第7話 因果応報
情報屋との約束の時間まで1時間以上あったが、パラレルコーヒーを後にした。
(さて、後1時間あるけどそろそろ電車で行こうかな。)
しかし、兄は本当にこのゲームをやっていたのだろうか?
昨日informationで兄の獲得賞金が100万ドル以上あったがあれは本当なのだろうか?
兄の獲得賞金はどうなったんだ?まさかそれを狙われて殺されたとか?
いやでも心臓発作って言ってたし、そんなはずはない。
【ビーコンアラート】
【エグゼスタート】
【エリアマップを表示します】
現在のPDR所有者(100km圏内):99人
ビーコン圏内:1人(PDR-22 獲得賞金:40万2,078ドル)
エグゼ:進行中
(へ?)
なんだなんだなんだ。いきなり情報量が多すぎる。
ビーコン圏内:1人ということは近くに俺と同じゲームをやっている人がもう1人いるとうことなのか?
PD内のマップを確認すると青い丸と赤い丸が点滅している。お互いピクリとも動かない。
(今、コンビニの前にいるから俺は青い方で相手が赤い方か。これ、位置がわかったとこでその後どうするんだ??)
まずい。情報屋にほとんど話を聞けなかったから、何をすればいいのかさっぱり分からない。
しかもエグゼもスタートしたらしい。1,200秒からカウントダウンされている。
ここは…。
逃げよう。ビーコンと言っている以上、エリア圏外になればお互い見失うはずだ。
俺は、何もなかった様に相手とは反対側に歩き始めた。
よしこれでさよならと。
(!!!)
さっきまで止まっていたはずの赤い印が凄まじいスピードで近づいている。
(これは…。車か?まずいな。)
俺は咄嗟に走り出した。相手はかなり好戦的な様だ。
今の状態で鉢合わせるのはまずい。何とか振り切らないと。
『はぁはぁはぁ…。』
最近運動不足のせいか、数十メートル走っただけで息切れをしてしまった。
まずい。入り組んだ道にいるとは言え1.5kmくらいの距離まで迫っている。
【1024秒】
もうこの秒数は無視だ。今回はとにかく逃げ切る事を優先しよう。
相手との距離は…もう1kmもない様に見える。相手はさっきいたパラレルコーヒーまで迫っている。
【988秒】
ん、待てよ。さっきいたパラレルコーヒーは商店街の中だ。
そこを突っ切ってこれたということは相手は車ではなく自転車か?であれば…。
『はぁはぁはぁ…。』
相手がもう500m程度まで迫っている時、やっと目当てのモノを見つけた。
(やっとあったか…。)
俺はやっと空車のタクシーを見つけて乗り込んだ。
『行き先をご指定ください。』
バーチャルドロイドが機械音で訪ねてくる。
【六本木】
PD上で素早くタイピングした。
『はぁはぁはぁはぁ。』
多分200〜300mくらいしか走ってないと思うが、体が鈍っているせいかめちゃくちゃしんどい。
高校までは空手をしていたが、大学に入ってからは全く運動をしていない。
『お客様、心拍数・血圧共に通常の値を超えております。』
『メディカルチェックをする事をオススメ致します。』
『五月蝿い。今すぐ出してくれ。』
『かしこまりました。シートベルトをご着用お願いします。』
タクシーがやっと発車した。
それらしき姿は見当たらないが、マップ上でどんどん遠ざかっていっている。
(やっと撒いたか…。)
しかし、もし追い付かれていたら相手は何をするつもりだったのだろうか?
この黒い物体を強奪するとか?
でも公然の場で刃物とかで脅すこともできないだろうし、相手の考えていた事が全く読めない。
自転車を全速力で俺を追い回す人物を想像すると何だか腹が立って来た。
(自転車野郎め、今度会ったら仕返ししてやる。)
"PDR−22" 俺の脳内メモリーにこの番号を記憶した。
『お客様、六本木駅に到着しました。』
支払いをしてタクシーから降りた。
それにしても日本のこの状況下の中でもタクシー業界は好調の様だ。
水素自動車で燃料費はかからないし、人件費もドロイドなので電気代だけだ。
昔はタクシーは人間が運転して適当な場所を流して拾われるのを待っていたらしいが、今はマッチングも走行エリアも全てAIが行う。ぜひ将来はタクシー会社を経営してみたいものだ。
さて、約束の時間まで20分くらいか。
【58秒】
あ、忘れていた。まだ続いていたのか。
…。0秒になるのをその場で待ってみた。
【0秒】
【エグゼ フェイルド】
【ペナルティ 5,000ドル】
あら…。まあ逃げただけだから失敗に関しては不服ではないが、5,000ドルとはなかなかだ。
『現所有者:杉本隆治様、獲得賞金マイナス2,208ドル』
oh...マイナスもあるのか。一気に借金生活。
しかもコーヒーの金額の7ドル50セントが8ドルに繰り上げられている…。
(さて、待ち合わせ場所に向かうか。)
場所は六本木駅から乃木坂方面に少し歩いた場所だ。
ひとまず情報屋に色々聞いて兄のしていた事をまずは理解をしたい。
その後、兄の死の真相を必ず暴く。必ずだ。




