Rap1233-タムラクン の 恋-10
Rap1233-タムラ先生夜間外来総合
Rap1233-タムラクン の 恋-10
お互いにしゃべらないのも、
彩の目覚めを妨げないように
気を使っていることが充分に理解出来た。
タムラ先生は、優しく透き通る様な瞳で、
泉を見つめていた。
泉もその視線を外さず、言葉を交わさず、
じっとお互いの目を見つめ合っていた。
泉はとても彼が頼もしく感じられ、
この人に愛されたいと、
心の底から思うようになってしまった。
とても安心できる人、やさしい人、
いろいろなことが汲み取れる。
出来る事なら、こんな人と一緒にずっと・・・・
そして出て行く時に、彼は泉の肩に優しく、
手をのせてくれただけなのに・・・・
泉はきつく抱きしめられていたような、
錯覚に捕らわれてしまった。
今、彩の事で一安心した二人は、
何か二人だけの共通の想いが沸いて来ているのだろう。
しかし、しばらくは、彩から目が離せないことは確かだった。
よみがえった甘い感情は、目の前の彩の事を考えると、
壊れやすいシャボン玉のように消えてしまいそう。
彩にとって一番つらいのは、何と言っても彩のボーイフレンドが、
突然やって来た事が最大のショックだった。
すなわち、胸の手術を彼に知られてしまった事。
彼女は最大の傷を心に負ってしまった。
好きな彼には、完全に良くなったら、
話そうと思っていたのだろう。
それを、彩の恋敵が彼にリークしたのだろう。
彩の恋敵がうまく騙して!
「彼女はとても寂しがっているわ。」
「会いたがっているわ!」
などと告げ口をして、彼が見舞いに来るように、
勧めたのに違いない。
それにしても、あの事は彩にとって、
人生最大のピンチだったのだ。
胸の形成手術が終わって、
完全に元に戻ってから折を見て、
話そうと思っていたのに、
彼女の思惑はいっぺんに狂ってしまった。
惨めな自分を見られ、その姿に哀れんでくれる、
そんな彼をみて・・・・・・
つくづく、自分に嫌気をさしている姿を想像すると、
彩の小さな心ははじけそうになってしまう。
彼に見られて、そんな自分は彼にふさわしくないと、
勝手に考えてしまったのだろう。
本当に愛している彼に、自分に自信をつけてから、
大切にしている彼に打ち明けたいと思っていたのに・・・・
だれかに裏切られたのだ。
ひどい、そんなやり方ひどい、卑怯だわ、許せない。
時間が経てば、オペ(形成手術)が終われば、
もっと納得していたはずなのに。
想えばやはり、彼が見舞いに来てからが、
おかしくなったのだ。
そしてタムラ先生は何かおかしい事は気づいていたが、
何が原因なのかわからなかった。
ほかの人は誰も気がつかなかった、
タムラ先生の繊細な心が、心だけが・・。
本人も、今度はいろいろの人に迷惑をかけてすまなかった、
命を大切にしていこうと考えを改めているようだ。
そのため、日に日に明るさを取り戻し元気になっている。
モデルの仕事の方も半年の休みはもらってある。
他の人ならおそらくだめだろうが、彩は特別、
それくらいのブランクはかえってばねにしてしまうだろう。
昼休み近くになってタムラ先生は、
彩の病室にやってきた。
ベッドで彩は今、生まれたての赤ん坊のように、
安心しきだ安らかな顔で寝ている。
その寝顔を見て、二人はにっこりとお互い見つめ合い、
微笑んでいた。
二人の雰囲気がとても近くなったような気がする。
タムラ先生は泉の方を見て、
「どう食事でも?」
「おなかすいたでしょう?」
「そうね・・・」
「彼女はナースに任せて食べに行きましょう」
二人は病室を後に、近くの食堂に行った。
食事をしながら、ふたりは彩のことから始まって、
泉の家族環境の話になった。
母親と彩そして泉の3人の生活で、父と母は離婚してしまい、
父は出ていってしまった。
母は、そのことで心労が溜まり病院に入院している。
経済的なことは心配いらないらしい。
かなりの生活費を、父が援助してくれているとのことだ。
泉は広告代理店で、ある程度の地位にあり、
かなり大きな仕事も任されているようだ。
タムラ先生も自分の過去を、ある程度のことは話した。
日本の医学で、アメリカに劣ると思われるところを、
勉強するためにアメリカに渡った。
その時、今の診療所の先生に大変お世話になり、
その先生のおかげで、かなりいい待遇で、
アメリカの病院で仕事ができた事、
アメリカでそれなりの力を身につけて、
日本に帰国した事など。
今の大学病院に、格別の待遇で招かれた事などを、
かいつまんで話した。
そして、その先生の恩義に少しでも報いるために、
今の診療所を手伝っている。
大学では乳癌の研究の第一人者として、働いていること等、
かいつまんで泉に話した。
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1233
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr