Rap1261-どうして、こんな若さで?―1
Rap1261-タムラ先生夜間外来総合
Rap1261-どうして、こんな若さで?―1
智子はパートの仕事を終え、近くのスーパーで夕食の買い物を終えて、
玄関で靴を脱ぎ居間に行くと、珍しく留守電を知らせるランプがチカチカ・・・・
多少の戸惑いの中再生ボタンを押す!
“有子さんが両足首を骨折して入院しました!”
と、いきなりのメッセージ!
留守番電話からのきついメッセージ!
智子は驚いた!
そして目に入った着信番号は03XXX・・・
それは東京からのメッセージ!
まるで心当たりの無い番号だ!
何か胸騒ぎが・・・・・智子は電話機に駆け寄った。
まさか・・・と思い、再度再生ボタンを押してメッセージを、
・・・・・ん・・病院 入院!?
もう一度聞いて見た。
それは間違いなかった!
無機質な男性の声で、先ほどの内容と同じだった。
事務的で・・・・、その事の内容は有子が両足首を骨折して入院したと・・・・
後はその病院の名前と電話番号だけ!
“以上です! よろしくお願いします!”と言っていた。
何よ?急に・・・・・よろしくと言われたって、
私にも都合が・・・・・
病院の名前と電話番号をメモ帳に走り書きして思った。
何よ・・・・もう少し詳しく・・・・・智子は少しイラッとした。
それでも、その番号に電話して、
どうして足首を両方骨折したのか?
それで、今はどういう状況なのかを聞いてみた。
でないと・・・・その先が進まない・・・
どっちみち面倒な事に違いないが!?
東京までは、新幹線若しくは飛行機でも、優に1日はかかる。
日帰りではきつい。
チケットの手配や、最低でも4、5日仕事を休まなければならない事を考え、
智子は軽く舌打ちした。
だが・・・・、智子は行かねばなるまいと・・・・・
詳細は分からないが、両足首を骨折したというのは、
間違いなく智子の娘なのだ!
例え血は繋がって無くても・・・・・・
予想した通り、夫に相談しても目を合わさないで、
“お前行ってきてくれ!”の一言だった。
自分の意思で東京へ行くのは心は弾むが、
そんな用事!?で東京へ行くのは、心はまるで弾まなかった。
翌朝一番の飛行機で、智子は東京に向かった。
昨日、病院に電話をしてもう少し突っ込んで聞いてみたが、
事務員はおらずに、宿直の人が出て・・・・・・
それも、忙しそうにしていてそれ以上の詳しい事は聞けなかった。
「単純な骨折ですので・・・・大丈夫ですよ!」
それだけ言うと、一方的に電話を切られてしまった。
どうやら急患の受付をしていたらしく・・・・
ターミナルビルで、昨日家族が入院したので、数日間休みたいと、
会社に電話を入れた。
すると、電話に出た智子よりかなり若い社員の女の子、
急に冷めた声で、
「あのう・・・・何日かって、何日ですか?」
と迷惑そうに言った。
最近一人辞めたばかりで、人手不足は知っている!
彼女が急に忙しくなるからそれも分かるが・・・・・
けれど、仮にも娘が入院したのだから・・・・・・
こんな時に人格が出る!
それとも、一回り近く年下の女の子はみんなそうなのか?
こっちだって、行きたくて行くんじゃ無いわよ!
そう言いたいが、それも大人気ない。
それにしても、多少は気遣って
「お大事に!」ぐらい言ってくれても・・・・・・・
罰は当たらないのではないだろうか。
丁度娘と同年齢ぐらいだけど・・・・
もっとイラつくのは、夫の反応だった!
まがいなりにも、血の繋がった実の娘が入院したというのに、
自ら会社を休もうという発想はまるで無い!
智子はふと無常を感じた!
“私は一体、誰の何なの!?”
“会社の上司の雑用係?”
“ 夫の家政婦? 掃除婦?”
そして、今回のように、こういう時だけ母親にさせられる。
意思に反して・・・・・
でもそれは・・・・・、自分で望んだ事だったはず!?
そうよ! 誰に強制されたわけでもない!
智子は東京へ向かう飛行機の中で、今にも口から溢れ出そうな不満を、
機内の床に上空の窓に吐き出した。
羽田からモノレールJRと乗り継いで、
着いたその病院は、かなり大きな総合病院だった。
受付で記帳して病室を聞き、智子はエレベーターで6階に向かった。
625号室、4人部屋の入口を恐る恐るノックした。
最近は病室に患者名を記していない。
最近はそう言う傾向にある・・・・・・プライバシー・・・とかで!
病室のドアを開け、中に入ると窓際のベッドに、
彼女の横顔が・・・・・・
随分と垢抜けて、綺麗に全体にすらりと・・・・でも彼女だ!
あれ・・・・ベッド脇に、スーツを着た中年の男性が!?
うん・・・昨日、留守番電話にメッセージを入れた人?
それとも・・・・・でも何だか変?
多分智子の想像とは違う感じ!
男は智子の方を振り向くと、ぎごちなく会釈をした。
娘も智子の存在に気づき、ちらりと智子の顔を見ただけで、
黙ってうつむいたまま!
やたらその場の雰囲気は重苦しかった。
が・・・・・口火を切ったのはその男性だった!
「お友達・・・・・ですか?」
その男性は、何故か後ろめたいものがあるような聞き方をした。
「いいえ! 母親です!!」
はっとした様子で、男は智子の今の台詞に目を見張る。
躊躇い無く智子は言う。
「私は後妻なので、彼女と歳が近いんです!」
彼は多少の驚きの顔で、気まずそうに領いた。
義理の娘の有子は24歳で、智子は35歳!
11歳しか智子達は違わないのだから・・・・
それに智子は、童顔でわりと若く見られる方なので、
確かに“お友達!”でも通るかもしれない。
そして、今の有子はすっきりして姉妹でも通るかも・・・・
それ程有子は垢抜けて、有子の実家から東京へ就職に出た時とは大違いだ。
そして智子も、それなりに今でも美人に属すると言える。
年齢の事で以前彼女にガツンと言われた事を思い出した!
それは、智子がそれしか違わないと思っていて、
彼女の父親と結婚した時にこんなやり取りを思い出した。
「11歳しか違わないのだから・・・・・」
「これから仲良くしましょうね!」
と言った智子に向かってマジで馬鹿にした様に彼女は言った。
“11も違うじゃない!”って!
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来総合 R1261
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr