第5話 佳奈
(688秒。これが0秒になると一体何が起きるのだろうか…。)
『いや、大丈夫だよ。昨日はあまり寝てなくて。』
『無理しちゃダメだよ?』
『うん。あぁあの手紙のことだよね?』
『そうそう。ハル君だけに手紙入ってたんだよね?』
『そうらしいね。』
『何か私気になっちゃって…。』
(そりゃあそうだろうな、佳奈さん奥さんな訳だし。)
『あれさ、さっき読んだんだけど大した内容書いてなかったよ。内容的には兄貴が死ぬ前に書いた様だけど、もし俺が死んだら親父とお袋、そして佳奈さんを頼むって書いてあった。』
【621秒】
『それだけ?』
『うん。もしかしたら自分が死ぬかもって思ってたのかも。念のため書いたんじゃないかな?』
『念のための遺書だから親父や佳奈さんを宛先にしなかった。多分そんな感じ。』
『でもそんなのっておかしくない?私、亮が死んだなんて…。』
佳奈さんは急に感情的になったかと思うと、泣き出してしまった。
『佳奈さん…。俺も本当に何が何だか分からなくて。こんなことになって本当にごめん。』
【535秒】
『ところで…。お義父さんに聞いたんだけど、思い出の品って何だったの?』
佳奈さんはちょっと落ち着いた様で、か細い声でそう聞いてきた。
(まずい。親父がそこまで喋っているとは思わなかった。)
『あぁそれね。俺も何かと思って期待したんだけど手紙以外何も入ったなかった。恐らく俺にどうしても読んで欲しかったんじゃないかな?死ななかった時に格好がつかないから。』
『そっか。でもさ実際に亮は死んじゃったわけだよね。確かに死ななかった場合、その手紙はおかしなことになるからハル君に託すのは理解できるけど、でも死んだんだからさ…。』
『それ、イマミセテクレナイ?』
まずい、まずい、まずい。何だか佳奈さんの様子がおかしい。
心拍数上昇と共に冷や汗が出てきた。
【421秒】
『佳奈さんごめん。兄貴が自分以外に見せるなって書いてあったんだよ。俺は兄貴の言うことは絶対守って来た。だから死んだ兄貴との約束であってもそれはできないよ。』
『わかった。ゴメンなさい。ハル君も辛いのにいきなり変なこと聞いちゃって…。』
『いや、いいんだよ。辛いのはお互い一緒だし、でも何かゴメン。』
『うんう。私が悪かったの。本当にゴメンなさい。私もう下に降りるね。』
『うん。』
そう言って佳奈さんは俺の部屋を出て階段を降りて行った。
(危なかった…。)
【エグゼ コンプリート】
賞金:2,800ドル
秒数が276秒で止まっている。
その後ちょっと頭の整理をしていた。
『PDR-52の所有者情報』
『現所有者:杉本隆治様、獲得賞金2,800ドル』
『前所有者:杉本亮介様、獲得賞金117万5,825ドル』
informationには予想通り賞金が加算されていた。
要は、さっきのエグゼと言うものはミッション、ゲームで言うならばクエストみたいなものだろうと言う結論に至った。
ただし、クエストならばその内容が表示されそうなものだが、さっきはその様な表示はなかった。
クエスト:佳奈さんにバレるな!!
みたいな感じかな?うーん、よく分からない。
後、あの秒数が0秒になったらどうなっていたのかも気になるな。単純に賞金なしになるだけ?
色々考えたが、自分の中での理解をまとめてみた。
・これは恐らくリアルワールドの中で行われるゲームか何か
・クエストをクリアすると賞金がもらえる
・クエストの内容は分からない
・時間制限がある
この手のリアルの中で行われるゲームの類はすでに発売されていたが、リアルマネーを使うものは聞いたことがないのと通常はPDを通してゾンビやら敵が出てくるものが多い。本当の人やモノを使って遊ぶゲームは聞いたことがない。
何よりさっきのだけで2,800ドルは破格すぎる。多分ただのゲームマネーなのだろう。
何か府に落ちなかったが、兄は自分に面白いゲームをくれたんだと言うことで俺の脳内思考は着地した。




