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シスコン姉君、進軍す  作者: 蕾々虎々
めでたき日の裏側
11/13

お姉様にお任せだ -エリー-

 「ん~~~~、気持ちい~~~~~!!」


 そう叫びながら思いっきり身体を伸ばす。


 心地良く髪を(なび)かせるとても気持ちの良い風と、学園の敷地(しきち)どころか王都の街並(まちな)みすら見通すことができる、人の(いとな)みを(じか)に見て取れる絶景(ぜっけい)


 (やっぱここは最高だねー!さっきまで人、人、人で息苦しい所にいたから余計!)


 「さーてと」


 元気も目一杯(めいっぱい)補充できたし、改めて。


 目を(つむ)る。(おだ)やかな春風(はるかぜ)が緩やかに通り過ぎていく。その余波(よは)が、(かみ)()ぜ、(ほお)に当たり、手に絡みつくのを感じる。


 (うん、絶好調(ぜっこーちょー)!)


 その身(からだ)(あふ)れる確かな気力を感しながら、その感覚をより深く、精緻(せいち)に研ぎ澄ましていく。


 肌に感じる好風(かぜ)源流(もと)を辿っていくように、皮膚(はだ)から身体の外側へと少しずつ、少しずつその規模(はんい)を広げていく。


 それはまるで、自分自身が大気と一体化していくような、そんな感覚。


 そして、気流(きりゅう)と足元の建造物(たてもの)を感じるだけだったそれがやがて、徐々(じょじょ)にそれ以外の物を映し出していく。


 木があって、水があって、人が居て。その人がどんな姿でどんな格好で何をして何を話しているのか。その全てが手に取るように分かる。

 その広さたるや、学園の広大(こうだい)な敷地を余すことなく埋め尽くさん程。


 (普段は抑えてるけど、ここまで広げると見え過ぎでちょっと気持ち悪いんだよね~……)


 そう思いながらも、眉間(みけん)(しわ)を寄せて頑張って耐える。ここまでして何もありませんでしたって方が悲しいし!


 怒涛(どとう)(ごと)く流れ込んでくる情報の暴流(なみ)に目まぐるしさを覚えながら片っ端から検閲して(たしかめて)いき……いたいた(ねずみ)さん。


 学園の中心に位置するこの場所からそう離れていない一棟(いっとう)

 その付近(まわり)で、周囲を警戒しながら微かな所作(うごき)だけで連携(れんけい)を取り合っている、一見すると普通に見える不審な(あやしい)三人組を(とら)えた。


 (ふんふん。この動きからすると、目的は教職員塔(きょうしょくいんとう)かな~。とすると、生徒名簿か何かがお目当てなのかな?)


 将来エリートと成り得る人材が溢れ返る名門と名高いこの学園で、その生徒達の個人情報は非常に価値(かち)が高い、らしい。


 表立ってはその趣味嗜好(しゅみしこう)や性格、それに家柄(いえがら)などを把握することで卒業後の進路の一つとしてスカウトの成功率を上げたり。

 裏の目的としては、軍事的な情報資産として。


 (とか言ってたけど、ま、細かいことは良く分かんないね!)


 似た事例(こと)が一杯あったし、そういうのが多いぞーって仕事の前情報(ちしき)として聞いただけでそこに関しては全く興味も無いからね。


 面倒(めんど)くさいことはどうでもいいの。


 可愛い妹やからかい甲斐(がい)のある姉に優しい両親、お屋敷に(つと)める皆が安全に暮らせるように、ちょっとだけ便利で珍しい力を使えるってことでお仕事してるだけだから。


 その居場所を特定したまま、広げていた領域を徐々に収め必要な分だけの探知に(しぼ)る。

 そうして余裕を確保した所で、お仕事も一区切り。


 (私のお役目(しごと)はここまで~。後のことは頼れる方のお姉様にお任せだ~、っと)


 鼠の動向(うごき)を追う眼は切らず、一旦呼吸を整える。

 そして、一人きりのこの場所で、雲一つ無い青空に向けて(つと)めて平坦(へいたん)に声を出した。


 「リーネリーシェ様」

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