Rap1227-タムラクン の 恋-4
Rap1227-タムラ先生夜間外来総合
Rap1227-タムラクン の 恋-4
「おはようございます。タムラ先生!」
と、看護師の森由美は元気に、
診察室に入ってきたタムラ先生に挨拶した。
これまでの大学病院でのいきさつは、
ここにいる看護師達は、知らないのである。
この診療所における、タムラ先生の立場は何かの事情で、
臨時の先生としか、知らされていないのである。
診療科目も、特別打ち立てていない。
かかりつけ医的な存在である。
まさしく地域医療の一現場である。
「先生、患者さん呼んでいいですか!」
と、森由美が元気な声でタムラクンに話しかける。
「いいよ!」と頷く。
いつも通りの診察が滞りなく終わった。
午前中の患者さんはほぼ30人、
風邪の症状、腰痛、高血圧、糖尿病、肘の骨折、
痔の病気、頻尿、と内科外科整形外科の、一般的な地域でおこる病気だ。
最後の患者が終わったのはやはり1:30すぎだった。
タムラクンは今日の患者で、一人気になる患者がいた。
風邪の症状で、胸部レントゲン、血液検査で生化学1生化学2、
腫瘍マーカー、そして内診を行い、気になる点を見つけた。
彼の想像が間違ってなければ、おそらく、
乳がんの可能性が高い。
タムラ君は、自分の大学病院に紹介状を書いた。
“名刺の裏に”。周りの看護婦には悟られるように、
少し控えめの声で話した。
(もちろんこのようなことは院長に了解ずみのことである。)
了解なくしてやれば、人道的には許されないことである。
診察が終った頃、看護師たちがタムラクンに、
夕食でもごちそうしてほしいとせがんだ。
タムラクンは、本日のスケジュールを確認して、
「それでは、しばらくぶりだから行ってみるか」
と、乗り気で彼女たちの申し出を承諾した。
森由美子と山本カナはうれしそうな声で、
「うれしいわ、どこにします。」
「君らに任すよ!」
「時間と場所を決めたら、携帯にでも知らせてくれ。」
「ああそうだ、時間は7:30頃からにしてくれるか。」
タムラクンは、レントゲン技師の宮本先生も誘うように、
森由美子に伝えて、診察室を出て行った。
タムラクンの本日のスケジュールは、フリーだった。
大学病院に戻って、受け持ち患者のカルテを一通り見ていた。
北村曜子がタムラ先生に、コーヒーをいれて、
立ち去ろうとしていた時、話しかけた。
「北村君、先日はすまなかったねえ」
「いいえ、仕事を忠実にこなしただけです!」
「そんな事ないよ!」
「きみには心から感謝しているよ。」
「・・・・・・あら!?」
「彼女があんなに元気になったのも、きみのおかげだよ。」
「感謝の気持ちを込めて、近い内に食事でも行こうよ。」
「ありがとうございます!」
「気持ちだけ受け取っておきます。」
「そんな事言わずに、付き合ってくれよ。」
「わかりました!」
「ではそのうちにお供させていただきます。」
自分の研究室で少しくつろいでいると、
タムラ先生の携帯が鳴った。
森由美からで、場所は渋谷の居酒屋に決まった!
という電話で
「早く来てね・・・」
と、甘えた声で囁いた。
すこし酔っているようだ。
時間的に、まだ余裕があるので、少し気になる患者を、
急ぎ足で見て回る事にした。
待ち合わせの居酒屋に少し遅れて到着すると、
カウンターの奥の方にすでにみんなは到着していた。
二人女性が多かった。
見知らぬ女性だ。
タムラ先生が来た事で、
奥座敷にみんな移ることになった。
先に来た人たちは、すでに赤い顔をしていた。
みんながそろった所で、本格的に料理を注文し、
タムラ先生のビールが来ると、みんなで乾杯を行った。
森由美も少し顔が赤かった。
山本カナが森由美の隣にタムラ先生を座らせた。
少し恐縮して、タムラ先生は二人の女性の間に座った。
すぐにグラスを飲み干すように促された!
二人の女性から・・・
少し困った眼をしながらも、タムラ先生は一杯、二杯と
あおるようにクラスをあけた。
山本カナは、宮本先生にかなり積極的に話しかけていた。
宮本先生もまんざらいやな感じではなく、
うれしそうにカナの顔をのぞき込んで、頷いていた。
由美は、タムラ先生に今の自分の生活が平凡で、
毎日が楽しくないことを愚痴っていた。
由美の目が少し坐っているのを気にしながら、
タムラ先生は目の前にある料理に手をつけていた。
軽く「うん、うん・・・」と、
あいづちを打ちながら、箸は料理の手を休めない。
タムラ先生はかなりおなかがすいている。
今は色気よりも食い気が勝っているようだ。
かれこれ2時間あまりが経過した。
タムラ先生と由美は特に進展はなく、
由美がタムラ先生に絡んで、日ごろのうっ憤、恨み、つらみを、
延々と話し続けていた。
その間に宮本先生と山本カナはいつの間にか、
いなくなっていた。
残ったのはタムラ先生に由美そして、
今迄ほとんど頷いたり、あいずちを打ちながら、
黙々と食べて飲んでいた二人の女性が残されてしまった。
二人の女性の、一人は臨床検査技師の加藤愛、
もう一人は事務の藤森みゆき、である。
二人ともタムラ先生のことは当然知っているが、
タムラ先生は記憶がなかった。
山本カナと宮本先生のことを尋ねて見ると、
一人ずつトイレと言って消えてしまったそうだ。
加藤愛と藤森みゆきは、ある程度のことは理解しているようだが、
由美は少し困惑している。タムラ先生も同様である。
時間も時間なので、これでお開きということになった。
タムラクンは、レジに向かい会計を済ました。
残った女性たちは
「先生ごちそうさま!」
と、声をそろえて頭を下げた。
タムラ先生は軽く手を挙げ、わかった、
わかったと軽くうなずいた。
加藤愛と藤森みゆきはその後、
二人して渋谷の山手線の駅に向かった。
「おやすみなさい!」
と、タムラ先生と由美に挨拶をして!
残された由美は
「先生送って行って!」と甘えた声で
タムラ先生の右手をつかみ、揺すって話さない。
先生は「わかった」と頷き、
空いた手を挙げ、タクシーを止めた。
由美を送って、田村先生は家に帰ると、
ドアの前に早乙女瞳が立っていった。
「どうしたんだい!?」
驚いた顔で瞳に尋ねた。
「先生に会いたくて・・・・・」
「気がついたらここに立っていたの!」
と、すました顔で答えた。
「どうして!?」
「僕の住んでいる、このマンションを知っているの?」
「それは内緒!」
当然、彼女の父親の力で知り得た事であるが、
彼女はその事は口に出さない。
また、タムラ先生も想像出来るが、口には出さない。
「先生遅い、今までどこにいたの?」
「ずっと待っていたんだから!」、
とは言うものの、瞳はたかが、
10分ぐらいしか待っていなかった。
先生のふるまいを見て、どこかで飲んで来た事が、
想像できたから・・・・
先生はしばらく考えて、瞳を時間制限して、
中に入れることを決めた。
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) 1227
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr