Rap1067-張り切り過ぎたOL 腹痛 胆嚢炎・・?2-2
Rap1067-タムラ先生夜間外来総合
Rap1067-張り切り過ぎたOL 腹痛 胆嚢炎・・?2-2
入院して直ぐに、ペンタジン30mg筋注をした。
もう既に何度もこの病院を訪れていた。
痛みが酷く、発作状態が現れた時はいつでも来ていい事になっていた。
当然タムラ先生の配慮だ。
この所暫くの間、来院はきわめて少なかった。
嵐の前の静けさだったのだろう。
患者が運ばれて来たとき、ついに来たかといった感じだ。
「痛みはどうですか?」
「はい、少し痛み楽になりました!」
「そうですか!」
「お家族は・・・居ないんでしたよね!」
「それでは、手術承諾書に記入してください!」
「ねえ・・、タムラ先生、私これで・・・お別れですかね!」
「いいえ、そんな事はありません・・よ!」
「そう・・・ありがとう・・・ね!」
傍で聞いていた後輩の佐藤雄介は、かなり動揺していた。
今までの流れだと、単純な胆嚢のオペのはずが・・・
・・・・どう言う事なんだ!
タムラ先生が病室から離れて行くのを追いかけて、
「先生、タムラ先生・・・あのう・・川村順子は・・?」
「君は・・・?」
「ハイ 後輩の佐藤雄介と言います。」
「失礼だが・・・どんな関係なんですか?」
「今は・・・ただの先輩と後輩です!」
「そうか、恋人では・・・ないんだな!」
「はい、今のところは・・・」
「君は順子君が、天蓋孤独なのは知ってるかい?」
「いいえ・・・、そうだったんですか?」
「だから、彼女とは本気で話している!」
「はい!」
「病状の事も・・・その他あらゆる事も、だ!」
「彼女、色々あったんですね!」
「今の君と彼女の関係では・・・、今現在」
「胆石の痛みでこれから胆石の摘手術を行う。それしか言えん!」
「で、胆石の摘出手術は成功するのですね?」
「それは、大丈夫だ・・・!」
「先生、彼女・・他にも大きな病気が・・・・」
「うん、それは・・・やはり・・彼女の了解が必要だ!」
「そうですか・・・!
「少し、彼女と話してみたらどうだ?」
「ハイ・・そうして見ます!」
「彼女は非常に根性の座った、できた人だ!」
緊急オペに、全てのスタッフか一斉に動き出した。
チームタムラが総力を結集して、今回の胆石の摘出手術を行う。
「先生、大丈夫ですかね?」
タムラ先生が術衣に着替えた後、
麗奈がそっと寄り添ったそして耳打ち
「大丈夫だ、心配するな!!」
タムラ先生は自分に言い聞かせるように・・・
小さく呟いた。
エコー検査で石の大きさ、数もほぼつかんでいる。
黄疸症状はそれほど強くない、だが決して肝機能が良いとはいえない。
やはり、この患者には腹腔鏡での摘出は無理だろう。
「それではこれより開腹による、胆嚢内胆石摘出手術を行う!」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」「お願いします!」
チームタムラの面々がそれぞれ挨拶を交わす。
「麻酔OKです。」
「よし、始める!」
「メス!」
「はい!」
「電メス!」
「・・!・・!」無言で、手と手・・・
「クーパー!」
「・・!・・!」
今日は麗奈が器械出しを担当。麻酔は橋本康介が担当、
二番手もタムラ先生の後輩が
そして、看護師は麗奈、葵、愛美のいつものメンバーだ。
「かなり炎症が強いな!」
「胆嚢の壁が厚い・・メスが切れないぞ!」
「すいません!」
切れないメスが、外に投げ捨てられた。
タムラ先生今日は荒れてるのか・・?
「メス・・・・、切れるだろうな!」
「はい、切れます!」
麗奈のハッタリだ。
「先生、胆嚢の周りに癒着が・・!」
「分ってる、しょうがないのだ!」
「先生・・・この患者・・・!」
「そうだ・・、以前腹腔鏡下でオペを行っている。」
「そうだったんですか?」
「君にはあえて伏せておいたが、・・・これは経験だ!」
「そう言う事ですか!」
「子宮内膜症で腹腔内鏡下のオペをしたんだ!」
「それで、かなりきつい状況を経験した!」
「そうだ、彼女は・・・抵抗がある!」
「腹腔内鏡下の手術には抵抗がある!」
「そうだったんですか?」
「だから彼女、腹腔鏡内の検査のときに・・・・?」
「怖かったんですね!」
「もうこの状態では全力を尽くすのみだ!」
「分りました!」
「よし、みんな全力を尽くすぞ!」
「はい!」
胆嚢結石の症状と診断
胆嚢結石は胆嚢内にのみ存在する胆石で、胆嚢炎を起こしやすいので注意が必要です。
症状としては腹痛(溝落ちや右脇腹の痛み)、発熱、悪心、嘔吐等で発症し、
典型的な例では「ひどい刺し込みで冷や汗が出て、痛みのために身体をエビのようにして我慢し、
2、3回吐きました」と表現される患者さんが多くいらっしゃいます。
食後に吐き気や嘔吐を伴うことが多く、胃が悪いのではないかと胃の検査を受けて,
異常なしと診断される場合も認められます。
胆石症の種類
一般に胆石症は、胆石の存在する部位により次の3つに分けられます。
●胆嚢結石
胆嚢内にのみ胆石が認められるもの。
●総胆管結石
総胆管のなかに結石が認められるもの。(胆嚢の胆石の有無は問わない)
●肝内結石
肝臓内の胆管に胆石が認められるもの。
検査の方法は?
結石の存在診断は、ほとんど超音波検査でできます。
その後、精査といって胆石症を詳しく調べるCT検査、
MRI検査(この2つの検査には苦痛はほとんどありません)、
ERCP検査(カメラを用いる検査で苦痛は伴いますが情報量の多い検査)
等が必要になりますが、検査計画は患者さんの状態に応じて組まれます。
いろいろな検査を駆使するのは、胆嚢結石の治療方針の決定に用いるだけでなく、
胆嚢癌、膵臓癌、胆管癌等の悪性疾患を見落とさないためでもあります。
治療のいろいろ
早く対処したい総胆管結石
先にご紹介した3つの胆石症のなかでも、総胆管結石は治療を必要とする病態です。
胆石が胆管の出口にかん頓し(ふさいでしまう状態・右図参照)胆汁の流れが中断すると、
「閉塞性黄疸」という危険な状態が発生します。
さらに細菌感染が加わると「閉塞性化膿性胆管炎」に進展し、
治療が遅れると生命の危機すら生じます。
そこで昔は緊急手術をしていましたが、近年はPTBD※、ERBD※という手段で,
緊急に黄疸を改善したのち、カメラを用いて結石を摘出する治療をおこなっています。
胆嚢結石が総胆管結石の原因と診断されるケースには、
そのあと胆嚢結石の治療をおこないます。
※PTBD:体の外から超音波を用いて胆管に針を射してチューブを挿入する。
※ERBD:カメラを用いて胆管にチューブを挿入する。
症状によって違う胆嚢結石の治療
一方、胆嚢結石には無症状例といって、胆石は認められるものの症状のない人も多くいて、
そういう場合、ほとんどは経過を見ています。
ふつう治療の対象になるのは、なんらかの症状がある人です。
治療としては内服薬による治療、結石破砕による治療、
手術による治療の3つが実施されてきました。
しかし、内服薬による治療は対象となる胆石にかなり制限があること、
治療効果が不充分であることにより、現在は一部でしかおこなっていません。
結石破砕による治療も、胆石症の場合は副作用があるため現在はほとんど用いません。
腹腔鏡手術のメリット、デメリット
現在、胆嚢結石は手術のなかでも腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術が主流で、
従来の開腹による胆嚢摘出術にとってかわろうとしています。
それは右表をご参照のとおり、手術の傷が小さい、術後の痛みが少ない、
その結果入院期間が短くなり社会復帰が早くなるという利点があるからです。
しかし、写真のようにマジックハンドのような器械を用いるため、
手術にも一部限界があります。
腹腔鏡手術の遂行が無理と判断した時には、
躊躇なく開腹手術に変更して対応します。
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1067
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr