Rap1173-うそ・・・下血、どうして・・・?-2
Rap1173-タムラ先生夜間外来総合
Rap1173-うそ・・・下血、どうして・・・?-2
「痛い・・・!」
その言葉の後には、自然と涙が零れて目の前が滲む。
通勤通学で賑わう、私鉄沿線のホームめがけて・・・
人の群れが
目線が下がり別の世界、そう昔の幼かった時の視界だ。
雨が降り出した。急に・・・・、
肩より少し長めの髪に大粒の雨が打ちつける。
冷たい雨だ・・・藻亜には・・
目線を下に落とす・・・・
視野に入るのは、破れて血の滲む膝、
破れたストッキングに雨が・・・
滲むのは、涙か、雨の雫か・・・・・
脱げた真っ赤なヒールを、右手で手元に引き寄せ履く。
膝に痛みが・・・・、ハンドバッグからテッシュを、
取り出し膝に当てる。
「あっ・・・!」
フラシュバックだ。今朝の!
一瞬だが眩暈が・・・・、
気をとり直し、立ち上がる。
「大丈夫です?」
すらりと伸びた脚が目に入った。
スカートもミニだ。
バランスの取れた長さで・・・、
スタイルも抜群藻亜の目に・・・
「あっ、・・・大丈夫です!」
「でも・・血が・・・!」
そう言って藻亜の前に跪き、
素早くしなやかな右手で膝を見る。
「あっ・・・すいません!?」
「あら・・? 顔色が・・・・」
どうやらこの女性、膝は問題ないと、
目線を藻亜の顔に移し、
血の気のひいた顔色の方を心配する。
「・・・・!!!」
藻亜言葉が出ない。
何故かこの女性、全てを見知った様子で藻亜を見つめる。
“この女性・・・、安心出来そう! いっそ・・・!”
「貧血?」
「ええ・・・少し!」
そんな二人を、降り出した雨のせいかどんどん追い越して行く。
「膝は大丈夫そうね・・・・ それより顔色ね!」
「急ぎましょう! 駅に向かうのでしょ?」
「あっ・・・はい!」
歩きながら、藻亜とその女性は話を続ける。
「あなた! 一度病院へ行った方が・・・その顔色!」
「はい、そう思っていました・・・今朝!」
「えっ・・今朝??」
「あっ・・・何でも・・!」
どうやら見抜かれた様だ。
今朝・・・、何か藻亜の体に異変の有った事を・・・
「ねえ・・・・、かかりつけの医者とか病院ある?」
「いえ・・・別に!」
「良かったら、***病院に来たら・・・・」
「えっ・・・まあ・・・」
「私、そこで看護師してます。」
「西川麗奈と言います!」
そうか、やっぱり道理で・・・・
何となく安心感、そして機敏な仕草
この人なら・・・全て打ち明けても大丈夫かも・・・
「では・・・会社が終ったら・・・」
「!!!・・・??」
麗奈、“それでは外来は終る。どうしようかしら・・・”
「あっ・・・病院、受付終ってしまいますね!?」
「そうね、何とか仕事抜け出して、来た方が・・・!」
“まあ良いか・・・でもこの人貧血酷そう・・”
“早いほうが良いのに!”
「5時半では無理ですよね!」
「そうね・・・でも何とか考えましょう。」
「では近いうちに・・伺います!」
「いま少し抜けられない事情が・・・」
「そう・・・でも・・」
「よろしければ、名前と携帯の番号、」
「教えてもらえるかしら・・・?」
「えっ・・・あっ・・はい!」
「上手く今日の日程、手立てが出来たら、連絡します。」
「早いほうが良いでしょう!」
合点がいった様子で、藻亜、麗奈に、
名前と携帯の番号を聞き出した。
麗奈はおそらく奥の手を使って、
何とかするつもりだろう。
タムラ先生に頼み込むのだろう。
かなりヤバイ患者と言っても良い人と、会ったと。
それもアネミー(貧血)が酷い、
そして今朝下血だろう。
吐血ではない、きっと。
そして、婦人科領域の可能性より消化器系の疾患だろう。
そこまで、読み取るこの麗奈の洞察力。
そうだろう・・・麗奈は医師に近い看護師なのだから!
そして、本場アメリカのERでかなりの修羅場の人間を見て来ている。
「先生、すいません少しお願いが・・・・」
麗奈かしこまってタムラ先生にお願い事だ。
タムラ先生、これはデートの誘いとか、
食事の誘いではない事は直ぐに分かる。
でも、敢えて少し嫌味な目で見つめながら、
「なんだい、飯でも誘ってくれるのか?」
「先生、冗談は後にして下さい!」
「何だい・・・、後で食事の誘いもあるのかい?」
少し麗奈目が怒っているのをすかさず察し
「ごめん、悪かった・・・で」
「また時間外の患者引き受けたのか?」
さすが、タムラ先生麗奈の言いたいこと既に分かっていた。
「そうです!」
「実は今朝、通勤時間中に転んだ患者が相当な貧血で・・・」
「そうか・・・で、何時に来る?」
「5時半です!」
「で、良いってもう言ったのだろう?」
「いえ、先生の了解が得られたら、携帯に連絡します!」
「では・・・連絡したまえ!」
「はい、直ぐに!」
「あっ、その患者・・・」
「ギネ(産婦人科)からの貧血ではないだろうな!」
「おそらく・・・消化器、それも下血でしょう!」
「まぁ君がそう言うのなら大丈夫だろう・・・!」
「でも、恵子先生にも連絡・・・一応お願いします!」
「えっ、それも・・・??」
もう、タムラ先生は看護師麗奈の言う言葉は、
素直に聞く体制がいつの間にか、出来ている。
それが・・・、
特別におかしくない感じが二人の関係を物語っている。
果たして、藻亜の病状どの程度なのだろう。
相当ヤバイ状況は、麗奈の見立てでほぼ間違いないだろう!
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1173
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr