第三話「佐竹 健太郎」
その友人、健太郎は早朝だというのに起きてくれていた。
休日の朝っぱらからこいつが何をしていたかというと、健太郎は庭で朝の体操をしていたのだった。何故、体操をしているのかと問うと、どうやらこの春休みに入ってからのこいつの日課になっているらしい。
「あと、ダイエットにもなるからさ」
そんな答えも返ってきた。朝の体操でダイエットなんて初めて聞くぞ。エクササイズのような体操なら納得だが、こいつが今行っている体操は、ラジオ体操のそれのように緩慢だ。こんなので本当に痩せるのか?
「いやあ、それが全然。全く痩せた試しがないんだよ!」
何故か愉快そうに言ってから、あっはっはー、とデカイ声で笑う健太郎。
「はぁ・・」
俺は呆れた。
俺の幼馴染、佐竹健太郎はこんな感じの奴である。
健太郎は俺と出会った日から、とにかく元気な小僧で、いつも俺や周りの人間を巻き込んでは、やんちゃをするわんぱく小僧だった。そんな性格は今に至っても全く治らず、中学時代に行なった遊びと称した悪戯には、俺も色々ととばっちりをくらったことがある。
要するに、健太郎は無駄に元気で鬱陶しいトラブルメーカーなのである。
未だにこいつとの関係を持っていることが、俺自身も不思議でならない。さっきも思ったが、こいつとは腐れ縁で繋がっている気がしてならないものだ。
「で、こんな朝早くにどうしたのさ?」
ちょっと太った腹を俺に向けて、健太郎は聞いてきた。
俺は健太郎に、朝の散歩に出たこと、途中で光の球を見つけたこと、光を追ったが見失ってしまったことなどを説明してやった。
「ふぅん。そんで俺の家に来たわけな」
「まあな」
因みに健太郎は、俺の光の球を見ることのできる特性を知っている、数少ない人間の一人だ。
小三の頃、身近な人間に俺の特性を説明しても全く信じてもらえず、ついには周りから疎ましく思われ始めた俺を庇ってくれたのも、そして俺の特性を信じてくれたのも、たぶん健太郎だけである。
その時のことは、今でも素直に感謝している。今に至ってもこいつに感謝していることが、こいつと縁を切れない原因やも知れないな。
「ま、せっかく来たんだし、上がってけ」
俺は健太郎の言葉に甘えることにした。