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第3話 封筒

外務省から電話があった翌日の午前、アメリカから段ボールが届いた。

それは兄からのの荷物だった。  


住所はカリフォルニア州のシリコンバレーとある。見覚えのある兄の字でアルファベットで書いてあった。  


送り主は兄本人で間違いない。

兄が心臓発作で死ぬ前に家族に送りつけた荷物ということになる。


俺は海外の地理には疎かったが、シリコンバレーがアメリカのソフトウェア企業が集まる場所ということだけは知っていた。

なぜ送り元の住所がシリコンバレーなのかも気になったが、その荷物自体への興味の方が強く、早く中身が見たいと思ってしまった。


昨日PDの音声ログを聞き直した際に丸茂という外務省の職員は遺品は遺体と一緒に届く、ということを言っていたのでこれは遺品ではないということになる。


PDの音声ログは親父と一緒に聞き直したので親父もこれが遺品ではないと察した様だ。


荷物が届いたのは土曜だったので、親父・お袋とも家にいた。

荷物を見るなり親父は、


『開けよう。』


と一言だけ言った。

一方母親は、兄の訃報を聞いてから半狂乱になってしまい、親父がなだめるので大変そうだった。

昨日から一晩経ったが未だにまともに言葉を発せない状態だ。

荷物が届いたのを見ても虚ろな目をしていた。兄以外のモノには興味がないのだろう。

それもしょうがない。お袋にとっての兄という存在は不出来な俺とは違い、溺愛すべき自慢の息子だったのだ。


リビングで親父がハサミを片手に段ボールを開け始めた。

母親はどこかに行ってしまったようだ。もしかしたらまた泣いているのかもしれない。

親父の話によると、昨晩も長時間顔を真っ赤にして泣いていたらしい。


段ボールはみかん箱サイズだ。たいして大きくない。いったい何が入っているのだろう…。

俺は不謹慎ながら中身に興味が湧いてしまい、箱が開いた瞬間に中身の物色をし始めた。まるで宝箱を開けた少年の様に....。


『何だよ、これ。お菓子とお土産??』


チョコレートやらマシュマロやらのお菓子類、ポストカード、アメリカンな置物?等がごちゃごちゃと入っている。

死の直前に送ってくる代物とは到底思えない。

手紙とか手記みたいなものを期待していたので俺としてはかなり期待はずれだった。


『その様だな。お土産を送ってくる時間があったら連絡をしてくればいいものを。』


寡黙な父もこの中身には少々呆れた様で皮肉を言っている。


『ん?』


もうお目当のものはないと思ったが、段ボールの底のジェリービーンズの袋の下にソレはあった。


『封筒?』


茶封筒だ。よく日本で売っている縦書きの茶封筒に郵便番号を書く欄があるやつだ。

その表にはこう書いてあった。


”孝治へ”


『俺宛?何だ??』


即座に親父が持っているハサミを取り上げて開けようとしたが、裏を見てその手を止めた。

裏にはこう書いてあった。


”お前との2人だけの思い出の品だ。1人で開けて欲しい。”


『 (何だ、そのクサイセリフは。中身よりこの文章を親父に見られたことの方が恥ずかしいわ!) 』

『(まあ故人を尊重するか......。)』


『親父、てことなんで兄貴との思い出はもらってくわ。』


『ああ、分かった。』


親父は一仕事終えた様な感じでキッチンの方へ向かっていった。恐らくタバコだろう。


俺は茶封筒を手に持つと足早に自分の部屋へ向かう為、リビングを後にした。


『 (恥ずかしい兄貴め。何を考えてるんだ。) 』


リビングを後にし、階段を昇りながら早く中身を見たくてしょうがなかった。


この茶封筒、中に紙以外の”何か”が入っている。


不可解な死を遂げた兄。真相のヒントになるかもしれないモノを俺に託した。

俺は不謹慎ながらワクワクしていた。

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