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Rap1207-脳挫傷患者ドナーに、そして脳死肝移植に挑戦!-4

Rap1207-タムラ先生夜間外来総合


Rap1207-脳挫傷患者ドナーに、そして脳死肝移植に挑戦!-4


 肝摘出を終えたレシピエントに、

早田先生止血の再確認を十分に行う。

先ほど摘出した時に切断した血管を、

隅々まで慎重に見渡す。


接近時の観察、離れての全体像を見渡す。

そこでの、バイタル・・・・ほぼ規則正しく心音が、

波形が安定している事を示す。

麻酔医、臨床検査士の陰の力も、

しっかりと底で支えていればこそ・・・・、だか!


タムラ先生と目が合い、頷きの確認

 輸血は2単位使用している。

信じられないくらいの少ない出血量で・・・・、

それは、早田先生の腕の良さを物語る。


腕の良い外科医ほど出血を極力抑え、

輸血の量を最小限にする。

 まあ、例外的な事例もあるが・・・・・


早田先生は、先ほどの自分の手技を振り返る。

メスをクーパー(鋏)に取替え、肝十二指腸間膜の剥離、

総胆管を露出、肝門部に近い所で、

すくい上げるようにして切断。


門脈、肝動脈、そして肝臓の下部と、

上部の下大静脈の剥離を素早く行った。

冠動脈切断、門脈もカットダウンすぐさまカニューレ挿入、

保存液を注入!

充分すぎるぐらいに還流、その後切断。


その時に血圧の降下が・・・・

一気に65まで、これは肝臓への門脈血流遮断によるものだ。

 少し様子見、直ぐに血圧は105に戻った。

その後、腹部大動脈を剥離してすくい上げる。


そしてテーピングを行い、足部側を縛り小さく切開、

そこへ素早くカニューレを挿入、還流液を流し込む。

 そこで一気に血圧が30に・・・・・


早田先生そのまま一気に肝動脈、

そのまま肝臓の下で剥離した下大動脈をすくい上げ切断。

その後少しして波形はフラット、心音停止。

ドナーの臨終だ!


レシピエントの開腹。

患者の前に立ち、肋骨の下を左から右弧を描くように走らす。

その後、胸骨中央の皮膚に5センチ縦に切開を加える。

鮮血がパット飛び散る。


電メスと麗奈のガーゼでの止血で切り抜ける。

腹膜を開いた時、ドバッと黄色の腹水が溢れた。

 まあこんなもんだろう・・・・この患者の病状では・・・・

吸引器のノズルが麗奈の手から差し出され吸い出す。


 これが・・・

麗奈の・・・阿吽の呼吸なのだろう・・・

いつものタムラ先生とのコンビネーション。

これでは間違いなく、執刀医はやりやすいだろう。


全てを熟知して先を読む!

そして手が・・・体が機敏に動く。

 

ノズルで吸引して術野はすっきりした。

そして、肝十二指腸間膜の剥離、総胆管を露出、

肝門部に近い所ですくい上げるようにして切断。

門脈、肝動脈、そして肝臓の下部と上部の下大静脈の剥離、

緊張の連続だった。


腎静脈が入り込む所の上下で、下大静脈をすくい上げ、

血管鉗子でクランプ、素早く切り取りそして縫合。

同様に、肝臓と横間との間にある下大動脈も行った。

素早いメス裁き、手の動きだった。


 そう回想して納得の早田先生。

タムラ先生も満足の表情だったはず・・・・・


レシピエントに、グラフトが移入されれば,

まず肝静脈の吻合を行う。

ついで門脈の吻合を行い、 血流を再開通させる。

これを再灌流と呼び、 肝移入から再灌流までの時間を、

温阻血時間と呼ぶ。

温阻血時間はグラフトの予後に大きく影響を及ぼすので、

その時間は 30 分程度が理想的で、

せいぜい長くとも60 分以内に収まるように努力が必要である。


 早田先生は、35分で終えた。


再灌流がすめば、肝細胞にはある程度の血流供給が、

維持出来るので・・・・・、

その後にあわてることなく動脈・胆管の再建を行うことが出来る。


 次は、動脈再建だ。

動脈の血流は、 肝細胞の酸素化と胆管の灌流を担っている。

吻合した動脈に血栓が出来たり、折れ曲がったりして、

動脈血流が低下すると、胆管障害が生じ、

最悪の場合は グラフトを失ってしまうことになる。


 ここも早田先生、何なくクリアーした。

ここで、血管縫合等は勿論、顕微鏡下での再建を施行した。

 次は、胆管再建だ。

アメリカでも、生体肝移植を始めた当初は、

胆管空腸吻合を選択していたが、

現在は可能な症例では胆管-胆管吻合を行うようになって来た。

 

で・・・・、最後に閉腹となる。


レシピエントの閉腹は通常の手術と同様に行われるが、

レシピエントの体格に比べ、グラフトが大きい場合は無理には閉腹せずに、

メッシュなどを用いて二期的に閉腹する事もある。

だが今回の患者レシピエントはその必要はなかった。


無理に閉腹すると、 グラフトの血流を阻害したり

(compartment syndrome)、呼吸器系の合併症を起こしてしまう、

可能性が高くなるからである。


 そして、閉腹して早田先生が、

「お疲れ様!」

の声で、一同に安堵の空気が流れた。

「お疲れ!」

「すばらしい!」

「早田先生、ご苦労さん!」


タムラ先生の第一声だ。


続いて、全てのスタッフが

“お疲れ様!”

の声が一斉にオペ室に響いた。

「凄い!」

「すごうですね!」

「ホント、スゴイ、凄い・・・・!」


そして、拍手が何処からともなく・・・・・オペ室に響いた。


「皆さん、ありがとう!」

 「ああ・・・・・」

「でも・・・これからが本当の正念場です!」


 「そうだな、患者の生命力、そして我々のフォローが、より一層大変だ!」

「そうですね!」

 「免疫抑制剤!ちゃんと機能しろ!」

「頑張れ・・・レシピエント!」


「そして、ドナーに感謝!」


早田先生!

心音が止まったドナーの躯体に黙祷を・・・・・

それに習うように、先程拍手のスタッフ達も黙祷を・・・・・・


 その躯体、本来の姿からハイエナが食いちぎった様に、

あちこちが切断されている。

 そう、腎臓も、角膜も・・・・・


しかし、心臓は今回ドナーとしての役割を、果たせなかった。


この姿、本人の望む事だとは言え・・・・・、

んん・・・・どう表現して良いものか・・・・


作者も言葉が続かない! 


黙祷!!・・・・・ 黙祷!!


これで・・・・本望なのだろう・・・・

ドナーの彼女を救えなかった、現代の医療システムに・・・・無念!



ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 のぞみ


タムラ先生総合病院 1207


DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr


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