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Rap1001-ちょっぴりお馬鹿さん? な、スーパーモデル!

Rap1001-タムラ先生夜間外来総合 


Rap1001-ちょっぴりお馬鹿さん? な、スーパーモデル! 


「キャー、痛い、痛ぁー・・・い・・・・!」

「あぁー 助けて、ヤメテー!」

その声は、まるで小児科の診察室で泣き叫ぶ赤ん坊の声だ!


しかし実際に叫んでいるのは、飲みすぎた22歳前後の女性、

それもかなりいけている。

普段街中で会えば必ず振り返るような、最高の女性だ。

その彼女が、日常では決して発せられない声を・・・・

今まさに声の限りに泣き叫ぶ!

 

暴れ過ぎたのか、診察室に乱れ飛ぶ真っ赤なハイヒールが・・・・

ブランド店のショーウィンドーに最近まで飾られていた、

高価そうなハイヒール!

真っ赤なハイヒールが、片方ずつ投げ捨てられて可愛そう・・・、

優雅に飾られていた時とはまるで違う。


運よく右足は、真直ぐに行儀良く立っている。

およそ10センチのハイヒール。

左足は残念ながら右向きに無残に倒れている。

ヒールの先の方はすこし修理が必要の様だ!


まだブランド店から飛び出して、さほど時間が経っていない、

可愛そうな真っ赤なハイヒール。

おそらく持ち主は、靴に対していつもこんな扱いなのだろう。 


「ほら、じっとして!」

「動くな! って、言っているだろ!」

 「痛ぁいー!」「痛いよー!」

「動くから痛いんだ!」

 「だって、痛いんだ、モーン・・!」


完全に我を忘れ、甘えた声と十二分な色気を発散して、

タムラ先生を見つめる。


その色香に翻弄されないように必死で、

目を背けるタムラ先生。


そして、その色香の漂う眼差しに、負けない様に語気を強めて、

「自分が悪いんだろ!」

 「えへ・・・んーだ!」 

「そんなに飲むからだ!」

 「そんなの・・・・」

 “あんたに関係ないでしょ! 少しは先生も関係あるんだから・・・・・“

 そう言いたいのだろう、この酔っぱらいの女性は!

 

そんな気持ちを隠して、おねえちゃんは叫ぶ!

「関係なくない! このノンベェ!」

「何よ・・・! このヤブ・医・・者・・!」

看護師はそんな話を何度も聞かされている。


タムラ先生、その言葉に少し怒りが増した感じで、 

「こら、わめくな!」

「静かにしていろ、近所迷惑だ!」

 もう、酔っ払い相手には、無駄な抵抗だと悟る、タムラ先生。


 「早く、助けてー! よ!」

「だから、今助けているだろ!」

 「痛いのぉー!」

「うるさい、静かにしろ!」

「おい、麗奈君今度わめいたら、猿轡さるぐつわだ!」


看護師の麗奈、苦笑い。さほど珍しい光景ではないらしい。

こんな時の、いつもの口癖だ。

 

「嫁入り前のその脚、無くしたくないだろ?」

 少し現状を理解した様子のオネェチャン、少し静かになった様だ!

「おら、もう少しで抜ける!」

「ずいぶん派手に暴れた様子だな、この傷は・・・」

 「そう・・・かも・・」

しゅんとする、若い酔っぱらいのオネェチャン

 

反対側の空いた診察台に投げ捨てられた黒いコート、

これも、高級ブランド物のオートクチュールだろう。


診察室に入って来た時、麗奈はしっかりチェックを済ましている。

コートの中は、フェミニンな、コバルトブルーのスーツ。

スーツの上着の中は淡いピンクのブラウス、そして、

エルメスの鮮やかな定番のスカーフを、どこか有名航空会社の、

キャビンアテンダントの様に締めて・・・


見事に引き締まったウエスト、そのウエストにぴったりマッチした、

余裕のバストライン、まったく非の打ち所がない、ここまでは・・・

だが、しかし、一点だけ大きな致命傷、

それがこの病院に来院した理由だ。


それは、右大腿部のストッキングの周辺が裂け、

真っ赤な血液に染まっている。

 美人もこうなると、見ない方が世の男性はいいのかも!?


「よし、抜けたぞ!」

パアーッと、新鮮血が飛び散る。

看護師が、何の躊躇いもなく、すばやくガーゼで塞ぐ

「後は消毒だ!」

「傷が残らないように丁寧に、細かく縫合しないと、な・・・!」


やっと、静かになった、処置が終わったのだ。

後は傷口の縫合だ。


 「先生、麻酔してくれた?」

「麻酔など無用だ! 今の君には、な・・!!」

 「どうしてよ?」

「君が、今日飲んだアルコールが麻酔だ!」


「ほら、終わった!」

素早く、消毒、洗浄、ブレード(針つきナイロン糸)、ゲンタシンと

看護師とタムラ先生の間で、薬品、器材のリレーが繰り返され、

傷口が復元されていく。


いつも以上に丁寧に縫合、やはり綺麗な脚にはなるべく、

綺麗な脚に戻ってほしいから・・・

が、しかし絶対に元には戻らないが!


 「後は頼む!」

と言って、タムラ先生はさっさとエレベーターに乗り、

4階の当直室に戻ってしまった。


残された患者と看護師、

患者は、さっと酔いがさめたようにシャンとする。

看護師は、手馴れた手つきで後片付け。

そこには、なぜかクールな張り詰めた空気が漂う。

二人とも、すごい、何がすごいって・・・・!!


患者の仕事はモデル、それも超一流のモデル。

看護師は、ミス日本で上位入賞、数年前だが・・・、

目の前のモデルといい勝負!


鈍感なタムラ先生は、気付かなかったが、ビッコを引いた患者が

ドアーを開けた時から、戦いが始まっていた。

 そう、綾香(患者の名前)は、この診察室の常連だ。(と言っても3度目だが)


初めてこの診察室で、タムラ先生を見た時から綾香、意識していた。

その時の、当直の看護師の一人が麗奈すなわち、今処置をしている。

 麗奈もタムラ先生を意識している。お互いにその事をわかっている。

鈍感な、タムラ先生はおそらく気づいていない・・?


 「今井さん、これ薬ね、抗生剤、鎮痛剤、そして胃薬よ!」

「ちゃんと服用しないと、傷 化膿するわよ!」


今井綾香の、全ての男を振り返らせて、イチコロにしそうな美脚を、

(今はちがうが!)大腿から膝上まで真っ白な包帯を、

素早くずり落ちないように、プロの技で巻いていく。


麗奈は処置しながら、もし私が男なら・・・と 嫉妬する。

綾香の方も処置をされながら、まじまじと綾香のうなじから首筋、

そして、見事にバランスのとれたバストと、小さく整った顔にかなり嫉妬!

 

 「ねえ・・、西川さん、タムラ先生って独身?」

 

2.5秒の空白の時間が過ぎる・・・


「そうだと思いますわ!」


今度は1.5秒の空白! 


「どう言う意味?」

「どう言う意味って?」

 「西川さん知らないのですか?」


もしわかっていても、返事は変わらない感じで・・・


「お聞きしておりませんから、わかりませんわ!」

 「そうですか!」

再びクールな空気が漂う。


「閉めますよー!」

女性同士なら、まだ時間が必要なのを知っててあえて麗奈、少し意地悪・・!

 

「もう少し待って!」と、叫ぶ綾香

破れたストッキングはゴミ箱に捨て、新しいシャネルのパンストを

バックから取り出し、しなやかに伸びた 左足、ふくらはぎ、

大腿 右足、ふくらはぎ、そして、真っ白い包帯に巻かれた大腿で、少し苦戦。


ラインを直し腰まで捲り上げる。

コバルトブルーの、ミニスカートを下ろし全体を整える。

ブランド物の黒いコートとエルメスのスカーフを長めの首に巻きなおす。

エルメスのバッグを肩に掛け、真っ赤なハイヒールを履いて、

急き立てられるように、診察室から出てくる。

 

素早くドアーを閉め、

「お大事に!」

と、言って西川麗奈は、階段をモデル歩きで、

ナースセンターに消えていった。


今井綾香はマネージャーと仕事の事で、ひと悶着あったのだ。

東京で宿代わりにしている、ホテルのバーで飲み足らず、

行きつけの六本木のクラブでかなり飲んだ。

その後、ホテルに戻ろうと、タクシーを拾おうとして、

歩道をふらふら歩き、壊れかけたガードレールに追突・・・・、

鋭利に飛び出した長い破片がまるで針金、それが綾香の右大腿に刺さり、

不幸にも折れてしまい、辺りはかなりの出血状態、

女性の悲鳴も数箇所で聞こえたようだ。

 結局誰かが119へ電話してくれた様だ、その人は既にそこにいない。


そして、救急車で搬送されて来たのであった。

 

 取り残された綾香は、夜間受付で会計をして、保険証を返却してもらう。

夜間救急では薬はほとんど院内処方 それも最低限の約束処方。

当然後日、来院して5日分の薬を追加処方してもらう。

それも、2度目なので慣れている。


3度この病院に来ているが、1度は緊急入院 

この夜間外来は麗奈にとって、かなり重要な場所なのだ。

 

「すいません、タクシー呼んでもらえますか?」

夜間受付で媚を売る。

基本、夜間受付は男の事務員が対応する。

 「わかりました!」

「5分で来ます!」

 「ありがとう」満面の笑みで、アルコールが戻り甘えた声で!


 タクシーが到着し綾香は少しふらつきながら、

乗り込み運転手に行き先を告げる。


 タムラ先生当直室で、先ほどの患者さんの事を、

ベッドでタバコをふかしながら、思い起こす。

 “あの患者確か、何度か診察しているな!”

“スタイル良かったなぁ!”

“顔も・・・女優なのかな!”

“今考えると・・いい女!“


診察している時は、当然患者として診るようにしている。

しかし、突然女を感じると、ぶっきらぼうになる。

先ほども、早々と退散したのは、意識したからだろう。

 普通に開腹手術の時など、当然患者は全裸だ。


そんな時こそ完全な物体だ、全身をくまなくチェックする。

開腹にあたって、皮膚の状態、筋肉のつき具合、皮膚の色つや、

痣、脂肪のつき具合、骨格のバランス。

すべてにおいて見逃しては、オペの成功不成功に大きく作用する。


ではまた・・・・暫くのオフです! 浅見 のぞみ


タムラ先生夜間外来(総合)R1001


DrDr――――――総合Tamura ―――――DrDr



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