Rap1232-タムラクン の 恋-9
Rap1232-タムラ先生夜間外来総合
Rap1232-タムラクン の 恋-9
由美はタムラ先生が、そんなすごい先生だった事は、
全然知らなかったのだ。
その事を知らなかった自分の無知に腹が立ち、
またその事を、タムラ先生が全然由美に話してくれなかった事
何故か悲しかった!
はじめは、気にいらなかったが?
しかし今はその事を責めるより、由美も彩を探す事が、
一番大切だという事が分かっていた。
診察が終わって、少しして
診療所にタムラ先生の車を運転して、
青木泉がやって来た。
由美も是非一緒に探したいと申し出てくれた。
用意を整えて、車の中にタムラ先生、
青木泉そして由美がそろった。
そこから、タムラ先生が運転して、
再び鎌倉方面を探すことになった。
車の中で、由美と泉は沈黙していた。
青木泉は、タムラ先生に今まで探した場所と、
他に彩のいそうな所を教える。
泉はナビゲータとして、道順や交差点手前で方向案内をする。
その言葉だけが車内に響く、交わす言葉など他にない。
夕方近くになって、辺りがうす暗くなった頃。
泉が突然叫んだ「彩よ、きっと彩だわ!」
海岸道路をゆっくりと、走っていたタムラ先生は、
急ブレーキを踏んだ。
三人は車のドアから一斉に飛び出していった。
材木座近くの海岸で、呆然と太平洋を見つめるように、
砂浜に座っている彩の姿を見つけた。
三人がそれぞれ全速力で駆け寄った。
タムラ先生がいち早く駆け寄り彩を抱き寄せる!
きつく! きつくだ!
冷えた体を自分の体で温める様に、
彩の体が、折れてしまうのではないかと思うように。
かなり衰弱し切っており、意識も朦朧としていた。
あと1~2時間遅ければ危ないところだろう。
しかし、見つけたのが医者と看護師である。
そして、もちろん出発する時に、往診鞄、
救急用具、酸素ボンベ、点滴、注射類も、
持って出ていたのである。
脈も弱い、体温がかなり低い!
危機一髪だ!
由美に持参した救急器材を持ち込ませる。
由美は、車に急ぐ、泉もそれに手伝う。
一刻を争う、なお、車の中での処置は難しいからだ。
冷え切った体の血管確保は至難の業だ。
それを、由美は何無くこなし、生命ライン一本確保、
次は酸素マスク呼吸が弱くなっている。
次から次へと、速やかに応急処置が取られ、
点滴と、酸素吸入を行った彩はみるみる内に、
彩の顔色が良くなってきた。
タムラ先生は、彩に、優しく何度も何度も話しかける。
やっとの事で、彩は目を開けうつろな目を、
タムラ先生にむけた。
こみ上げてくる涙、とめどなく流れる涙、
タムラ先生は黙って優しく抱きしめたまま。
「馬鹿だなー・・・・彩!」
「ごめんよ!」
「お前の気持ち、感じてあげられなくて!」
彩はだだ、こぼれる涙をぬぐう事もせず、
タムラ先生を見つめていた。
「俺は、医者として失格だな!」
「本当にごめんよ!」
「もうこれ以上君に悲しい思い絶対させないよ!」
「うれしい! ありがとう、タムラ先生!」
二人の会話を聞き入っていた二人がそばにやって来て
「彩、よかったね!」
「彩さん、頑張ったね!」
二人はただその言葉が精一杯の慰めの言葉。
今は、実の姉より、タムラ先生の愛情の方が、
彼女の心を癒すのは一番のようだ。
タムラ先生が、泉を傍に近づけ自分は、
海岸の方にゆっくりと歩いていった。
じっと、暮れた、比較的穏やかな海を見入っていた!
「お姉さんごめんなさい!」
「私、私・・・・・・」
「もう自分が嫌になってしまったの!」
「これから先!」
「彩どうしていいか分からなくなっちゃった!」
「いいから!」
「彩! 少しおとなしくしていなさい!」
と、泉が少し安心した目で彩を見つめ、腕に抱き寄せた。
少し安心したせいか、程なく彼女は眠ってしまった。
落ち着いたところで、タムラ先生の車で、
大学病院に搬送した。
すでに連絡を大学病院に取ってあったので、病院の入口に、
看護師、若手の医者が待ち構えていた。
タムラ先生は、もう大丈夫といった感じで、
看護師たちに目配せをした。
ストレッチヤーに彩の体を移し病室に移動した。
その日は、泉が彩をしっかり看護した。
看護すると言うよりぴったりと寄り添い、
絶対放さないと言ったほうが良いだろう。
翌朝まで、彩の手を握りながら、
彩のベッドに寝入ってしまった泉。
当然だろう、彼女は40時間近く、
一睡もしていなかったのだから。
部屋に日が差し込み、まぶしさで目覚めると、
ベッドの隣にタムラ先生が立っていた。
目線を感じた泉はタムラ先生に目線を合わせた。
お互い黙ってしばらくじっと見つめ合っていた。
黙って見つめているだけで、
すべてがお互いにわかったような気がした。
タムラ先生もそれを察して、気持ちが伝わっている事に、
何故かうれしく思った。
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1232
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr