Rap1206-脳挫傷患者ドナーに、そして脳死肝移植に挑戦!-3
Rap1206-タムラ先生夜間外来総合
Rap1206-脳挫傷患者ドナーに、そして脳死肝移植に挑戦!-3
早田先生の目つきが鋭くなって来た。
タムラ先生も同じだ。
だが、タムラ先生には、数々の修羅場をこなして来た、
余裕と言うか度胸と言うのか、自信が伺える。
何でも来いと言った感じだ。
一方早田先生は、脳死肝移植を3例ほど手がけているが、
若さがそうさせるのか、大きな余裕は感じられない。
今回の麻酔医はタムラ先生の教え子で2人いる。
そして、タムラ先生はセカンドとして早田先生をフォローする。
早田先生の持ったメスが、あっという間に腹部を切り裂いた。
いつもの様に鮮やかなメス捌きだ。
己のメスで、開腹後,早田先生の眼光鋭く光る目線が、
腹腔内の検索を行う。
その眼差しに写る像には、異常個所は見つからない。
浸出液をシリンジで吸引し、その浸出液、
それ・・・・細胞疹を病理に回した。
それは、癌合併症例の病理確認だ。
早田先生の一挙手一動が、その若きエース早田の緊張が、
みんなに伝わるのがわかる。
生体肝移植における肝摘出では、特に 胆管・動脈・門脈,
いわゆる肝門部の処理が重要となる。
早田先生の手には、メスからクーパーに持ち代わり、
不要な臓器などを選り分けながら取り除く。
看護師は麗奈だ。
手渡す動作も慣れた物だ。
麗奈にとっては、今回の主役若きエースにも、
何のためらいもなく、次々に手術器具が手渡される。
動作は、まるでいつものタムラ先生とのコンビネーションと同様に、
何ら変わりない。
さすがなのは、やはり看護師麗奈の方だろうか・・・・
執刀医が誰であろうとも、術野をきちんと観察していれば、
相手の欲する物が何かわかる。
それが優れたオペ看なのだ。
早田先生は慎重に胆管の周りの血管、神経層を、
丹念により分けて目的の臓器に向かう。
この操作で問題が生じると, 後々の脈管吻合,
さらには患者の予後にまで影響することから,
非常に丁寧に行う必要がある。
そしてその動作は、向かい側のタムラ先生の目にも当然入る。
一瞬タムラ先生、そのオペの中に入り込んだように、
手が自然に動く。
そんな動作を麗奈は見逃さない。
そして!・・・・そう、
今回の相手はタムラ先生ではないのだ・・・と!
一瞬だがタムラ先生と、麗奈目が合った。
そんな時のお互いの心の動きは・・・・
果たしてどんな感じなのだろうか・・・
オペは着々と、狂いなく進む。
一箇所も、予定された行動ラインの狂いもなく・・・・・だ。
各脈管を丁寧に剥離・温存しながら,
肝横隔膜靭帯・胃肝間膜・肝十二指腸間膜を切離し,
肝臓の尾状葉から下大静脈に流入する静脈を処理。
そして右後腹膜から脱転する。
すると、そこで肝が完全に遊離できる。
難なくその遊離を行い肝摘出が終ろうとしている。
そして、ドナーからの肝臓摘出を、
別のスタッフがその隣のオペ室で行っている。
その隣、と言っても大きなオペ室に仕切りは、
稼動式のパーテーションだけだ。
タムラ先生は素早く、そちらのドナー患者の、
進行状況を見に行く。
何故かと言うと、出来るだけ同じタイミングで摘出した方が、
臓器の状態が良いからだ。
生体肝移植においては、 早く肝を摘出する事は 、
いたずらに無肝期を延長することになる。
そこで、 ドナー手術の進行状況にあわせて、
肝を摘出するのが最善だ。
ドナーから摘出された肝臓グラフトは、
吻合の前に静脈・門脈・あるいは胆管の細工が、
必要な場合が当然ある。
具体的に言うと右葉グラフトの場合、
前区域から中肝静脈に流入する枝すなわち、
V5・V8の再建が必要な場合、
レシピエント、あるいはドナーの体内から摘出した静脈グラフト、
そう、外腸骨静脈,・下腸間膜静脈・内頚静脈 を吻合しておく。
その操作、作業は共に早田先生自らが行った。
見事な物だった。
そう思うのはタムラ先生も当然だが、
近くにいた中堅のドクターしかり。
そして、その現実を看護師の麗奈も、
あのERでのアメリカ人医師たちの動作以上に、
完璧にこなす早田先生が眩しく見える。
麗奈は心に何を思うのだろう・・・・・
そう自分も、あのような動作をしていた可能性も、
十分ありえたはず・・・・
続いて、早田先生 レシピエントの体内に、
肝臓グラフトをイメージで、入れてみる。
そのイメージで、は吻合の様子を確認する。
そして、吻合しにくい箇所のチェックだ。
タムラ先生もしっかりと、その光景を・・・・
鋭く光る目が左右に動く、そして残像に刻み込む。
ビデオ等では見慣れた光景だが、今この場でそれがなされている。
それが、このタムラ総合病院の、このオペ室で・・・・だ!
早田先生は、肝臓の吻合状況を把握して、
バックテーブルで事前に吻合調節を、
しっかりと行っている。
ドナーから摘出された肝臓グラフトは、
当然吻合の前に静脈・門脈・あるいは胆管の細工が
必要であろう、それもこれから行う。
そこで、タムラ先生すかさず、その準備を早田先生と共に行う。
具体的に、右葉グラフトの前区域から中肝静脈に流入する枝、
V5・ V8 の再建が必要だ。
ドナーの体内から摘出した静脈グラフト、
(外腸骨静脈, 下腸間膜静脈, 内頚静脈)の吻合を行う。
当然、レシピエントの体内に肝臓グラフトを、
入れてからでは吻合しにくい場合、
バックテーブルで事前に吻合を終らせておくことになる。
着々と、オペは順調に進んで行く。
このタムラ総合病院のオペ室の中で・・・・・だ。
全てのスタッフが、早田先生の動きを追う、
鋭く光る目で・・・・・・
どうやら、今回の主役は完全に、
この若きホープ、早田先生だ。
タムラ先生、麗奈の目線が気になるようだ。
それを感じるのは、看護師の葵ちゃん!
その葵ちゃんが、その両方・・・・、
そして今回の主役早田先生を、
しっかりとキープしながら・・・・
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生総合病院 1206
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr