Rap1144-うちの患者が拉致、それも重度の糖尿病!-1
Rap1144-タムラ先生夜間外来総合
Rap1144-うちの患者が拉致、それも重度の糖尿病!-1
「何だって!?」
「うちの患者が拉致されたって・・・・!」
「それもインシュリン注射が不可欠で、」
「インスリンが切れるのはあと20時間!」
「はい!」
「そしてその主治医が、福岡に出張で不在なので・・・・!」
「俺に、そのフォローを・・か?」
「はい、警察から要請が・・・・」
「至急、そのクランケ(患者)のカルテ!」
「その他一式用意しろ!」
「はい、大至急!!」
そう言うと、西川麗奈事務室へ急ぎ足で駆けて行く。
タムラ先生も資料室へ急ぐ。
廊下に出ると、麗奈の走る後姿が・・・
眼に入る・・ほんの少し見とれる。
「先生・・・、何見惚れてるんですか?」
どうやらその一瞬を、見逃さなかった看護師の葵、
少し突っ込みを入れる。
「ああ・・葵クンか?・・・・」
これは誤魔化し様が無いので、無言で交わす。
「麗奈先輩、どんな服装でも似合いますよね!」
「ああ、そうだ・・・!」
「おい、葵クン、君は今夜夜勤か?」
それどころで無いタムラ先生・・・・、
それに引き換えのんびりムードの葵、
出来れば彼女の力も借りたい。
彼女・・・、今のような状況では、必要そうな気がしていた。
「いいえ、今日はもう帰る所ですが!?」
「何か?」
「悪いが、今夜付き合ってくれ!?」
「えっ・・・私・・とデートですか?」
「はい喜んで!?」
「そうか、それじゃ頼んだよ!」
「えっ、何処で・・・何処に行けば・・・?」
「それは勿論、夜間外来だよ!」
「えっ、夜間外来で、デート!」
「・・・それは不味くないですか?」
「全然、マズく 無いよ・・・全然!!」
どうやら、二人とも、自分にとって都合の良い風に、
勘違いしているようだ。
タムラ先生は、仕事をさせるつもり、
葵ちゃんは、本当にデートのつもり・・・
しかし、直ぐに葵理解して、落胆の様子!
「はい、直ぐに行きます!」
“そうだよな、そんなわけ無いもんな!”
“でも、これを機会に一度誘って貰おうっと!”
“貸しも出来た事だし・・・”
「あっ、葵ちゃん帰ったんじゃ・・・・」
「いいえ・・・・!」
「タムラ先生に呼び止められて・・・、」
「お前が必要だって!!」
「そう、それは助かったわ!」
「で・・・、何が起こったんですか?」
「それが、大変な事になったの、もう一大事よ!!」
「警察らしき人間が、院内をうろちょろしている様ですが?」
「さすが、葵ちゃん察しが良いわね!」
「と、言うと、事件、殺人時間の被害者・・・?」
「それとも加害者?」
「そこは,外れね!」
「実はうちの重度糖尿病患者が拉致されたの!」
「えっ、拉致・・・!」
「声が大きいわ! もっと小さな声で!」
「はい、すいません、つい興奮して・・・」
「それでね、拉致された患者!」
「あと20時間でインスリンが切れるの!」
「でも、タムラ先生専門外では・・?」
「そこよ、大変なのは!」
「実はねその担当医、九州に学会でいないの・・・」
「それで、タムラ先生が・・・・」
「どうやら、ご指名らしいの!」
「誰から・・・ですか?」
「警察の上の方と、院長が・・・・」
「へえ・・・警察と、院長・・・ですか?」
「どうやら、タムラ先生、以前も警察に協力して・・・」
「事件解決に一役かった・・・・のですか・・・?」
「何だか、タムラ先生、まるでスーパー処理機みたいね!!」
「本当ですね? あの先生の過去・・・」
「知りたいですね!?」
「そうよね、救急救命、ドクターヘリ、」
「そして今度は警察の仕事・・・」
「本当にあの人一体・・・・」
「そしてどうやら海外での研究発表、それに田村家の御曹司?」
患者は16歳女性、大会社の社長令嬢。
学校帰りに車で拉致され、
身代金の要求があったそうだ。
身代金額は2億円だそうだ。
そして、彼女が糖尿病で、インスリンを打っている事は、
承知済み。
インスリンが切れる時間も、ちゃんと理解している。
タイムリミットは、明日10時だそうだ。
それまでに、彼女を保護して注射しないと、
命の保障は無いそうだ。
警察官の説明を聞いて、タムラ先生、
看護師の西川麗奈、そして葵は、
事の重大さを再認識した。
「タムラ先生、それで患者の事はよろしいですか?」
警察の、指揮官らしき人物が、
タムラ先生に同意を求める。
「おおよその事はそれでいいです。」
「しかし、彼女が何処で救出されるかが大きな問題です。」
「それは、どう言う事ですか?」
「患者が置かれた状態により、」
「命の保障出来る時間が2時間ぐらい前後します。」
「すなわち、コンデションのいい部屋に監禁されて、」
「インスリンが時間通りに注射された場合です。」
「しかし、コンデションが悪い場所では、」
「危険な状態がもっと早まります。」
「おっしゃる事は、よくわかりました。」
「すなわち一刻も早く救出しろと・・・」
「そう言う事です!」
「わかりました!」
「早急の救出に全力を注ぎます。」
「我々は、救出された現場で、搬送か、ヘリ等・・・・」
「救急移動に備えて万全の準備をします!」
「そうですか、それは心強いです。」
「感謝します、田村先生!」
「あっ、それと、些細な変化も・・・、」
「うちの病棟にもお願いします.よ! 警部!」
「了解しました! お約束は守ります。」
「それとこの事は内密にお願いします。よ! 田村!」
警察の情報センターは、
この病院の院長室に設置された。
そして、警察のあらゆる最新鋭機器が、
普段は霊安室と繋がる、殆ど誰も通らない通路から搬入された。
そして、屈強そうないかつい男が白衣を着て移動している。
中には、女性も数人いた。
その女性は、科捜研からなのか、それとも刑事が、
白衣を着ているのか見当はつかない。
「ねえ・・・、麗奈先輩!」
「凄い事になってません?」
葵ちゃん興奮気味だ。
「冷静に、振舞いなさい、冷静に!」
そう言う、麗奈も少し落ち着きが無いようだ。
そこへ行くとタムラ先生全然動じる様子がない。
黙って、カルテのページをめくり、
患者のあらゆる変化に対応する準備を
シュミレーションしているようだ。
その姿を見て葵ちゃん、思わず・・・
「まるで、このドラマの主役みたい!?」
そして、さすがにいつも冷静な麗奈も
「まるで、ドラマか、映画の撮影シーンみたい!」
と、小さく呟いた。
「麗奈先輩、やっぱタムラ先生カッコいいですね!」
「それに、あの警部から・・・」
「“お願いしますよ! 田村”だって!」
「そうなのよ、あの警部が、“田村”って・・・?」
ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 希
タムラ先生夜間外来(総合) R1144
DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr