第6話 パラレルコーヒー
日曜日。兄を待つ間、何かこのデバイスについて調べられないか考えていた。
いつも考え事をする時、俺は家の近くのパラレルコーヒーに行くことにしていた。
コーヒーの味はよく分からないが、いつも程よく空いているのが良い。
最近では当たり前になったが、飲食店等で店員が接客すると言うことはほとんどない。
オーダーはPD上で選択肢をし、バーチャルで展開される人間の姿をしたバーチャルロイドが接客をする。
【ソイラテ トールサイズ】
『はい、かしこまりました。』
『店内でお召し上がりですか?』
【店内】
『お会計は7ドル50セントです。お支払い方法を選択してください。』
【クリプトマネー】
ん?マネー一覧に見慣れないアイコンがある事に気づいた。
【PDR/$】
ドル建てのマネーはたくさんの種類を持ってるがこんなアイコンは見たことがない。
残額:2,800ドル
(まさか…。)
【PDR/$】を試しに押してみる。
『ありがとうございました。お飲み物は受け渡しカウンターにてお願い致します。』
(まじか…。ゲームマネーだと思った例の2,800ドルはリアルで使える通貨の様だ。)
(それにしてもこのPDRという通貨、ドル建でドルと等価とはどういった仕組みなんだろうか…。)
コーヒーを受け取ると俺はいつもの席に腰掛けた。
さてと、情報収集を始めるか。
俺はコーヒーを一口だけ飲んで、PD内でMassQuteを開いた。
※マスキュートは2042年にビズナード社が開発したPD用SNSで、特徴としてセキュリティ面をクリアしたものであれば、あらゆるアプリケーションとAPI連携ができるという優れもので、現在はフェルド社の100%子会社となっている。
(さて、情報収集を始めるか。)
何から始めるべきか分らなかったので、まずはこの手のローカルゲームのコミュニティやローカルゲームの噂や口コミに詳しいインフルエンサーを片っ端から調べてみた。
(うーん、それっぽい情報がないな。)
1時間後…
兄は最終的にアメリカにいたはずなので国内外問わず調べてみたが有力な情報にはたどり着けなかった。
【新規フレンド申請1件】
PD上にマスキュートからのフレンド申請のポップアップが表示された。
(誰だろ?)
user name:情報屋
初めまして。あなたが必要としている情報を提供します。
♯黒い四角い物体
(!!!!!)
(そのハッシュタグ。アレのこと何か知っているのか?)
(でも何で俺を見つけることができたんだ?俺がこの人の投稿を見た記憶はないし。)
かなり怪しいが、マスキュート上でやり取りする分は特に害はない。
迷わず、フレンドの承認ボタンを押す。
情報屋さん
初めまして。黒い物体のこと何か知ってるんですか?
今その事を調べてまして、もし可能であれば教えていただけないでしょうか?
情報屋
いいですよ。具体的に何が知りたいんでしょうか?
HARU
アレは、そもそも何なんでしょうか?
情報屋
マネーであり、ビーコンです。
HARU
ビーコン?ビーコンとは?
(マネーという意味は分かるが、ビーコンとはまさか自分の位置情報が晒されているのか?)
情報屋
位置情報が分かるんですよ。特定の相手の。
HARU
特定の相手とは?
情報屋
あらあら。どうやら何も知らない様ですね。
HARUさんできれば直接話しませんか?
HARU
ダイレクトコールって事ですか?
情報屋
いや、直接会ってです。ダメですか?
(どうする?かなり怪しいが、情報を持っている風ではある。)
HARU
場所はどうしますか?
情報屋
六本木に2時間後でいかがでしょうか?
(え?何で位置情報を公開してないのに東京って分かったんだ?)
冷や汗が出てきた。何かヤバイ匂いがする…。
HARU
すみません、何で自分が東京の人間だと思うんですか?
情報屋
え?あ?東京なんですか?自分の都合がいいので指定してみただけです。
HARU
はぁ…。東京じゃなかったらどうするつもりだったんですか?
情報屋
そうだったらその時考えとようと思ってました。
HARU
そうですか。
(変な人だな…。)
情報屋
じゃあ2時間後でお願いします。
場所はこの後送りますね。では。
(あ、まだ聞きたい事あったのに。まあいっか。)
【クリプトコントラクト1件】
(ん?何だ?)
情報屋様からクリプトコントラクトの申請が届いております。
クリプトコントラクト詳細:エントランスキー
噂でだけは聞いた事があるが、会員制の店であることは分かった。
学生である俺は勿論その様な店に行ったことは無い。
(こいつ、何者なんだ…。)




