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Rap1225-タムラクン の 恋-2

Rap1225-タムラ先生夜間外来総合


Rap1225-タムラクン の 恋-2 


その患者は、胃を全摘して完治したと思ったら、

今度は、胸部に小さなしこりが見つかったのだ。

同僚の外科医に無理やり押し付けられたのだ。


胃の全摘オペで患者に、“絶対大丈夫、完治する”と、

言い切ってしまったのだ。苦し紛れに。

しかし、半年間その患者を診て来て、

気になる所を、発見してしまったのだ。


そう、血液検査で、腫瘍マーカーのある数値が、

異常に高かったのだ。

そして、その医師は患者の“早乙女瞳”に、

タムラ先生に無理やり診察する様に仕向けた。


それが彼(同僚)の、早乙女瞳に対する最大の善意なのだ。

結局タムラ先生が、彼女を説き伏せ、

今日のオペになったのだ。


説得するに当たって、タムラクンは早乙女瞳に

相当なわがまま、愚痴、うっぷん、をぶつけられた。

死んでやるとか、オペ前の基礎検査の妨害、

突然の病院からの脱走等、相当タムラクン を困らせた。


実際、ある時など睡眠薬を相当量飲んでしまった。

30時間近く眠り続け、タムラ先生が胃洗浄を行うはめになり、

ヒヤッとさせられた。

また、ある時など、タムラクンが家に帰りくつろいでいると、

携帯に、都内の一流ホテルの支配人からTelがあり、

「“早乙女瞳”様 が大変なので、ホテルまで至急来てほしい。」

と呼び出された。


何事かと思ってホテルに到着してみると、彼女の策略だった。

目一杯着飾って、まるでカルティエのレセプション会場に、

やって来た様にハイセンスなお洒落をして、

(そう、頭の先から足の先まで完璧にドレスアップされた)

早乙女瞳が目の前に立っていた。


タムラクンは、一瞬見間違えた、早乙女瞳だとは?

見違えるような、大人びた色気のある美しさだった。

「どうしたんだい。そんなお洒落をして?」

「先生に会いたくて!」

瞳は悲しそうな眼で、

「今夜は、わたくしに付き合あって。」

「えっ・・・?」


「もう二度と、この様なレストランに・・・・・」

「着飾ってやって来られなく、なっちゃうかも?」

「恋人と過ごす事が、出来なくなるかも知れないでしょう。」

「今日は、私の恋人になって、エスコートして!」

「・・・・・ん!」

「ねえ、お願い!」


タムラクンは瞳を見つめながら、真剣な眼差しで

「そんな事はないさ!」

「これから何度だって来ることが出来るよ。」

 「本当に・・・?」

「本当さ!」


「オペはきっと、うまく行くよ。」

「そして、バストだってちゃんと元に戻る。」

「いや元に戻して見せる!」

「約束するよ。」

「絶対に!」

と、言っても瞳は聞く耳を持たない。

ただ子供のようにダダをこねる。


今は誰かに、甘えたいのだろう。

その気持ちを察して、タムラクンは黙ってうなずき、

彼女の願いを聞いて、二人でディナーを楽しく、過ごす事にした。

瞳は、ほとんど食べないのだが、タムラクンがおいしそうに食べるのを見て、

自分がおいしく食べた気分になった。


そして、瞳はタムラクンに、部屋に来るようにせがんだ。

タムラクンは初めて拒んだ。

しかし、彼女の不機嫌な顔に負けて、タムラクンは、

“それでは、君が眠るまで傍にいてあげる。”

という約束で部屋まで行き、添い寝をしてあげた。


ほかにも彼女は、タムラクンのスケジュールを、

しっかり把握して、空いている時間に電話かけて来る。

そして、タムラクンを困らせるのだ。


実は、瞳の父は一部上場の有名な大企業の社長をしている。

しかしタムラクンは、彼女の父がそれほど大きな会社の、

社長であるということは知らない。

ただ、お嬢さんだと、いう事は分かっていた。


オペ当日になり、タムラクンは、かなりプレッシャーを感じていた。

オペに関する問題はほとんどない。

彼女がどのような心理状態になっているかが気になった。

こちらの方が、一番心配だ。


右の乳房は切除しなければ、再発が心配である。

しかし、そこのフォローも、今の医療技術ではほぼ完璧に、

物理的には元に戻すことが出来るだろう。

また、治してあげる自信はある。

それより彼女が、その後の心の傷、そして彼女が、

心から打ち解けて己から、治していけるか?


それが一番大切だ。唯一彼には秘策がある。


オペ当日を迎え、オペの準備が着々と進み、

ナースや他の準備スタッフが、時間を追って万全の状態に、

そして、スムーズに準備が進んでいた。


オペ1時間前に、彼女の病室を訪ねた。

部屋に入る。彼女の左腕には点滴がすでに、刺さっていた。

彼女はナースと、話をしているところだった。

話をしているナースは、その道のベテランで、

彼女にオペ後の安心を与える為に、話している所であった。


タムラクンが入って来たのを見て、

彼女が熱視線をタムラクンに向ける。

「やあ・・・、 元気そうだね!」

タムラクンは、彼女にありったけの笑顔で、微笑みかけた。

「オペは必ず上手く行くよ。」

「絶対に・・・」

と言って、瞳の手を握った。


瞳は空いている方の手を大げさに、

タムラクンの首に伸ばし、抱きついた。

瞳は消え入るような声で

「し・ん・じ・て・い・る・お願いね!」と囁いた。

タムラクンは大きく頷いて、瞳の頬を大きな柔らかい両手で

包み込むようにして、安心させるように瞳から離れた。


タムラクンは、看護師に手を軽く上げて、

部屋から出て行った。


タムラクンは、完璧に仕事をこなし、オペは順調に終了した。

一応麻酔が覚めるまで、I.C.U.で瞳はゆっくり過ごすことになる。

もちろんパーフェクトなケアーのもとで!


瞳の希望で、しばらくは家族、友人との面会は、

初めから拒絶した。

ベテランのナース、北村曜子が彼女の “メインケアー” として、

タムラクンが抜擢した。


この大学病院で、タムラクンにはこれ位の権限は十分に持っている。

そして彼女の親の力も作用している。

北村曜子が瞳の術後の、暫らくはほとんど無口で、

ケアーをしている。


瞳が順調に回復しているのはもちろんだ。

物理的(肉体的)に、問題は術前から危惧していた様に、

心の問題だ。

北村の完璧なケアーのお陰で、瞳の顔も日に日に明るくなり、

笑顔が戻ってきた。


ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 のぞみ


タムラ先生夜間外来(総合) 1225


DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr


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