Rap1238-人工授精・・・・!! -3
Rap1238-タムラ先生夜間外来総合
Rap1238-人工授精・・・・!! -3
「では、嘉納さん・・・これに採精して来て下さい!」
わざと、少し感情を抜きに・・・・、
看護師が容器を三郎に手渡した。
そうだよね、これから先の彼の行動を考えると・・・
「・・・・・・はい!」
三郎も手渡された容器を無造作に受け取る。
一方友美は、既にベッドで不安そうに目を閉じ、
これからの処置をじっと待っている。
それは、三郎の精子を精子調整法で、
一般男子と同じような濃度にする。
その方法で濃度を上げた三郎の精子を、
授精針あるいは授精用カテーテルをつけた、
ツベルクリン・シリンジに精子浮遊液、
0.2~0.4ミリリットルを吸引し、
それを、友美の子宮腔内に注入する。
そう、AIH法で、高度の乏精子症および、
精子無力症の患者に行う処置だ。
すなわち、彼の精子を単に注入するだけでは、
大きな限界がある。
そのため、そんな患者には精子調整法および、
授精法に関する研究が、精力的に行われている。
その代表的な精子調整法は、
(1)スウィムアップ法 Swim-up method、
(2)単層パーコール法、
(3)多層パーコール法、
(4)パーコール攪拌密度勾配法、
(5)パーコール・クッション法などである。
スウィムアップ法は、精液を培養液で希釈して遠心分離し、
精子の含まれる沈殿上に新たに培養液を層積し静置する。
運動能のある精子は培養液中に泳ぎ上がってくるため、
沈殿に近い培養液を採取してAIHに供する。
そして、(2)~(5)は、密度勾配担体であるパーコール
(コロイド状シリカをポリビニールピロリドンでコーティングした粒子)を、
用いた遠心分離法である。
単層パーコール法は精子の濃縮を主目的としており、
簡便であるが、精液中の細菌、他細胞の除去が、
不完全であるという欠点をもつ。
多層パーコール法およびパーコール攪拌密度勾配法は、
前進運動精子を選択的に分離・濃縮し得るため、
精子無力症のAIHに適している。
パーコールを用いた密度勾配遠心分離法は、
正常形態を有する運動良好精子を、
細菌や他細胞の混入なしに短時間で、
簡便に精漿より分離できるだけでなく、
その精子は、スウィムアップ法により回収された精子よりも、
高い受精能を有しており、精子調整法の条件のほとんどを満たしている。
パーコール・クッション法は、希釈して粘調度を低下させた精液下に、
少量(0.1ミリリットル)の80%パーコールを導入し遠心分離するもので、
乏精子症に適している。
今回嘉納夫婦が挑戦するのは、(5)のパーコール・クッション法である。
こんな夫婦に何とか子供を授かって欲しいものだ。
担当はタムラ先生の妹、恵子先生だ。
事前に恵子先生、友美に今度の精子移植法について、
しっかり時間をかけて話してある。
どんな時も患者は不安がいっぱい、いいや! 不安そのものだ。
そんな友美に恵子先生、夫の三郎より半日早めに入院させて、
じっくり不安をすっかり取り除く様に、時間をかけて説明してあげてある。
この様な状況では、半分以上が精神的な安定が、精子移植法の成否を左右する。
先ほどの様な精子調整法をじっくり、友美が理解するまで話してあげた。
そして、夫の精子の少ない状況を攻めない友美を褒めた。
そう、精子を供給する側にも精神的に多くダメージを受けている夫に、
これ以上の不安は厳禁だから・・・・
そして、恵子先生は今回の精子移植法に多くを期待する。
そう、恵子先生この方法でかなりいい確率で成功させているから・・・・
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1238
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr