Rap1259-うそ、バスが暴走・・・!心臓発作?-4
Rap1259-タムラ先生夜間外来総合
Rap1259-うそ、バスが暴走・・・!心臓発作?-4
先程から移動中に妊婦の診察を、恵子先生それに看護師2名があたり、
全身と言うか頭部、全体状況をタムラ先生が・・・・・
現状を把握中だ。
「これは・・・・」
「緊急帝王切開・・・!?」
「それは・・・患者の一般状態からして・・・・・」
「おい、採血急いで!」
「エコー!」
「デファンスが・・・・」
「可能か・・・・!」
「・・・・・・!!」
その患者は何と妊娠9ヶ月らしい・・・・
母子共に危険が・・・・命の危機が迫り来る!
「やるしかないでしょう!」
「術式は・・・!?」
「もちろん、腹式帝王切開!」
ここは、恵子先生の独断場だ。
「麻酔、早田先生頼む!」
早田先生、右親指を突き上げて、OKサインを・・・・
まだ、心マの患者の余韻が醒めきらずハイテンションが続く。
勿論若さ、それに本場ERでの実戦が今発揮している。
緊急事態に、同時に重症患者の2人3人の掛け持ちも、
行って来た経験が余裕すら感じさせる。
看護師も一級のオペ看たちの集まりだ、Drのフォローも抜かりない。
そして、先程の心マで開胸、そして無事閉胸を終えた患者には、
麗奈がぴったりマークしている。
さて、恵子先生が行おうとしている術式、腹式帝王切開だが、
現在最も一般的な方法であり、今回は患者の今の体調、
コンデションを総合判断して決めた。
手術時間は通常1時間弱、長くても大抵2時間程度である。
恵子先生ならこの悪状況でもおそらく1時間以内で処理出来るだろう。
そうする事、すなわち一刻も早く正確に終らせないと、母子共に危険だ。
その後は、小児科医に胎児は委ねられる。
これも、恵子先生の気持ちを心強くしている。
まあ、一般的に帝王切開は産婦人科医と、麻酔担当の医師で行われる。
そこに、小児科医が傍にいる!
それも未熟児等に対処できるスペシャリストが傍にいる。
これは、妊婦に集中出来る事を意味する。
恵子先生の第一声が、狭いが設備の充実した車内に、
一瞬に緊張を走らせる。
「これより、緊急腹式帝王切開を始めます!」
「よろしく!」
「お願いします!」
「お願いします!」
メスを持った恵子先生、妊婦の皮膚切開を・・・・今まさに行っている。
縦切開(正中切開)を選択した。
緊急帝王切開においては通常縦切開である。
最近は、“横切開”が多くなっている。
現在では美容的観点より“横切開”が多くなっている。
何故なら、“横切開”は、皮膚割線に一致していることと、
恥骨結合上縁の陰毛の上端辺りを切開するため、
手術痕が目立ちにくいのが大きな理由だ。
若い女性はビキニ着用も視野に入れた妊婦が多いのだ。
縦切開は若干手術操作が簡便であり、
緊急帝王切開においては通常縦切開である。
皮下組織、筋膜、そして腹膜の切開を鮮やかに行う姿は、
正しく芸術的なメス裁きだ。
次に脂肪組織を切開、腹直筋鞘前葉を露出させた。
切開後、白線と呼ばれる腹直筋 筋膜中央に位置する、
筋膜組織から腹直筋を解離し腹膜を露出した。
一般的に腹膜内帝王切開の場合、腹膜縦切開にて腹腔に入り、
膀胱・子宮窩腹膜を切開した後に膀胱を下方に剥離し、
子宮下部を十分に露出させる。
恵子先生の鮮やかな手の動き、無駄のない動きに一瞬見とれる、
早田・タムラ両Drそれに看護師達。
大体において、腹膜外帝王切開の場合、腹膜切開をせずに膀胱を剥離する。
「はい、それでは、子宮筋切開に入ります!」
何だか、帝切等無縁と思っていたタムラ先生に解説を加えている様だ。
恵子先生、子宮頚部のやや上を縦切開する。
縦切開(古典的子宮体部切開)は、
帝王切開手術後の妊娠で「子宮破裂」を生じやすい。
そして、一般的に縦切開は前壁付着前置胎盤の場合、
胎盤付着部を避けるときや、妊娠30週未満の早期産のとき等に行われる。
しかし、今それは関係ない。
一刻も早くそして安全にが、恵子先生に課せられている課題である。
今、まさに胎児娩出段階の恵子先生、細くしなやかな長い指に薄い手袋をはめ、
その手で胎児を保持し、胎児が頭位であったので、子宮底部を押す形で取り出した。
また胎児が骨盤位であれば、臀部からゆっくりと引き出していく。
臍帯を結紮して血流を止め、速やかに児を緊急手術室内で、
待機していた小児科医などに受け渡した。
どうやら、胎児も無事のようだ。
恵子先生、そのまま間をおかず、子宮内容物除去に取り掛かる。
胎盤を含めた子宮内容物を取り除く。
慣れた手つきだ。
子宮切開、胎児娩出、子宮内容除去の間に、
子宮内より大量の出血が生じる。
まあ、一般的に羊水量も含めて1~2L程度だが、
今回の妊婦既に車との接触衝突により、
羊水、血液はそれの半分位だ。
感染症に充分注意して既に点滴内に抗生剤はピギーで側管から、
必要量は送り込まれている。
胎児を摘出した後にさらにそれ以上の抗生剤を補った。
そして、子宮収縮剤である、オキシトシンを注射する。
多くの場合は徐々に子宮が収縮して固くなり、
子宮からの出血は止まってくるが、
この様な場合子宮の収縮が生じず、出血が継続する。
止血剤もアドナ、トランサミンも点滴に追加した。
そして、恵子先生いよいよ子宮筋縫合に入る。
そろそろ、終わりが近づく。
これまでに経過した時間は38分、これは異常に早いそして正確だ。
妊婦の体力の消耗を極力抑えるために全力投球だった。
恵子先生、筋層を2層縫合する。
その後、膀胱子宮窩腹膜を縫合、閉鎖となった。
パーフェクトだ、そして赤ん坊の泣き声も聞こえて来ていた。
体重1..8キロ女の子だった。
チアノーゼ、黄疸も少し酷いか・・・・・
さあ、恵子先生最後の仕上げ、術野をくまなく見渡し止血確認、
そして腹腔内洗浄だ。
子宮の縫合を終了し、十分な止血を確認する。
その目は鋭い!
マスク越しの端正な顔立ちやはりタムラ先生に面影を見る。
麗奈に負けないくらいの美人だ。
そして麗奈以上に勝るのは大人の色気か・・・・・
腹腔内を温生食で十分に洗浄し、子宮に癒着防止吸収性バリア、
セプラフィルム、インターシードを貼付する。
これは、高価であるが腹膜癒着を防止する上で有効だ。
本当に、この緊急車両凄い。
何でも揃っていた。
と、言うか出動前に点検時必要な器材の、補充もきちんと行っていた。
勿論産婦人科担当の看護師の抜かりなさだ。
「さあ、後は腹膜、皮下組織、皮膚縫合で終わりです!」
今回はタムラ先生、妹の恵子先生の鮮やかなメス捌きに、
敬服するのであった。
他の看護師達も同感だろう。
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来総合 R1259
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr