇーす!」
「大丈夫か」
「大丈夫です」
「やめとけ! あの娘・・・、アルコール飲んだ事あるのか?」
「大丈夫 ス よ !」
「なに? あたしの注いだお酒、飲めないって言うの」
「あんた!」
「それでも男!」
「だらしないわねー」
頭を叩かれる
「痛い・・・」
「先輩、暴力反対」
「あー、酔った」
「もう歩けない」
「トイレに行けないよー!」
這って行くのが精一杯!
別のグループでは、3年と4年の少し遊び慣れた
女子大生もこんな言葉を交わしている。
「ねえ、彼イケテない?」
「そう、私、あの子の方がいいな!」
「誰の事、言っているの?」
そこへ割り込むように、話に入って来て、
少しぎらついた目で、寄ってくる4年の大川勝、
彼は今、話しかけた娘たちに興味津々!
「あんたじゃないわ?」
その、大川勝を邪険に、冷たく、かわす。
かわした二人は新人に目を着けていた。
別なグループで品定めをする、覚めた恵子と恵美子、
もうアルコールはストップ。
今日の獲物を物色する、4年生、毎年恒例の
新人歓迎会はボーイハント・・・・?
遊び慣れたヤツらはアルコールも程々に、
若い“いけ面”を物色している。
浮かれた気持ちで、自分を過信してしまう。
アルコールの限度を甘く見て!
特に新入生は・・・・、自分を解放しすぎ?
と言うか、怖さに無関心
アルコールは始め、自分に見方 途中でけん制してくれるが、
最後は大敵となる。
まして、こんな雰囲気で・・・・、
こんな大都会で・・・・
少しずつ、一人一人の箍が外れて行く!
それは、田舎では感じた事のない雰囲気!
いつの間にか、この雰囲気に飲み込まれてしまう!
「おい、大丈夫か!」
「・・・・」
「ねえ、大丈夫?」
「・・・うーん・・・」
「ねえーてば・・・」
「・・・・・ん!」
「おい、やばくねー」
「息、してん、のかー?」
「息はしてる、みたいよ!」
「その辺に寝かせて置けよ!」
近くで、場所をわきまえず、嘔吐している者も二人ほどいる。
2割元気なヤツ、6割壊滅寸前、1割ほぼ壊滅
残りは別の世界へ とにかくやばい現状
勢いだけで飲んだやつ、飲まされたやつ、飲ましたヤツ
思惑のあった奴、思惑に飲まれた奴 それぞれの結末は・・・・
「ねぇ・・・!」
「まだ、そのままだよ、あの新入生!」
「恵子、やばくない!」
獲物獲得に失敗した恵美子が、横たわったままの新入生、見下ろして!
「お絞り、濡らして来て!」
「水も!」
「どうしよう?」
「どうしよう?!」
暫らく二人は、その新入生を看病(見守る)していた。
歓迎会も終わりは、何時もほとんどバラバラ散会。
やっと、起された新入生ほとんど意識がない。
誰かが救急車を呼んだらしい、サイレンの音が近づく・・・・
「ピーポー」
「ピーポー・・・・」
けたたましいサイレンの音が、こだまする。
静まり返った夜を切り裂くようだ。
「はい救急病棟、え・・ また・・!」
「意識がないの? 急性アルコール中毒!」
「なに、またか・・・」
忌々しげな感じの、タムラ先生の返事が、麗奈の耳に残る!
「受け入れ OKです。」
「8分到着予定です」
「はい、わかりました!」
いつものサイレン もう慣れてしまった“いつもの” 音が聞こえて来る。
サイレンが止まる。
近隣の住民の事を考えてサイレンは、早めに止める。
心配なので玄関まで出迎える、麗奈!
救急隊員が、救急車からストレッチャーに移す。
麗奈は、素早くバイタルのチェック、
心配そうな同乗の恵子と恵美子、
「あたしたちって、何か、いつもこうね!」
「そうね、そんな役割だわ」
「ねらっていた彼は、早々と別のグループと場所を変えて何処かに!」
「所詮、私たち、いい娘なのよ!」
そんな事を小声でしゃべりながら
遅れて降りる、彼のバックを持って。
麗奈、一緒に押しながら急がせる。
“急がないと、早く・・・”心で叫ぶ
そこへ、タムラ先生、やはり思う事は同じのようだ。
首に指を当て、脈をとりながら
「早く運べ!」
恵子と恵美子は状況の重大さに青ざめる。
「・・・」黙って頷く今井麗奈
みんな無口になり、ほとんどマラソン状態
救急隊員も、緊張の度合いが伝わる。
何とタムラ先生ストレッチャーにまたがり心マッサージ
麗奈は機敏に指示を出す、
「I.C.U.に!」重いストレッチャーが集中治療室の前に、
タムラ先生ストレッチャーから降りて、カウンターショックに近づく。
事態を察知した、別の残務整理をしていた医師が既に、チャージ済み。
両手に電極を胸壁の中央やや右上(右鎖骨直下)と心尖部に当て
「みんな離れろ!」
一斉に離れる、カウンターショック 100J
放電!
学生の体が海老のように跳ねる。心電図、フラット!
感覚をあけて、再度100J 放電 心電図に波形
よし、気管挿管 気道確保
麗奈は血管確保、生食単実で待機。
「麗奈、もう一本血管確保、ソリタT1 全開」
「バルーンだ」下半身が露になったそこに、
バルーンカテーテル14Fr設置完了。
脈拍、モニター(心電図)尿量50ml ほぼ安全域 危機は脱出か?
タムラ先生、後の指示をカルテに記入、麗奈に手渡し、ICUを後にする。
いやな思い出が彼の胸に蘇る。そう、彼の昔の記憶が!!
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1007
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr