Rap1153-えっ、飛び降りで、今の意識レベルは?!-3
Rap1153-タムラ先生夜間外来総合
Rap1153-えっ、飛び降りで、今の意識レベルは?!-3
低体温療法による緊急手術で、危機は脱出したと思われる。
が、これから果たしてこの患者は、日常生活が送れるようになるか・・・・
多くの課題が山積している。
前回の内容で、CTは躯体へと移動、頚椎損傷、肋骨骨折、・・・
ほぼ全身にダメージが・・・
心臓に・・・大動脈・・うん損傷はあるが破裂までは・・・
とあるが・・・実は緊迫した事実があった。
タムラ先生、脳の状態が安定した段階で、
新たな重要な局面に立ち向かう事態に、
それは、患者の大動脈周辺が、悲鳴を上げていた。
胸腹部大動脈の手術を余儀なくされる運命に・・・・、
新たな非常事態が発生した。
落下した場所が幸いにも、低木の庭木と芝の所だった。
その低木の枝が、心臓付近に比較的ソフトな衝撃で、
目立った所見が見られなかったが、
それがじわじわと患者の心臓付近の動脈に、
ダメージを与える結果になった。
じわじわと血圧の低下が進み、
胸部から胸腹部大動脈の破裂寸前である事が判明して
緊急手術をする事になった。
術式は後側方開胸で行い下行大動脈置換術。
腋窩動脈送血を基本術式として行った。
この際、仰臥位で送血用の人工血管を縫着し、
同時に大腿動静脈をテーピングしてから、
その後体位を取り直し、消毒を再度行ってから、
開胸手術を開始する方式を試みた。
この方式だと、体位変換等で、
約1時間手術時間が長くなるが、
安全・確実かつ清潔に送血路の縫着が可能であり、
それなりの成果を見た。
そして、症状は一時的に大きな改善を見た。
全体のバランスから言うとかなり厳しい状況が続いた。
時には脳の状態が、そして時には心臓の状態が・・・・・
悲鳴を上げていて、タムラ先生、
脳外の先生は殆ど寝る時間さえも、与えてもらえなかった。
結果として、救命出来てもその後の社会復帰率は、
厳しい状況だ。
これからの大きな課題は、術後の合併症が多く、
周術期の集約的な管理に引き続いて、
入院も長期化しやすいため、早期のリハビリテーション、
栄養管理を十分に行う必要が生じてくる。
T総合病院の病診連携を深めて、
転院・リハビリテーションへスムーズに、
移行出来るネットワークに頼らざるを得ない状況だ。
その間警部も何度も足を運ぶが、
当然ICUの外から見守るだけであった。
そして、タムラ先生に何度と無く聞く
「どうだ・・・何とか話は・・・・?」
「馬鹿を言え・・・お前もそこから見ているだろ!」
「すまん・・・それは・・・解っていたのだが・・・」
「お前だって・・・・・・」
「ICU室の計器類が異常音を何度も鳴らしていたのを・・・・」
「本当にすまん!」
「俺も上には話してはいるのだが・・・・」
「そんなに、彼女の証言が・・・・・必要なのか?」
「ああ・・・まあ・・な!」
「とにかく、全力は尽くすよ・・・・彼女のために・・・な! そして・・・」
全く警察と言う所も非常と言うか、
・・・結果が早く欲しいのだろう。
おそらく、彼女の証言が大きな進展を、
見る事が出来るのだろう。
しかし現実は・・・・・彼女の現実非常に厳しい。
ICUの中で呼吸と脈は打ち続けているが、
生きているのではなく、最新医療の中で生かされていると、
言っても過言ではない。
さすがのタムラ先生以下、他のスタッフはソファーに持たれて
彼女の運命と言うか気力と言うか、生命力に期待するような気持ちだ。
やるべきことは全て行った。そんな心境だろう。
看護師たちは時間で交代するが、医師はまずこのような場面で帰れない。
医師不足も言われるが、最高レベルの医者がそんなに多くいない。
任せれば良いのかもしれないが、タムラ先生何故は、
彼女に対して異常なほどの頑張りを見せる。
他のスタッフが交代を申し出てもYESと言わない。
「先生、はい!」
そう言って挽きたてのコーヒーを目の前に翳し、
半分以上気力の失せてしまったタムラ先生を刺激する、
看護師の麗奈
「オウ・・・美味そうな匂いだ!」
「有難う・・・・で、今何時だ?」
そう言いながら、爽やかな顔をした麗奈を見上げる。
「朝の、8時です!」
「そうか・・・えっ・・・朝・・・・?」
まるで、朝と夜の感覚がずれた様な言い方だ。
「はい、気持ちの良い朝ですよ!」
その朝に規則正しくそれぞれの計器が、
それぞれの音と波形、信号を送っている。
そう言うことは彼女・・・・症状は安定している・・・・・・
助かるのか・・・危機は脱したのか!
「あれ・・・あいつは?」
麗奈の、入れたてのコーヒーを美味そうに啜りながら、
警部の所在を探す。
「警部さん、先ほどお帰りになりました!」
「そうか・・・!」
「アイツにもこの美味いコーヒーを・・・・」
「はい・・・入れて差し上げました・・よ!」
「そうか・・・それは良かった・・・・」
「でも・・・ほら・・・」
そう言って麗奈は、テーブルにまだ少し残った、
コーヒーを指差した。
「何だ、また事件か・・・・」
「その様ですわね・・・貴方と同じように・・・」
「死にそうな位に多忙ですね・・・」
そう言って、麗奈は後ろを振り返りしなやかな動作で、
颯爽とナースセンターに戻って行った。
麗奈の後ろ姿、ナース衣でさえも見事な、
プロポーションを形成している。
そんな後姿にほんの一瞬の安らぎ、
そして爽やかなコーヒーの香りが、
タムラ先生を元気付ける。
まるで、彼女の奇跡の生還を待ち望んでいるように・・・・・
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1153
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr