表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

序章


  

 小さくて優しく輝いて、何だか温かそうな丸い形をした光が見えた。

 そいつは俺の目の前をゆらゆらと飛んでいったのだ。何だか息を吹きかけてやったシャボン玉みたいな飛び方をする。


 俺の前から逃げていくそいつを、俺は小走りで追いかける。その光は動きがノロいので易々とつかまってくれた。だんだん遠ざかっていたのに、俺から逃げていたように見えなかったけど。

 

 ちょうど季節が夏でもあったので、まだ幼稚な頭だった頃の俺は、そいつが昼間に現れた蛍か何かだとすっかり勘違いしていた。


 けれど、違った。


 易々と捕まえた光は蛍ではなかった。そもそも生き物ですらなかった。この光は、質量が全くなかったのだから。

 

 握りしめて捕まえていた筈の光は、俺の手を透き通って逃げ出し、再び何処かへと飛んで行ってしまう。


 俺はもう一度、光を捕まえようとした。

 離れてしまった距離を縮め、手を伸ばし、捕まえる。けれどやっぱり手には何の感触もなく、握りしめた手を透き通って、光はまたゆらゆらと飛んでいく。

 

 二度が駄目なら三度、三度駄目なら四度と繰り返していったが、結局光は捕まることはなく俺の努力は徒労に終わった。


 光はゆらゆらと去っていく。俺から逃げるわけでもなく、ただ何かに引き寄せられるように。

 光の球を捕えることを諦めた俺は、そいつが去っていく姿をただじっと見つめていた。


 光は、本当に何かに引き寄せられている。俺は唐突にそう感じた。何故だろう? 勘ではなく本気でそう感じたのだ。


「ねぇ、何処に行くの?」

 俺は呟いていた。


 光はゆらゆらと去っていく。

 もう手の届かない場所を飛んでいる光に、俺は腕を伸ばしてみた。勿論、光は捕まえられない。


 光はゆらゆらと去っていく・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ